【短編小説】いつか手に取ってくれるその日まで
神帰月 束の間冬を吸い込んでいた あなたが言う『会いたい時はいつでもお互い様』 その言葉の賞味期限が深更の夜風と共に連れ去られてしまった日をふと思い出した
--- 『会いたい』--- という言葉の借り物を受け取りたいために日々費やした記憶は薄れていくのに君の話の辻褄を合わせるために用意した容れ物は思い出や失っていく人の代わりに増えるんだ
暮夜 真っ赤な化粧の裏側に流した涙のあとが黄昏の風に吹かれ なびいた髪がなぜか泣いてるように思えたあの日から 僕は文章を書き始めました いつか耐えられないこの悲しみに慣れてしまうのが怖くて 思い返すように文字を残すようになりました
なんでもない不甲斐ない日々も能書きもきちんと束ねて置いておくよ いつかあなたが手に取ってくれるその日まで
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