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【脚本】LAST CHRISTMAS


notAflac 作


この季節が来るといつも思い出す。

女:ねー、今年はさどこか外で過ごそうよ

男:ん?

女:もう、クリスマスだよ。ク・リ・ス・マ・ス

男:あークリスマスねー

そんな風にとぼけながらも僕は今年のクリスマス、ちょっとしたサプライズを準備していた。

大好きな君に決してにバレてはいけないというスリルで胸が張り裂けそうになりながら君と話す。

女:もー今年も仕事だなんて言わないよね

男:今のところは・・・休みになってはいるんだけれどね

女:去年もそう言ってた

女:それなのに、二日前に急に仕事入ったって言ってさ、帰って来た時にはイブ終わっちゃってたじゃない

男:あれは・・・仕方なかったんだよ

女:大丈夫。ちゃんと理解してるつもりだから。でも、今年こそはね

男:そうだね、どこかいけたらいいね

そんな風にねだる君があまりにも可愛らしくて、愛おしくて、今すぐにでも抱きしめてしまいたい。そう思いながら冬の寒空を二人で歩く。

君の手の温もりも、この寒さのおかげでより暖かく感じられると思うと慈しみさえ覚える。

女:ほら、イルミネーション。綺麗・・・

男:・・・

僕は綺麗だと呟く君の瞳に映るそのイルミネーションから目を離せなくなってしまう。

女:もう、せっかくこんなに綺麗なイルミネーションがあるのにどこ見てるの?

男:いや・・・あぁ、綺麗だね

女:帰りにさ、いつものシュークリーム買って帰ろうよ

男:いいね

女:あのシュークリーム、何個でも食べれるんだよね。

男:また、食べすぎて夕ご飯入らなくなっても知らないぞ?

女:甘いものは別腹なの

男:太るぞ?

女:もうっ、そう言うことはレディーに言っちゃダメなんだよ

刻一刻と大切なあの日へのカウントダウンが過ぎてゆく。

1日

1時間

1分・・・1秒とすぎるこの時間があまりにも大切で、愛おしい。


クリスマス当日


女:わーすごく綺麗・・・こんな高そうなお店・・・大丈夫なの?

男:任せとけって

男:今日は去年の分も一緒にクリスマスをめいいっぱい楽しもう

高層ビルの最上階から見える夜景を見ながら食べるフレンチにシャンパン。

けれど、この後のことを考えると味すらわからない。

こんな幸せな時間が永遠に続けばいいと思う反面、早く終わらせてしまいたい。そう願う自分すらいる。

女:こんなにも綺麗な景色の中で食べれるなんて、幸せ

女:もう、今年も終わりだね

女:こんな幸せが、来年も再来年も続いて欲しいな

男:あぁ、うん。そうだね・・・

そう、永遠に続いて欲しい。けれど、始まりがあれば必ず終わりが来るのは世界の真理なのだろう。

女:ねー年明けたら誕生日でしょ。何が欲しい?

男:別に何もいらないよ。歳なんてもう取りたかないって。

女:まーた、そんなこと言って

不貞腐れる君の姿もやはり可愛くて、宝石箱に閉じ込めてしまいたいとさえ思ってしまう。

それから、先日通ったイルミネーションの中を歩きながら君の手を握って歩く。

ダンスを踊るようにヒラリとこちらに身体を向けて彼女は僕に笑いかけて、

女:今日はすっごく、楽しかった。ありがとう。

男:まだ・・・終わっては・・・

女:え?

僕はコートのポケットにしまった小箱を取り出して君に開いて見せる。

女:ふぇ?あ・・・その・・・

まさか、こんなプレゼントを僕が準備していただなんて知る由もない君は指輪についた装飾よりも綺麗な涙を流しながら

女:あ・・・ありがとう、すごく嬉しい。

女:これ、つけてもいい?

男:つけてあげる

そういって、雪のように白い君の指にリングを差し入れてあげる。

女:ど、どう?似合ってる?

男:うん、すごく似合ってるよ

それから家に帰ると君は指輪を大切そうに右手で覆いながら、天使のような顔をしてすやすやと眠っている。

男:メリークリスマス・・・


25日朝


女:え?

きっと今頃君は僕のことを探しているんだろうね。

だけれど、君のそばにはもう僕はいられない。最後に残してきた君への手紙は僕の弱さなんだ。

手紙:この手紙を読んでいる頃、僕は君の前にはいないのだろうね。何も言わずに君の元からいなくなってしまうこと最初に謝らせてほしい。

手紙:ごめんなさい

手紙:最後のクリスマス、君と過ごすことができて本当に僕は幸せだった。君の瞳も、君の指先も、君の小さな背中も全て、僕のものにしてしまいたかったけれど無理なようです。

手紙:実は、僕の命は次の誕生日まで迎えることなく燃え尽きてしまうようです。


手紙:だから、僕がまだ君と楽しむことができる最後の日、幸せな思い出を送りたかった僕の我儘を許してください。

手紙:愛してるよ、僕が唯一この人生で愛することができたのは君だけだった、そんな君にはこれからもっといい男ができるかもしれないなんて考えると・・・ちょっと焼けてしまいます・・・

手紙:だけれど、君には幸せになって欲しいから。だから、僕よりもいい男を見つけてください。


女:バカ・・・

女:なんでよ、なんでそんな風にいなくなっちゃうのよ

女:私、知ってたの。君の体のこと、知ってたの

女:君の秘密

女:だけれど、そんな現実から目を背けていた

女:きっと、そんな私への罰なのかしら

君はもう大丈夫だろうか・・・泣いてるんじゃないだろうか

そう思いながらベットに横たわる僕は独り呟く

男:愛してるよ

どこに届くかもわからないほどかすれてしまった声で独り呟く

男:愛してるよ

女:私も愛してる

僕はあまりの恋しさに幻聴まで聞こえてしまうほどになってしまったのだろうか。

女:バカ・・・

あぁ君が僕にいつも言っていたその言葉・・・・

女:バカ・・・

何処か切なげな君の口癖と共に、手に温かみを感じる

男:なんで・・・

目を開けるとそこにはこの世界で最も美しい宝石よりも綺麗な涙をほおにこぼす君が・・・少し笑いながら・・・僕を見ていた

女:もう、一人でどっかに行くなんて許さないんだから


fin…


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