二次会履歴書
私が就活をしていた頃の話だ。奇妙な履歴書を書かされた。
それは二次会履歴書というものだった。こんなもの書いてどうするのかと思った。よくわからなかったので、普通にサークルの飲み会で参加した二次会について書いた。
当日、面接は順調に行われ、正直採用だと思った。二次会履歴書について聞かれるまでは。
「―最後になりますが、あの履歴書についてお聞きします。はい、二次会履歴書のことです。サークルの二次会を経験したとのことですが、他にはありませんか?二次会には積極的に参加しますか?」そう言われたが、そんなに二次会までは参加しない性分なので、そう言った。
その瞬間、先程までにこやかにしていた面接官から笑顔が消えた。まずい、嘘でも二次会まで参加すると言い直したほうが良いかもしれない…いや、でも正直に答えた方が…?と、頭の中が一瞬でパニックになり、そのまま面接は終了した。その会社は不採用だった。
最後で完全にやらかした、と傷心していたが、次に生かすために二次会履歴書についての受け答えをネットで調べたが、何もヒットしなかった。
腑に落ちないまま就活を続けていたある日の朝、何気なくテレビをつけてニュースを流していると、この間面接を受けた会社のビルが映った。
「速報です。大手企業の〇〇社の代表取締役が拉致監禁及び殺人罪で逮捕されました。警察は―」頭が真っ白になった。その後の説明で、新入社員を飲み会で二次会まで連れていき、べろべろに酔わせた状態で臓器売買の商品にしてしまう会社だと知った。だから二次会まで付き合えるノリのいい”商品”を探していたらしい。私が面接を受けた際、二次会に参加しないとわかった瞬間に態度が変わったのは、そこが、いや、そこしか重要じゃなかったからだろう。あの会社に入社していたら―今頃私はどうなっていたんだろう。