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宇宙の黎明 King & Prince「Re:ERA」前半戦に思う

King & PrinceのNew ALBUM 「Re:ERA」についての雑感を書いていきたい。
雑感、読んで字の如くである。
考察めいたことは今回はしない、と思う。
ただしオタク側のバイアスや推測も入ってしまうので、それは考察だろ、と言われてしまうと返す言葉がない。

アルバム全体を通しての感想を書きたいと思っていたのだが、聴き流すことと腰据えて聴くことは全く違い、今全体を「本気で腰据えて聴く」ができる自信がない。
前半は間違いなく腰据えて聴いたので、そこで得た個人的感情を書いていきたい。
特にツボった箇所がピンポイントであることや、コンセプトアルバムという性質上、アルバムの全体像を掴むにはある程度咀嚼したり、情報を収集・整理せねばというのも理由に含むが、言い訳めいてきたのでこの辺にしておく。


あるはずのない宇宙の黎明が、確かにある

宇宙の黎明というものは、あるけれどもない。
「はじまり」という意味では確かにあったけれども、「日が昇る」「夜明け」という意味では、ない。
しかし、「Odyssey」「WOW」からは、黎明を感じ、その舞台は宇宙であると感じた。


私は英語が本当に全く出来ず、しかもリスニング能力がポケポケプーなので、当初「Odyssey」の歌い出しが“The dawn will come”であることに全く気がついていなかった。それでも、音作りで「ああ、黎明だな」と思わせる位に、曲全体がメッセージをきちんと(きちんと、だ)発信・表現していると感じる。
アルバムのコンセプト的に舞台は宇宙なのだけれども、そこに大地があり、生命があるのが分かるーーと書くと気恥ずかしいが、実際そうなのだから仕方ない。エンタメ素人ムーブかますが、「ライオンキングみたァい」と思った。かいごめ(久々すぎるけど皆覚えてる? かいちゃんごめんね、です)。

宇宙と大地、ここには何の矛盾もない。人類が月から持ち帰ったのは月の石であり、星は宇宙の塵から生まれる。暗い宇宙は決してクリアな空間ではなく、土臭さや雑味がある。今自分たちが立つ場所の根本を突き詰めた結果、宇宙空間で、他の星を観測するに至った、という論理を、勝手に想像し勝手に大肯定している次第だ。
他者の根本を理解するためにじっと見つめる、これは「流行り言葉みたいに消費されてて心外な言葉第一位」の“多様性の尊重”というものだろう。音楽性の前に、コンセプトの時点で非常に現代的である、と思う。
作詞者髙橋海人の眼差しのあたたかさと、それが尊重されるチームの強さに想いを馳せ、オタクは大都会TOKYOに向かって手を合わせている。


modernとprimitive ーー LOVE HACKERとmoooove!!の対比

アルバム前半戦で「堪らないな」と思ったのが、LOVE HACKERとmoooove!!、この2曲が続く流れである。
対立構造好きには堪らない、いい〜感じの対比なのである。

LOVE HACKERは、人間の感情をFace IDやCPUといった単語を散りばめて、デジタルに重ねて表現しているが、その実、感情自体は「友達だったはずなのに最近なんか気になっちゃう……」という、アイドルソング王道、「アイドル大好きプラン・ベーシックにも標準装備」的超ありがたいテーマである。古き良きアイドルソングの系譜を引き継ぐ、純粋で高潔な感情を描いている。

その次の曲、moooove!!は既発のシングル曲なわけだが、コンセプトアルバムを発表するにあたり、この既発の曲たちをどう扱うかが気になっていた。しかし流石である。絶対にここだな、という位置でmoooove!!が繰り出され、痺れた。
moooove!!は、現代の明治通りの排ガスや、センター街の生ゴミ臭が絶妙に希釈され、その雑踏を走り抜ける若者のプリミティブな輝きを思わせる。それは、同じ若者の輝きを表現しているLOVE  HACKERの、「雑味が排除されたデジタル世界に残った高潔な感情」と対立すると感じている。

同じ若者の「エモ」を描きながら、一方は物質の手触りが希薄になっても人間には確かに備わっている、結晶のようなエモであり、もう一方は埃っぽい空気の中で逞しく生きる人間の原始的・根源的エモである、と思う。そんな2曲を並べられてしまったら、オタクはピエエ……と鳴くしかない訳だがその直前のコンマ数秒間にこの記事を書いた。

あとコンマ1秒残っている。
ちなみに見出しに、LOVE HACKERを指す意図で「modern」と書いたが、これはfutureでなく、やはりmodernだ。パスワード解除して相手の心を覗きたい、と思う感性は、近未来ではなく、明日にも存在し得るものだからだ。

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