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超常現象研究会 活動記録 コックリさん参
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not Aflac 作
参.
悟は一人家路についていた。その間誰かに見られているような視線を感じるのだが周りに人などいない。先日のコックリさんからどうもおかしいのだ。瞳の存在は少なからず我らが超常現象研究会の中から消えているらしい。なぜ自分だけが覚えているのかは不明だ。
薄暗い路地を歩きながら悟は考察することしかできなかった。視線の正体など所詮は妄想なのだろう。超常現象研究会の部長でありながら悟はオカルトに対して懐疑的なのだ。妄想だからといって怖くないわけではないのだろうが、その恐怖を認めてしまった瞬間、悟はオカルトに屈服してしまうことになる。オカルト懐疑派であることを貫き、全ては現代の科学で証明するために超常現象研究会を作ったと言ったとて過言ではない。
ヒタ・・・ヒタ・・・
視線の次は足音である。誰かが後ろにいるような感覚。後ろを振り向けどそこには誰もいなかった。
誰もいない。そのことはあまりにも現実的なことのはずだ。こと現在この場所においてそれは、あまりにも非現実すぎた。ここは先ほど歩いていた路地から少し出たところ。夕方の今時分ならば人通りはそれなりにあるはずなのだ。そのはずなのに、人ひとり歩いていない。それは悟の後ろだけではなく、前もしかり。
後ろを振り返り人がいない事に気づいた悟が前を向いた刹那。そこに狐の面をかぶった誰かが立っていた。少し離れたところから悟のことを見つめているかのように佇むその者はピクリとも動こうとしない。悟までもそこから動くことができなくなってしまった。
それからどれだけの時間がたったのだろうか十秒、十分、時間の感覚さえ分からなくなるほどの緊張感の中動かない足をどうにか動かそうとするもピクリともしない。急に、視界に一瞬ノイズのようなものが走った。すると悟の体から力が抜けその場に腰を落としてしまった。
目の前にいた狐の面はもうどこにも姿はなく、その代わりにいつも通りの町の喧騒が悟に寄り添っていた。
体験したことを理解することもできず、悟はその場でしばらく腰を落としたままとなっていた。あまりの安ど感から何も考えることができなかった。それは、周りの目など気にもならないほどに。