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【識者の眼】「コロナ禍のメール相談とテレワーク」山本晴義

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
Web医事新報登録日: 2021-08-04

労災病院の社会貢献事業として、2000年にメール相談(mental-tel@yokohamah.johas.go.jp)が始まった。初年度の受信件数は116件であったが、19年度9523件、20年度1万5223件と増加し、20年度末には累計13万4548件となった。これはコロナ禍の影響が大きい。

回答は私一人で対応し、21年間一日も休んでいない。継続できている理由には、①メール相談の限界をわきまえ、②臨機応変に柔軟性をもって相談者の立場で対応し、③CureではなくCareの姿勢で臨み、④なるべく早くの返信を心がけ、⑤個人的要因を把握してセルフケアを促し、⑥サポーターとしてあなたを心配しているというメッセージを送り、⑦治療中の相談者に対しては主治医を信頼し、治療の中で話すように説明し、⑧受診に迷いがある場合は受診を勧め、⑨情報を求める相談者に対しては「こころの耳」を紹介し、⑩勤労者には「メンタルろうさい」を紹介する─などの工夫がある。

コロナ禍での相談としては、感染に対する不安やうつ(自殺念慮も)、自律神経症状、強迫症状の相談が多くみられた。テレワークの影響として、不眠や過食、運動不足からくるライフスタイルの乱れや自律神経失調症状、職場や家庭での人間関係の悩みの相談がみられた。また、職場内コミュニケーションに悩む相談は管理者からも部下からもあった。

メール相談は原則、診断や治療をするものではないが、日常生活に支障がある場合は、早めの受診と健康的なライフスタイルを勧め、コミュニケーションに悩む相談には、アサーションなどを教示するようにして、効果が得られた。

コロナ禍でのテレワークに関連して、診察やメール相談などを通して学ぶことは、ネガティブな側面の訴えが多いということである。一方、テレワークになったことで、通勤時間がなくなった、自分の時間が持てるようになった、家族と一緒の時間が増えた、遠方の人とオンラインで交流できるようになった、趣味が増えた、健康的になったなど、ポジティブな側面もアンケート調査などでわかってきた。テレワークの健康や疾病に与える影響は、コロナ禍というストレッサーに対する個人の受け止め方とそれにどう対処するかによることが大きいと考えられた。

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