夢は猛毒
「○○〇氏は、夢はあるの?」
28歳で夫と結婚し、初めて夫の親友C君に紹介されたとき、そう聞かれました。
(C君は、私のことを”下の名前+氏”で呼びます)
彼は決して、意識高い系鼻につく系の人ではありません。
地元の畜産業の危機的状況を見て、彼の学んできたことやキャリアを地元に還元したいと転職した、明確で、地に足の着いた夢をもつ人です。
しかしその質問は私には衝撃的でした。
当時私は28歳で、Uターンしたばかりで、夢を持つという発想がなかった。
今思えば、28歳なんて若い若い。
Uターンして心機一転、新しい職場で、何だって目指せたかもしれない。
でも当時の自分は「いいトシ」だと思ってました。
いや、それ以前に、私は人生において「夢」というものを、本気で持ったことがなかったのです。
高校卒業後は地元を出て東京で暮らしたい。これは願望。
夫と家庭を築く為、試験に合格して職を得たい。これは誠意。
結局その時何と答えたかは覚えていませんが、その後折に触れて、夢について考えました。そして一応出した結論が
「ステラおばさんみたいなルックスで美味しいお菓子を焼く」
でした。
普通に製菓にハマって体重増えてたからです。お前、それは正当化。
それから紆余曲折ありまして、noteというプラットフォームで文章を書きまくる日々を送り、皆さんに認知されるに至りました。
それはそれは、楽しい日々です。
愛する推しについて、「好き」「かっこいい」「おもしろい」「様子がinteresting」と書き続ける。それを読んでもらえる。笑ってもらえる。
これ以上のことは望むべくもない、と思っていました。
しかしながら先日、私は、初めてがっつりと夫について書きました。
これを書くにあたって、そして公表するにあたって、たくさん逡巡しました。
褒めているとはいえ、踏み込んだことを勝手に書かれる夫の気持ち。
私は夫を利用しているのか?という疑念。
私をフォローする人たちにとっては、何の興味もないかもしれない、私たち夫婦の話。
実際、最初にアップした直後にフォロワーさんが減り笑 ←全然いいんですよ!
あぁやっぱこれって求められてないよなぁ…と、記事自体非公開にしました。
でも翌日、他の人たちのin東京ドームのレポを読み、その中に紛れ込ませるくらいはしてもいいだろうと、再UPしました。
結果、画期的なことが起きました。
かつて「オードリーのオールナイトニッポン」のディレクターを務めた石井玄氏、
現在「オードリーのオールナイトニッポン」の放送作家を務める飯塚大悟氏の両氏から、先述の記事に”スキ”が付きました。読まれたのです。
「俺みたいなんがおるってことが、付け焼刃(オードリーANN制作陣)に届いたんや」
ぽつりと言った夫の言葉。嬉しそうな顔。一生忘れられない経験です。
自分の書いたものが、目の前の人を幸せにし、人生の大きなイベントとなった。
こんなことは、そうそうないと思います。
もしかしたら、もう一生ないかもしれない、とも思います。
でも私は、「この瞬間をもう一度」と思ってしまいました。
自分の書いたものの力で、今度は自分を幸せにし、人生の大きなイベントを起こしてみたい、と。
具体的に言ってしまうと、自分の書いたものが商業出版される未来を夢見てしまいました。
こんな夢を抱くと、人はどうなるのか。
今、とても辛いです。
高確率でそれが破れることが分かっているからです。
夢中で書く、推敲する、次に書けることを考える、その合間に、気づけば項垂れ、気づけば涙が溜まります。
夢を持ち続ける人、追い続ける人。皆こんな気持ちで生きているのでしょうか。
そのような生き方は、強く苦しく孤独で、尊い人生だと思います。尊敬します。
この苦しみに打ち克ち、尚且つ「才能」「巡り合わせ」という圧倒的にどうしようもないもの、それらが揃わないと、夢は叶わない。
「夢を見る」「夢を追う」「夢破れる」言うは易し、でした。
こんなありふれた言葉が、ここまで人を苦しめるものだなんて。
生まれて初めて明確に夢を持ち、夢というものが「猛毒」であることを思い知りました。
いや、皆が皆そうではないとは思いますけど…。
ひとまず今は、この毒を飲み続けます。
耐え切れなくなった時、またここに、長文書き散らし海人担のフィールドに戻ってこられたら。せめてそのくらいの余力が残っていたらいいなと思います。
(いや、別に今でも書きますけどね!前ほどの異常執念では書けてないですが)
全若人に伝えたい。
30後半でも人は全然惑う。分不相応に惑う。
地元にUターンし安泰な職に収まろうが結婚しようが子供を産もうが、全然、人間としての無謀さ愚かさ惑いは、消えることはありません。
全若人、と書いたけど、きっと私もまだ、若人です。
そう思うことは自由ですからね。
この足掻きを、見守るでもなく、傍から「やってんな」と眺めてる、そのくらいのスタンスでよろしくお願いします。
※こちらの記事を拝読し、日曜の朝から夢に向き合った次第です。
個人的には、「この言葉に応える力のある人だと思っての講評」なんだろうなぁ、と思いました。
強く素敵な方だ、とも思いました。