この小説のプロローグ部分(全 5 頁)、それに加えて第1章のほぼ1頁分の原文(18-19頁にまたがる部分)が公開されています。 今回読むことにした小説は Elif Shafak の小説、"The Island of Missing Trees" です。これはNote 記事、Irene さんの洋書レビューに心惹かれたことに依ります。感謝を込めてここにリンクを張っておきます。
1.立ち木は人が体験できる期間よりも遥かに長い期間の出来事を体験し記憶しています。
私の第一回目の記事にある「マグノリアの花」では川の岸辺にあるヤシの木が人々の生活、歴史を語りきかせてくれました。今回の "The Island of Missing Trees" ではイチジクの木が主人公家族の様子を観察していて話してくれます。何れの場合も、これら立ち木が記憶している期間は人間ひとりの寿命を遥かに超えて長いことが小説に面白い効果を与えます。”The Island …" では年輪の歪み(Warp)が記憶部分の一形態とされこの小説に特有の Scientific な香りを放ちます。
2.両親の下で子供が育てられることの意味。
しっかりした両親の下で育てば、その土地にあって両親が外人であっても当地の言葉の達人になれるのです。この小説の登場人物である Ada にしろ、この作品の著者である Elif Shafak にしろ、異国で成長したのに見事な英語の使い手です。彼女達とは真逆に、親と切り離なされた子供たちの存在を確と頭に思い浮かべずにはおれません。こんなことを言う私は、今、トニ・モリスンの「マーシー (A Mercy)」を思い出しているのです。「マーシー」では子供と親の繋がりを無視して売り飛ばされていく人々にとって親から子に引き継がれるべき生きる為の基本行動さえ伝えられないことと、それが、当事者のみならず、そのような人々がいる社会にどれほど残酷な将来を生み出してきたのか、その事の重大さを思わずにはおれません。
3.イチジクの木の物語からはレーチェル・カーソンが描いた自然の匂いが噴出してきます。
レーチェル・カーソンが当時の世界を覚醒させた「自然への目の向け方」を、この小説の登場人物は当然の発想といえるレベルにまで自身のものとしています。例えば次の文章です。<From 2 lines at the bottom on page 41, "The Island of Missing Trees" a Penguin Book> 自宅の庭でイチジクの木の手入れをしていた父 Kostas は 自分の16才の娘 Ada に語り掛けるのです。 時は2017-19年です。
R. Carson の 'Silent Spring' は1950年代の作品。小説というよりノンフィクションです。< Chapter 1: "A Fable for Tomorrow." Excerpt from the first page of this chapter>
このハラハラ・ドキドキは Michael Morpurgo の小説「Private Peaceful(兵士ピースフル)」のハラハラ・ドキドキを思い出させます。一方は一人の心の中の戦争、もう一方は国の戦争(第一次大戦、ベルギー・フランス国境地帯)と異なりますが。Private Peaceful では次の通りです。(ご注意:題名のPrivateは個人のという形容詞でなく「下級兵」の意味です。Peaceful は良くあるイギリス人の Family Name であって、「平和な」という意味の形容詞ではありません。)
私の記事、これまでの記事(27回目とそれ以前のものすべて)は当該作品を最後まで読了し2-3回読み返した後の Study Notes を公開していました。今回からの「The Island of Missing Trees」は読了以前の進行途中で、Study Notes を公開し始めています。最終回までたどり着いた後に、公開済みの Study Notes にかなりの数の訂正を入れるかも知れません。ご留意ください。 この記事ではまだ読み終わっていない小説故に、読み進むその時その時に、自分の記憶を総動員して目の前の話題の把握に努める私の内輪の作業を人目に曝すことになってしまったなと複雑な気持ちでいます。 以上。
6.Study Notes の無償公開 "The Island of Missing Trees" の Pages 1-49 に対応するものとして、 StudyNotes_TheIslandOfMissingTrees_Part 1を以下に公開します。