狭い世界で生きる
自分はなんて狭い世界で生きているんだろうと常々思っている。
毎日同じ場所に行って同じことをして同じ道を通り、同じ場所で同じものを買って、変わり映えのしないものを食べる。
これって楽しいのか。
いや、楽しくはない。
でも不安はない。
行こうと思えばどこへだって行けるのに、特に行きたいところがない。
と言うか、知らない。
そう、知らない。
子どもの頃、クラスの子が旅行したことを自慢げに話していた。
私もディズニーランドなるところに行ってみたいと母に頼んでみた。直接言うのがなんだか悪い気もしたので母の顔を直接見なくても済むように、寝る時に、暗くした部屋で。
「今行ってもどうせ大人になったら忘れちゃうでしょ?勿体無いから行かない。」と言われた。もう少し大きくなったらね、とも。
忘れるわけない、忘れないから、お願い。
でも何度頼んでも「この話だって忘れちゃうでしょ」…。
私は記憶力はいい方なのだ。
多分狭い世界で生きているから
記憶する内容が少なくて済んでいるから。
良くも悪くも。
そんな感じで、私は、と言うか、うちは旅行どころか家族で外出なんてほとんどしなかった。
それは夫婦仲が悪かったから、って言うのもあったんだけど。
子どもの時代というのは自分がどういう状況にあっても、それしか知らないということが普通に起きる。
私がこれってなんか違うな?っと気づいたのは高校に入ってから。
旅行に行かないことが、ではない。
夫婦喧嘩で母が投げ飛ばされ窓ガラスを突き破ってベランダに激突するとか、包丁が飛んでくるとか、殴られて記憶喪失になるとか。
子どもだから何か免れるわけではなかった。
うるさいから雪の日に下着だけで外に追い出されるとか、
箸の使い方や食事にマナーが悪いから足首掴まれて2階のベランダから外に吊される、みたいなことはよくあった。
それって普通だった。
蹴られたり、叩かれたりするのも普通だった。
もっと普通だと思っていたのは
パチンコ屋の駐車場。車の中で両親を妹と一緒に待つこと。昼も夜もよくあった。別に叩かれたりして痛くないから、むしろ快適だった。
ただ、最近ニュースになってるのを見て、
あれ?おかしいな…?って思うようになった。
私はとても狭まく、やばい方の世界に住んでいた。
だからどうと言うわけでもないのだけど、どこに向かえばいいのかがわからない。
狭い世界から抜け出したつもりでいたけど、気づくと自分の殻の中にこもっている。
世界を知ったら出て行きたくなるのかな。
誰かの話を聞いても別に羨ましいなんて思わなくなった。
欲が無いのかな。
あの時なんで私もディズニーランドに行きたいとお願いしたのか。
そこは思い出せない。
布団2つ敷けるだけのあの狭い部屋はよく思えているのに。