【JAFCA×武蔵塗料】デザイナーが自分らしくクリエイティブするために②
Episode2:時代の変化を捉え続けるトレンドカラーの【活用・傾向・創出】
こんにちは、note編集部です。
前回に引き続き、JAFCAさんとの対談企画をお送りいたします。
Episode1をまだお読みになっていない方、もう一度読みたい方は、以下のリンクからぜひご覧ください。
JAFCAさんのnoteは、こちらからご覧ください。
❶トレンドカラーの活用方法
金子(武蔵塗料):JAFCA参加メンバーの方々は、発表されたトレンドカラーをどのように活用されているのでしょうか?
大澤(JAFCA):トレンドカラーに関しては、メンバーの皆さまがそれぞれ様々な形で活用されています。
どう活用されているかをお聞きすると、「自分たちが考えたことの答え合わせのような形になっている」と言われることが多いです。
私たちもメンバーの皆さまも、常に未来を見据えた視点を持っており、その大きな流れや底流、つまり表面的なトレンドにとどまらず、見えにくい深い動きも含めてズレがないかどうかを確認していただいているのが、大きな活用方法だと感じています。
私たちはパントーンなどの色見本の中から単に色を選んでいるわけではなくて、毎回新たな色をオリジナルに作ります。
提案する色は、現市場の色彩動向に対して、例えば、明るい色調にするのか、暗い色調にするのか、強いか弱いか、赤系か緑系かといった方向性を決めることが重要です。現在のトレンドは一つだけではなく複数存在します。それぞれがどちらの方向に進むのかを見極めることを重視しています。
私たちの提案がうまく合えば、その色をそのまま使っていただけることもあります。ただ、企業によって扱う素材が違いますし、企業の特性によってはそのまま使えないこともあり、それぞれの状況に合わせて調整して使用してもらっています。要望があれば、個別にコンサルティングを行います。
金子(武蔵塗料):少し前のことですが、中国でトレンドカラー情報を活用し提案をした経験があります。
2010年頃のことです。当時、中国ではまだトレンドの捉え方が浸透しておらず、インターカラーの情報を使った提案が非常に喜ばれました。しかし、その後、中国でマテリアルコネクションが設立され現地の方々がトレンドを理解し始めると、私たちの考え方やアプローチも変わっていきました。
大澤(JAFCA):アメリカではマテリアルコネクションが作られたのは1990年代の中ごろだったと思います。その頃は世界的に素材に対する意識が高まっていた頃です。その頃、インターカラーで提案される色も日本市場向けの提案でも、色だけでなく、素材自体が注目され始めました。
ファッション業界ではもっと早い段階で、透ける素材や光る素材など、素材感の重要性が増していました。プロダクトデザインの分野でも、素材自体が持つ色が重要視されるようになりました。
❷時代を映すトレンドカラー、今後は脱くすみカラーに向かって行く?
金子(武蔵塗料):現在では、くすんだ色が流行していますよね。
大澤(JAFCA):そうですね。抑えた色調が多いです。
ここ3、4年で、プロダクトでは、ほぼソリッドに見えるグレー系やくすんだブルーが増えてきました。
洋服では、ワントーンのベージュ系、家電ではベージュ系や、黒ではなくて少しグレーがかった色、例えばチャコールグレーのような色が増えています。色調を少し柔らかくする傾向がありますね。強い色調を敬遠する傾向は、今の時代が不安だからなのかもしれません。
少し柔らかくする方向の色調があり、強い色じゃない方が良いという傾向は、今の時代が不安だからなのかもしれません。
くすんだ色が流行する理由は、気持ちを穏やかにする効果があるからです。くすんだ色は自然を感じさせる色でもあります。環境を意識したカラー提案は、今や必須と言える時代です。SDGsや自然、生態系の保護といったテーマが背景にあり、土由来のブラウン系やくすんだグリーン系が取り入れられてきました。環境を重視して再生素材を利用する場合、澄んだ色調や鮮やかな色調が出にくいため、結果として落ち着いたトーンになることも、くすんだ色調が求められた理由だと思います。
現在の傾向としては、くすみが少しずつ抜けていく傾向にあります。今後、大きなトレンドとして、くすみカラーからの脱却が進むと思います。
金子(武蔵塗料):ヨーロッパでも、今後は脱くすみカラーになっていくのでしょうか?
大澤(JAFCA):そうですね、非常に澄んだ方向に進んでいくと思います。
例えば、ベージュではなく、アイボリーのようなもう少し明るい(明度が高い)色に移行するでしょう。色調としては、パステルトーンが主流になるかもしれません。パステルトーンには、人を優しい気持ちにさせる効果があります。
例えば、お花畑のような淡い黄色や淡いオレンジといった色合いが、お互いの思いやりを表現するのに適していると思います。柔らかいパステルトーンに囲まれると、喧嘩や対立を起こしにくくなるのではないでしょうか。
一方で、ダークカラーも存在感を持つと思いますが、それは「ポストブラック」といった新しい感覚を伴うものです。
金子(武蔵塗料):確かに優しい色の武器とかあったら、使わない気がしますよね。淡いピンク色の戦車があったとしても、「かわいいね」で終わるかもしれないし。
❸アーティストから時代のメッセージをキャッチ!色を創り出すプロセス
金子(武蔵塗料):では実際に色を創るとき、どんなイメージで取り組んでいるのですか?難しそうですよね。
大澤(JAFCA):最初に重視するのは、時代背景です。未来を予測するのではなく、今の社会で芽生えている新しい動きや兆しを見つけ出すことが重要です。その時代の変化や空気感を上手く捉えているのが、実はアーティストなんです。
最近は、言葉で自分の考えを巧みに表現するアーティストも増えましたが、多くのアーティストは、絵画や音楽など、視覚や聴覚に訴える表現方法で自身の感情や考えを伝えます。彼らの作品には、時代に対する危機感や理想の未来像、社会に求められるものが色や形、音楽として表現されていて、そこから強いメッセージ性が感じられます。
大澤(JAFCA):そうした兆しを探していく中で「これだ!これがきっと伸びるだろう!」という感覚を掴むことがあります。色の好みも同様です。アンテナを張っている人たちが「いいな」と感じる色や、共感できる色が自然と共通してくることが多いのです。不思議ですよね。
金子(武蔵塗料):感覚的に時代を上手くキャッチしている人たちがいる、ということでしょうか。
大澤(JAFCA):そうです。また、人工知能を使って過去のデータから未来の市場で流行する色を予測しようとする工学系のアプローチもあります。しかし、過去のデータに基づいているため、不連続である未来を予測することは難しいのではないかと思います。
未来の市場に対して新しい色を提案するということは、人々に何らかのインパクトを与えることでもあります。そのため、重要なのは「その色でどのようなインパクトを作るか」という点だと思います。
金子(武蔵塗料):なるほど。では、アーティストや芸術家から感じ取ったものを、JAFCAではどのように膨らませて色の表現につなげているのでしょうか?
大澤(JAFCA):例えば、洋服で言えば、あまりにトレンドを先取りしすぎた商品を出すと、一般の消費者がついてこられなくなります。既に持っている服を捨ててしまうわけではないので、今持っている色にちょっと加えることができる新鮮な色が求められます。
しかし、それだけでは流行に敏感な人や新しい感覚に飛びつく人にとっては面白くないため、これまであまり見たことのない斬新な色も提案する必要があります。
このように「売れ筋の色」「少し目新しい色」「斬新なトレンド色」と、大きく3つに分けて色を選定します。
売れ筋色とは、白、黒、紺色、茶色、ベージュ、グレー系で、だいたい市場の7割を占める色のことを言います。皆さんのタンスによくある色ですね。この売れ筋色の中でも、例えばグレーが主流になったり、茶系が人気になったりと、トレンドが存在します。
アーティストの感性や、実際にお客さんと接している人々の意見を総合し、新鮮さをどのように出すかを考えていくわけです。
金子(武蔵塗料):そういったプロセスで「これで行こう!」となるまでには時間がかかるのでしょうか?
大澤(JAFCA):そうですね。仮説を立てて、それを検証するというプロセスが必要です。これは論理的な部分ですが、継続的に観察していないと出てこないものです。
カラーに携わる人たちは、常に色を意識しています。普通の人は色をあまり気にしませんよね。でも、私たちJAFCAに関わる人たちは、色をしっかりとキャッチしているのです。
多くの人は普段、自分の周りの色を意識していません。でも、無意識のうちに色から影響を受けているんです。明るいとか暗いとか、そんな単純なことでも、誰でも何かを感じているはずです。
JAFCAとしては、その色が人に与える影響をしっかりと伝えていきたいと思っています。
【JAFCA×武蔵塗料】「Episode2:時代の変化を捉え続けるトレンドカラーの【活用・傾向・創出】」は、以上となります。
Episode3も近日更新いたします。ぜひ、お楽しみに!