【JAFCA×武蔵塗料】デザイナーが自分らしくクリエイティブするために③
Episode3:「音楽とにおい」に込めた思い、五感に届けるカラー提案〈ハローブルー作ってみました〉
こんにちは、note編集部です。
前回に引き続き、JAFCAさんとの対談企画をお送りいたします。
Episode1・2をまだお読みになっていない方、もう一度読みたい方は、以下のリンクからぜひご覧ください。
JAFCAさんのnoteは、こちらからご覧ください。
❶色が伝えるメッセージ、視覚を超えた感覚の探求
金子(武蔵塗料):色が人に与える影響をしっかりと伝えていきたいという事ですが、具体的にどのようなことを行っていますか?
大澤(JAFCA):そうですね、伝え方にはさまざまな方法がありますが、私たちは単に色を提案するだけではなく、その色が持つメッセージをストーリーとして伝えることを大切にしています。
例えば、2024年秋冬のテーマ「ネイバー:仲間」では、落ち着いた色を中心に展開しています。
1つ目は、イメージビジュアルに肌色や、柔らかな花などを用いて、温かさや親しみを感じてもらえるような雰囲気を作り出しました。
2つ目は、グリーン系の色を取り入れました。これは、自然の力だけでは回復が難しい部分を、人工的な技術を使って生態系を復元するという意味を込めています。光やテクスチャーを工夫し、技術で自然を補いながら再生していくメッセージを表現しています。
金子(武蔵塗料):昨今は、メタバースの分野が急成長してきて、実物のデザインよりもサイバー空間でのデザインが増えて来た気がします。それに伴って、企業がリアルなデザインに投資するお金が減ってきたのではないかと思うのですが、どう感じますか?
大澤(JAFCA):確かに、リアルなデザインが軽視されているような気がします。デジタル空間で物事を済ませることが多くなり、時には何でもデジタルでできてしまうかのように錯覚しがちです。
しかし私たちの身体はリアルな世界に生きていて、五感をフルに稼働させながら活動する有機的な生き物です。だからこそ、リアルな世界で使うプロダクトには、豊かな触感や色表現が重要なのだと思います。
また、私たちの身体はもともと自然の一部であり、ひとりひとりが唯一無二の存在であることを忘れてはならないと考えます。
今は、個々が自分の価値基準で価値基準で満足を追求し、他人と比べるのではなく自分の価値基準で幸せを考える時代です。誰かが提案する幸せに合わせるのではなく、自分に合った幸せを探す人が増えています。だからこそ、デザインや色にも特徴を持たせ、個々の感性に訴える必要があります。色や形を通じて、自分自身の個性をもっと表現していくことが大切ですね。
JAFCAでは、色が持つメッセージを作るにあたり、数年前から「音楽とにおい」にも取り組んでいます。
金子(武蔵塗料): においもですか?
大澤(JAFCA): はい、色のイメージに合わせて「音」と「におい」も提案しています。そのシーズンに合わせたオリジナルの「音」と「におい」をプロに依頼して作ってもらっています。これは2024年秋冬のテーマ「ネイバー:仲間」に向けたものです。ぜひ嗅いでみてください。
今は五感で感じる時代ですから、視覚だけでなく嗅覚や聴覚も意識しています。
金子(武蔵塗料): 葉っぱのようなにおいですね。
大澤(JAFCA): そうですね、金属感も入れたと言っていました。優しいけれど、少し辛めの良い匂いです。
金子(武蔵塗料): においにも色があるのですね。
「音色」というように音には色があるとされていますが、色とにおいがリンクするのは面白いです。
大澤(JAFCA): においを作るときには、エバリエーターという役割の人がいて、物理化学の専門家にイメージを伝える役割を果たしています。担当者に正確にイメージを伝える能力が重要です。彼らは、カラーチャートのような香りのチャートを持っています。
音楽については、こちらになります。
【色のイメージから作られたオリジナルの曲が流れます。】
❷メッセージを読み解く、武蔵塗料がインスパイアしたハローブルー
金子(武蔵塗料): "来年の色"という形で、その年のテーマカラーについての発表を2015年から始められていますが、この取り組みのきっかけを教えてください。
大澤(JAFCA): これは時代を表すメッセージのようなものです。「来年の色・メッセージカラー」として、翌年を象徴する色を1色発表しています。この色は、インターカラーやJAFCAのファッションカラーとしての発表とは違う新しいアプローチです。来年のトレンドカラーという意味ではなく、時代に向けたメッセージを色に置き換えています。
金子(武蔵塗料): 2024年のテーマカラーは「ハローブルー」でしたね。
大澤(JAFCA): 現代は本当か嘘か分からない奇妙な情報に溢れています。正解のない、答えは自分の中にある時代です。だからこそ「冷静になりましょう、知性が大事ですよ」というメッセージを込めて、ブルーが選ばれました。自分の頭で考え、情報に流されないようにという思いがあります。
また、「ハロー」という言葉にはポジティブで前向きな意味が込められています。
※以下のリンクよりご覧ください。
金子(武蔵塗料):ハローブルーに込められたメッセージを想像しながら、弊社でサンプルを用意しました。社内には、イメージをもとに実際の色を作り出せるスタッフが何人かおり、そうしたスタッフに依頼することで、さまざまな質感や色の組み合わせによる多様な表現が可能になります。
金子(武蔵塗料):ハローブルーの色コードもあると思いますが、メッセージに正解やハズレはありません。大切なのは、使う方のイメージです。
「これがハローブルーなんだ!」と感じてもらえることが重要ですし、「もう少しここをこうしてほしい」といった要望があるかもしれません。このサンプルが何かのきっかけになればいいと思っています。
大澤(JAFCA): まさにその通りですね。現代の消費者はお仕着せを好まず、自分が選んだかのようなヒントを求めています。そういったニーズに応えられる提案が大切です。イメージを伝えられる、このサンプルはとても素晴らしいです!
❸色とイメージを意識してデザインを進めましょう
大澤(JAFCA): 日本のデザイナーは、色を使うことがあまり得意ではないのかな?と思うことがありました。特にプロダクトデザイナーにその傾向が強いように感じます。ただ、これは個人差も大きいですし、私が携わった方々の中でそう感じることが多かったということです。
色をイメージで伝えようとすると、具体的な色のビジョンが浮かびにくいという声をよく聞きます。
金子(武蔵塗料): 確かに、実際のものを見ないと理解できないと感じる方もいらっしゃいますね。
大澤(JAFCA): そうですね。例えば、照明のデザインにおいて、揺らぐ水のイメージを色にしたいと思っても、その具体的な提案が必要になります。揺らぐイメージのブルーと言っても、揺らぎの形はイメージしやすいかもしれませんが、色表現となると実際の素材に展開しないとわかってもらえないことが多いです。
金子(武蔵塗料): ヨーロッパの方々には、そのイメージが伝わりやすいのでしょうか?
大澤(JAFCA): 伝わる方にはしっかりと伝わりますね。感覚的に、日本よりも色に対する理解度が高いと感じることがあります。
金子(武蔵塗料): 私も前職で自動車メーカーにいた際、デザインの現場を経験してきましたが、当時の自動車メーカーではスタイリングとカラーが分業されていました。スタイリングを担当するのはプロダクト系のデザイナーで、完成後の色選びはカラーデザインの専門家が担当します。このような分業は、日本のデザイン界でも独自のアプローチを生んでいると思います。
大澤(JAFCA):なるほど、そうなのですね。
色を伝える立場としては、作り始めるときから色とイメージを意識してデザインを進めることで、より良い結果が得られると考えています。
例えば、「こう見せたい」というプロダクトのイメージを色で表現することが重要です。色は意識するかしないかによって、見える印象が大きく変わります。デザイナーの方には、ぜひその感覚を目覚めさせてほしいと思います。
今回のハローブルーのメッセージだけでも、さまざまなイメージパターンを創出できました。このように色を積極的に活用することで、デザインの幅が広がると感じています。
【JAFCA×武蔵塗料】「Episode3:「音楽とにおい」に込めた思い、五感に届けるカラー提案〈ハローブルー作ってみました〉」は、以上となります。
Episode4も近日更新いたします。ぜひ、お楽しみに!