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【原案:こはる/執筆:私】サグラダファミリアは、ずっと同じ場所に建っている

はじめに

・この記事は、「トレトレの妖精」ことこはるさんより届いた「TraceTrace」の解釈に基づき、私が文章化したものである。
・歌詞以上に、MV、特に2番で描くメッセージに準拠した解釈が多いため、MV(できればフル)視聴が必須である。

・こはるさんの原案をなるべく意図通りに文章に落とし込む、という責任があるため、全くふざける気はない。以降超真面目なのでよろしく。

TraceTraceのテーマは「才能」

いきなり結論から行く。
TraceTraceは、秘められていた才能が萌芽し、やがて開花するまでのストーリーである。なおこれは「新・信長公記」での、最終回における信長の覚醒とも一致している。
以下で、それに基づく解釈を述べていく。

「君」「僕」は厳密には4人いる

TraceTrace曲中に登場する「君」「僕」。
これは、別の遺伝子を持つ他者ではない。同一人物である。同一人物を「君」「僕」と分化させるその境界とは何か。
まず、才能の開花の以前・以後である。時間軸上で分割されている。
そして、MV上では、黒空間と白空間に分かれており、明らかに別の状態を思わせる造りになっている。これを、黒空間=身体世界、白空間=精神世界と捉えた。

分かりやすく整理すると、まず1人の人間が外面(がいめん、身体)と内面(精神)を持っている。その人間が、才能の開花以前・以後を境界として「君」と「僕」に区切られる。

MVにおける才能の萌芽

MVの身体世界と精神世界の分化は上に述べた通り、黒空間と白空間で示唆されている。では、才能の萌芽から開花、という時間軸上の変化はどこで示されているか。

まず、才能の萌芽。2番歌い出し、白空間で5人の実体は静止しているが、影が踊り始める。これが無垢な白い精神世界での自我の萌芽であり、才能の萌芽である。

また黒空間においては、水の上に椅子を置いて座っている。ここはこはる人格ではなく私人格を出してしまうが、水は生命の原初である。
さらに付け加えるとしたら、1番の黒空間は光の道を歩き、光の波形に包まれ…と、光をテーマにしているのは明らかである。
光と水(と大気)、これは生命の誕生の必須条件である。光に水が加わる2番を境に、才能が萌芽することを示唆している(と思う)。

2番Bメロ。白空間では、影が立体化したと思われる黒い人物が踊っている。萌芽した才能と自我が徐々に躍動し始めている。
そして2番サビ。黒空間での、水上の激しいダンス。誕生した生命がこちらも強く躍動している。

才能の開花という境界

間奏の白空間でのアンドロイドダンス。1番の黒空間で使われていた光の棒が登場したり、上から光が降り注いだりと、黒空間と白空間の境界があいまいになっている。身体世界と精神世界が統合されつつある。
さらに、黒空間のメンバーが無表情で椅子に座るカットが続いたのち、Cメロでは薄い膜を通り抜けようとしている。これらの映像表現がCメロの「ここが君と僕の境界」という歌詞と重なっている。今回の解釈においては、先に定義づけたように才能開花以前の「僕」と開花以後の「君」の境界の示唆であると受け止めた。

そして明確に境界を”越えた”瞬間が、Cメロと大サビの間、
黒空間:膜を5人が通り抜ける
白空間:5人の上にメンバーカラーのインク?が爆発する
ここである。
それ以降は、白空間はカラフルなステージで踊り、黒空間は水しぶきをあげて躍動する。しかも、「重なって」という歌詞の部分ではしっかり、黒空間と白空間のメンバーの映像が同じフォーメーションで重なる演出になっている。
最終的に、水で形作られた花が開花し、白空間のステージ外の花はさらに増えている。

「未来」が意味するもの

TraceTraceの詞において、その解釈を難解にしている要素が「時制の錯綜」であると以前(私が)書いた。
具体的には、

未来忘れて分からなくなったんだ

未来思い出して今分かったんだ

という、未来と過去が共存するフレーズのことだ。
こはる説においては、この未来を「生まれ持った才能」「決まっていた運命」と定義づけた。
これを当てはめると、”未来を忘れる”とは生まれ持った才能に無自覚である状態を表す。そして”未来を思い出す”は、才能を自覚し、己の運命はこう決まっていたんだ、と思い出すということだ。

私見:詞の難解な部分に当てはめてみる

これまでは、こはるさんから与えられたフレーズや文章に、根拠やワードを肉付けして書いてきた。
このセクションは、こはる説を受けて私がそれを詞の、特に難解な部分に適用し解釈したものである。こはるさん違ったらごめんな。

まず、時系列でいうと「君」が開花以前、「僕」が開花以降。
これを踏まえると、

僕は今ここ 足跡のない場所
ここにある歴史刻みこむように
また今を思い描いて自由に
僕ら今ここ 足音残していこう
君の絵に愛を せめて今だけ

歌詞中の「覚める」という表現に準拠し、才能を自覚、と表現するなら、
「僕」は才能を自覚して、精神的にはあたらしい境地=足跡のない場所に居る。
そこは過去(歴史)と今が混在している。
そして、”せめて今だけ”とは、才能開花後の未来から、今を振り返った時、君の絵をどう思うかは分からない。だからこそ、今だけは過去の君の絵を愛そう、ということではないだろうか。

ここが君と僕の境界
どうやっても君が知ることのない将来
残らない軌跡の果てで ペン先突いて高く鳴らそうな
朝に触れた手に重ねて
なぐり描きした白昼夢
全て焼く夕景
夜を越えてまた明日で会おう

1~2行目は、君と僕が時制的には過去と未来であることを踏まえると解釈は容易。
残らない軌跡の果て…君と僕の精神世界での変化の軌跡は、身体世界(外面)では残らない。だからこそ書きつける、あるいは描きつける。
4行目以降は、君と僕がまだはっきりと分化していない、萌芽→開花の途中の混沌とした状態であることの示唆ではないかと思う。1日を経て、また明日は君・僕の共存する状態に戻る。たぶんこれを何日か分からないが繰り返して、徐々に開花の瞬間に向かっていくのではないか。
MVでもこの部分は、黒空間は膜の存在に気づき手で触れている状態で、完全に膜の向こうには行っていなかった。視覚的に表現するとそういうことではなかろうか。

本稿のタイトル「サグラダファミリアは、ずっと同じ場所に建っている」について

このタイトル、もちろん私のセンスではない。こはる案である。
実のところ、執筆者でも完全にこのタイトルが意図するところについて理解しきっていない。が、おそらくこうかな?というところで書くと、

「サグラダファミリアとは未完成の象徴である。つまりTraceTraceにおいては、才能が開花したばかりの未完成な『僕』を示している。
その僕は、少しづつ変化しながらも、変わらずそこに在り続ける。『在る』とは身体の実存のこと。
表層上、『僕』という身体の実存は変わらないが、君→僕のように精神世界は変化し続けている」

こはるさん、合ってますか?
ここについては、こはるさんと私の解釈の乖離ぶりを残したいので、こはるさんのチェックを経て上書きするのではなく、以下にこはる解釈を書き加えていきたい。


(下書きを読んだ)こはるコメント


・いやソウルメイトすぎるやろ

・このままいてまえ

いえ〜い。

所感

今回初めて、原案ありで書いてみたけど、イメージをすり合わせたり、予めテーマや各表現の定義付けがある中で書くのめちゃくちゃ楽しかった。そして意外と書きやすい。

でもこれ、たぶんこはるさんとだから成立したやつだな…。
こはるさんが、解釈のすり合わせの段階で「うーん…」な部分はしっかり言ってくれたし、A=Bとキッパリ言ってくれる部分と、比喩表現豊かに色んな角度から表現してくれた部分とがあったから、すごくやりやすかった。

こはるさんまた何か思いついたら教えてくれ。
これからもソルメだよ🫶🏽

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