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【識者の眼】「感染拡大期において日常での集まりの人数を制限するとしたら」和田耕治

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
web医事新報登録日: 2021-08-02

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、これまでも、「外出する必要がある場合、極力、家族や普段行動をともにしている仲間と少人数で」と呼びかけてきましたが、これが7月30日の政府の「基本的対処方針」に具体的に記載されました。今の感染拡大の場面は日常での身近な集まりにまで首都圏では及んでいます。

諸外国で行われている対策としては、集まる人数の上限を具体的に示しています。例えばシンガポールでは、社交のためのグループの上限は最大2人、家庭への1日の訪問者数も1世帯あたり2人までとしています。午後6時までは○人以下、午後6時以降は○人以下と時間を区切って私的な集まりを禁じる国もあります。

例えば、日本で、家族や普段行動をともにしている仲間以外で集まらざるを得ない場合には、飲食店や、自宅・屋外でのプライベートの場面でも、自分を入れて2人までと具体的に示すことが筆者は必要と考えます。

数値を示すことで、どの程度人々の行動が変わるかはわかりません。しかし、誘いなどを断る勇気を持っていただくためにも、具体的な人数を示す対策はありえると考えます。多くの人は既に接触機会を減らしていただいています。特に普段から接触機会の多い人にこそ減らしていただきたいのですが、メッセージが届きにくくなっています。ある程度の目標を示して、感染がどう抑えられたら解除する、といった解除の目安も必要と思います。

感染拡大が収まらないなら、集まりの場をさらに厳しく制限する必要があるかもしれません。20時以降については外出禁止などの対応も海外では行われています。

日本では、個人に対して罰則を伴う法的規制はありません。そうした法律も必要かどうかは議論をしても良いと考えます。しかし、市民にここまで求めるなら政府や政治のリーダーと、市民との信頼関係が不可欠です。

接触機会の減少は感染対策としては効果的ですが、「五輪をやっているじゃないか」という、矛盾したメッセージから反発もありえることが課題です。また、“集まらざるを得ない場合”という前提条件なしに、「2人までは良い」という誤ったメッセージを受け取る人もいることに注意が必要です。

しかし、感染から自分を守るのは市民1人1人です。また、自分が感染した場合に傷つけてしまうのは、家族、友人など、身近な大事な方であるということはしっかりと伝えて、市民に今一度自主的な行動を促すことも不可欠です。

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