【識者の眼】「居宅介護従事者等のワクチン優先接種」川越正平
川越正平 (あおぞら診療所院長)
Web医事新報登録日: 2021-06-30
国が示す優先順位に基づき、ワクチン接種が進められている。ただし、居宅介護従事者等の接種は順風満帆に進んでいるわけではない。国は2021年3月に「自宅療養中の患者等に直接接し、サービス提供等を行う意思を有する場合」という条件付きで居宅介護従事者等を優先接種に位置づけることを認め、その詳細は市町村に委ねた。重症化リスクの高い集団、感染者が発生するとクラスター化する恐れの高い集団の接種を優先して進める必要があり、それを考慮して国が優先順位の考え方を示したはずである。4月時点まで、ワクチン確保の点から条件をつける必要があったことは理解できる。
例えば、福岡市は2月時点から独自の優先接種対象として居宅介護従事者、小児・児童と接する保育士、学校の教員を検討し、実際に5月下旬から高齢者枠と別枠でその優先接種を開始した。また、世田谷区も4月末に従事者への個別の意思確認は求めず、優先接種の対象とする方針を打ち出した。
筆者の地元松戸市でも、他地域の取り組みを参考にしつつ、居宅介護従事者の接種を推進するための議論を重ねている。その中で、障害者・児向け訪問系サービス従事者も同様に優先すべきこと、接種が遅れている他市に在住する者の接種を早い時期に実現するための善後策(事前発行を含む接種券の発行や優先接種位置づけ等)が必要なことが俎上に上った。隣接する市区について確認したところ、市区内在住かつ在勤の介護従事者を優先接種対象に位置づけているところや、在勤地に関わらず優先に位置づけるところもあった。
松戸市に要望し、居宅介護従事者と障害者・児向け訪問系サービス従事者を優先接種対象に位置づけることが成就したため、次の課題として接種が遅れている他市在住の従事者を対象として、市民向けに公開されている枠以外に別途集団接種会場を設置し、在宅医や訪問看護師、薬剤師会等がその運営に協力する方針を関係者でとりまとめて合意した。
接種対象外である12歳未満の医療的ケア児に接している親族等の接種も、鹿児島市のように従事者と同等に位置づけるべきだろう。ホームレスやいわゆるネットカフェ難民等、住民地の登録がない方の接種も課題である。川崎市は申し出に基づき、居住実態がある場合には接種券を発行するという方針を明示している。国が随時示すべき方針、市区町村が地域の実情に応じてなすべき判断、我々従事者が地域でなすべき取組を意識しつつ、引き続き検討していきたい。
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