知的障害者施設という世界
知的障害者 = かわいそう
最初、私の中の感覚は、<知的障害者 = かわいそう>でした。
なので、「知的障害者施設で働かない?」という友人からの誘いは、『かわいそうな人のお世話をする = ボランティア』ではないのか?という疑問を抱かせました。
「かわいそうな方々をお世話して、お給料もらうの?」
私には、そんなわだかまりが残ったのです。
とりあえず面接だけでも…と言われ断れず、施設を訪れました。面接では、これでもかと自分のネガティブさを伝え、
「自分は働くということに挫折してきた人間だ。今も働く自信はない。」と、普通なら即不採用だよね…という内容ばかり。
父親くらいの年齢の理事長と同い年くらいの施設長。嫌悪されてもいいくらいの私のネガティブさにも、ふたりは、
「大丈夫ですよ。私たちのように福祉の知識を持った人間より、子育て経験のある方の方がずっと上手に支援されるということは、よくあります。」
と、優しくこんな話をするのでした。
断るつもりで足を運んだ私に、もしかしたらこんな私でも働けるかもしれない…という淡い期待を抱かせました。
よっぽど人が足りないのかな…?そんな風に思ったりもしましたが…(かなりネガティブ💧)
その後、話が進むにつれ、理事長が私の叔母の友人だったということが分かり、ますます断りづらくなり、私は週4日、午前中だけ働くという契約をすることになりました。
「では、施設内を案内しましょう。」
重度知的障害者
『重度』と聞いて私が思い浮かべた光景は、口頭でのコミュニケーションができず、車イスやベッドに横たわって過ごしている。というものでした。
施設長が、現場への扉を開けると、そこに立っていたのは、ニコニコとしてコロコロ太った20代前半くらいのダウン症の青年でした。
ダウン症というのは、私が唯一知っている障害の名前で、特徴的な顔つきをしているので、すぐに分かりました。
彼は、ニコニコしながら私の手を取り、
「こっちおいで。」と私を自分のグループの部屋へ連れていきました。
ここで驚いたのが、昔から私は人に触れられるのが苦手だったのですが、この時は、まるで嫌悪感を抱かなかったということです。
学生時代に女友達が女同士で手をつないだり、膝に座ったり、髪の毛を結んだり、そういうコミュニケーションですら苦手だった私が…。
自然と笑みが浮かびました。
「ここ、座って。」と私にイスを差し出し、自分もイスに座ると、ただニコニコしながら私の手をにぎり、見つめるだけの青年。
私は「お名前は?」「何歳?」などといくつか質問してみましたが、ニコニコと首をかしげるだけ。
そこに私をこの施設に紹介した友人がやってきて、
「あら、Mさん、珍しいね。初めての人にそんなにコミュニケーション取るなんて。」と言いました。
友人が、「自己紹介して。」というと、青年はドギマギしながら、早口に
「Mです。」と答えてくれました。
その姿のなんと可愛かったことか。可愛いなんて表現はしてはいけないのかもしれないけど、私のなかにはとても幸せな気分があふれたのです。
自分の中でサッと道が開けた瞬間でした。
今後この施設で私はどんどん『支援』というものにのめり込んでいきます。
今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今日もあなたは、あなたらしさをありのままに…