【JAFCA×武蔵塗料】デザイナーが自分らしくクリエイティブするために①
Episode1:JAFCAが見た、時代と色の移り変わり
こんにちは、note編集部です。
武蔵塗料は「色と機能で世界を豊かに」というコーポレートパーパスのもと、長年にわたり色彩に関する提案や塗料の機能性向上に取り組んできました。今回は、その活動の一環として、色の専門家との対談を新たに企画しました。
※今回の対談は1時間半にもわたる長時間のものでしたので、全4回に分けてお届けいたします。
はじめに
・なぜ武蔵塗料がJAFCAさんと対談することになったのか?
私たち武蔵塗料は、多くのデザイナーの方々と対話を重ねる中で、CMF(カラー、マテリアル、フィニッシュ)に関するさまざまな課題について耳にする機会が増えています。また、日々配信しているメルマガにおいても、特にデザイナーの皆様から多くの反響をいただいています。そんな中で、デザイナーの方々がクリエイティブなプロセスにおいてさまざまな悩みを抱えていることを知りました。
そこで、私たちは「クリエイティブを進める上で、色が持つ役割が重要」であると考え、「プロダクトデザイナーの皆さんに向けて、もっとクリエイティブな情報を発信してみよう」という考えに至りました。
・熱いメッセージを受け取ってください!
そこで今回は、色のスペシャリスト集団であるJAFCAさんとの対談を企画しました。
この対談では、JAFCAがどのように時代を反映した色を生み出し、社会に色彩の意味を伝える取り組みを行っているのかをご紹介します。また、デザイナーの皆さんに向けた熱いメッセージもお聞きしました。
この対談を通じて、クリエイティブに活用できる「気づきやアイデア」を提供することで、色彩の持つ力と可能性を再認識していただき、発想力・思考力・想像力を高め、デザイナーの皆さんがより自分らしいクリエイティブを追求するきっかけとなれば幸いです。
・JAFCA(ジャフカ)さんとは?
・対談者ご紹介
今回の対談は、こちらのお二人にご協力をいただきました。
❶「いま、どんな色が流行っているの?」色という情報が、光り輝いた時代
金子(武蔵塗料):JAFCAについて教えていただけますか?
大澤(JAFCA):昨年、70周年を迎えたJAFCAは、長年にわたり市場向けの最新カラートレンド情報を発信しています。
70年前は、日本が繊維産業で国の復興を図っていた時期でした。布を海外に輸出するためには、ヨーロッパやアメリカで好まれる色でなければなりませんでした。当時、照明用の光と色の研究所は存在していましたが、商業用の色に関する情報を発信する場はありませんでした。そこで、色をビジネスに活かすための情報を収集する場が必要になったのです。
情報を持つ人たちを集め、ヨーロッパやアメリカで好まれるファッションや色について意見交換を行う場を作りました。そこで交わされた情報は大変貴重なもので、それを基に日本の繊維産業を活性化させようとしました。当時は、森英恵さんなどの著名な方々が理事として参加しており、錚々たるメンバーが集まって、テレビ取材を受けながら議論を交わしたこともあったようです。今から見ると、非常に堅苦しい形で会議が進行していました。
当時は終戦直後であり、「これからだ!」という高揚感が日本全体を包んでいました。そんな中、日本ではファッションが人々の憧れの対象となり、ファッションに精通している人たちが持つ情報に、一般の方々は非常に強い関心を寄せていました。
「いま、どんな色が流行っているの?」という情報自体が、光り輝く憧れの象徴だったのです。
このような状況の中、色に精通している方々に集まってもらい、どの色が良いか意見を出し合いながらカラートレンドを選定していきました。
例えば「今年のプロモーションカラーはシャーベットトーン」と百貨店向けに提案を行い、その色調を広めることを決定します。百貨店はその提案に基づいて、一斉にプロモーションを実施した流れがありました。消費者は「あ、これだね!」と、その色の情報をいち早くキャッチすることが、カッコいいとされていたのです。情報が不足していた時代だからこそ、流行色は特別な輝きを持っていたと言えるでしょう。
❷新時代のライフスタイルに応える提案
大澤(JAFCA):現在の状況は、70年前とは全く異なっています。時代とともに状況はどんどん変化してきました。
今でも私たちは市場に向けた色彩提案を行う際、一番早くて2年先、要望があればですが3年、5年先を見越した提案を行っていますが、消費者や受け手側の情報の価値は大きく変わってきています。現代では情報が至る所に溢れているためです。
私たちは第一次情報として発信を行うべく、さまざまな第一線で色彩に携わっている方々にお集まりいただいています。金子さんもその一人ですが、色を作る立場の方々や、製品に色をつけていく役割の方々、さらにはお店で消費者と直接向き合う方々など、多様な立場の方々が参加しています。
トレンドカラーを創り出す際にまず話すことは、今の時代背景についてです。今後、時代や社会がどう変わっていくかについて話し合います。
時代が変わればライフスタイルも変わりますので、注目したいライフスタイルの変化についても話します。実際ライフスタイルはここ数年で大きく変わりました。ライフスタイルが変われば求められるデザインも変わりますから、もちろん、デザイン全体の変化についても話し合います。
70年前のことは詳しくありませんが、時代の変化に伴い色に対する感覚も変わりますし、色のトレンドが影響を与えることで、消費者の気持ちも変化していくことを考えながら、未来を見据えた活動を進めています。
❸アメリカ同時多発テロのショックで、人々は強い色を嫌がった
大澤(JAFCA):色彩が人々の心理に与える影響は大きく、特に歴史的な出来事がその流れを変えることがあります。2001年にアメリカ同時多発テロという衝撃的な出来事が起こった際、人々は黒のような強い色を嫌うようになりました。
金子(武蔵塗料):どのような色を求めていたのでしょうか?
大澤(JAFCA):柔らかい色調やベージュのような心を安らげる色が好まれるようになり、私たちはそういった色を提案する必要がありました。当時、バックヤードには2年前にカラー提案していた黒い服やミリタリー系のアイテムが用意されていましたが、それはもってのほかでした。
金子(武蔵塗料):柔らかい色調のカラーは、戦いを連想させるようなイメージとはまったく対照的ですね。
大澤(JAFCA):そうです。そのため、私たちはそのカラーの提案を取りやめることになりました。
大澤(JAFCA):2011年に起きた東日本大震災の際にも、大きなショックを受けました。しかし当時のインターカラーで行った提案色は、震災の前の2009年に決定した色でしたが、偶然にもちょうどその状況にフィットしたカラーになったのです。
その時の提案色は、少し元気を出させるような柔らかい色調と、グリーン系を多く取り入れていました。
震災当時、原発事故の影響もあり、海外の人々は「日本はもうダメになってしまうのではないか?」と非常に敏感になっていましたよね。
金子(武蔵塗料):おそらく、日本よりも海外から見た方が、その衝撃は大きかったのでしょうね。私もその時、海外赴任のため日本にいなかったので、パソコンの画面で津波の様子を見ていました。実際にどれほどの混乱があったのかは体験していません。
大澤(JAFCA):そうでしたか。当時、デパートなどに入っている大手の海外ブランドが一斉に店を閉めて撤退していきましたよね。そんな混乱の中で、色の提案がぴったり合ったことは幸いでした。もし提案色が合わなければ色を変更することも考えていましたが、最近では9.11の時のような大きなミスマッチはほとんどなくなっています。
❹変わりゆく色のセオリー
金子(武蔵塗料):コロナ禍ではどうでしたか?想像を超えた2年後がやってきましたが。
大澤(JAFCA):そうですね、コロナ禍では消費が落ち込みましたね。
東日本大震災の頃から大きなトレンドの変化はあまり見られず、環境問題を基盤にしつつ、少し元気な要素を取り入れた色が目立つ程度でした。また、全体の流れとしては大きな変化がない印象を受けました。
しかし、ゆっくりとした時代の変化の中で、徐々に色の組み合わせに関するセオリーを無視する傾向が見られるようになってきました。そういった点では、かなり変わったと言えますね。
【JAFCA×武蔵塗料】「Episode1:JAFCAが見た、時代と色の移り変わり」は、以上となります。
Episode2も近日更新いたします。ぜひ、お楽しみに!