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【識者の眼】「日本における体罰の容認の実態」小橋孝介

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)
Web医事新報登録日: 2021-05-10

しつけを名目としての体罰が2020年4月から児童虐待の防止等に関する法律の改正によって、法律に基づいて禁止された。これで日本は全世界で59番目の体罰禁止国となった。最近、法施行後の国民の体罰に関わる意識や実態についての調査報告書が相次いで公開された。5000人を対象とした厚生労働省の令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「体罰等によらない子育ての推進に向けた実態把握に関する調査」の事業報告書および2万人を対象としたセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査」の結果報告書である。

これらから見えてくるのは、過去の報告と比べ体罰を容認する国民の割合は減少傾向ではあるものの、依然として4割前後が体罰を容認している実態(2017年の調査では6割程度だった)で、実際に半年以内に体罰を行っている養育者も3割強と報告されている。今回の報告の中で興味深いのは、しつけのために「手の甲を叩く」「おしりを叩く」ことについては、およそ5割の人が容認しているということである。厚生労働省は報告書「体罰等によらない子育てのために」のなかで体罰を「子どもに対して何らかの苦痛を引き起こしたり、不快感を意図的にもたらしたりする行為(罰)」と定義し、さらに「怒鳴りつけたり、けなしたり、辱めたりといった心を傷つける暴言や行為」についても子どもの権利を侵害すると明示している。手の甲やおしりを叩くといった軽いものであっても体罰であるが、まだその認識がなく潜在的に体罰を容認している者も少なからずいる実態が見えてくる。

医療者は、社会に対して体罰によらない子育てを啓発する側である。しかし医療者だからといって体罰を容認する者の割合が少ないわけではない。2021年4月に開催された第124回日本小児科学会学術集会で、佐々木らが医療者1462名を対象に行ったアンケート調査の結果が示された【1】。ここでも4割が体罰を容認しており、一般人口と同様の結果が得られている。

我々は体罰の問題を自分事として捉え、まずは自分達が意識を変えていかなければならない。日本語化された医療者向けの体罰防止教育プログラムであるノー・ヒット・ゾーンなどを活用していきたい。

【文献】
1)佐々木祐登, 他:日児誌. 2021;125(2):271.

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