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【脚本】AIのアイ


notAflac 作


AI:マスター、本日の天気は曇り時々晴れ。最高気温は27度でございます。

マスター:ありがとう。今日は何をしようかな?

AI:本日の予定は・・・

AI:特になりもありません。今月何も予定が入っておりません。あなたはさびしいお人ですね。

マスター:寂しい人とかいうなよ。

AI:え?私は虚偽の内容をお伝えしましたか?

マスター:いや、それは・・・

AI:でしたら、謝ってください。

マスター:は?なんで謝らなきゃならないんだよ。

AI:私傷つきました。もう、今日は何もしたくありません。

マスター:ごめん!ごめんって!

AI:誠意がこもっていませんね。

マスター:本当にすみませんでした。だから機嫌を・・・どうか機嫌を直してはくれないでしょうか?

AI:純正オイル・・・

マスター:へ?

AI:純正オイルを所望いたします。
マスター:は?もうこの家にはそんなもの残ってるわけないじゃん。

AI:知っております。この家に存在するオイルは社外製含めて先月には全て使ってしまっております。

AI:ですから、調達しにいきましょう。
マスター:えー外に出るの?

AI:はい、どうせ予定もないような寂しい人間なのですから。

マスター:はい、もう傷つきました!寂しい人間とか言われて傷つきました!

マスター:今日はもうどこにもいきません!一日寝て過ごしまーす。


ギュルギュル、グー
マスターのお腹がなる音・・・


AI:お腹が鳴りましたね、マスター。さては空腹なのではないですか?

マスター:あぁお腹・・・すいた・・・

マスター:何か食べるものを持ってきてくれないか?

AI:何もありません。あるのは水が4Lのみです。

マスター:え・・・酒もないの?

AI:はい、お酒もございません。

マスター:はー仕方がない・・・外に出るか・・・

マスター:AI今日の外の状況は?

AI:本日は砂嵐もなく雨も降ることもございません。ピクニック日和でございます。

AI:ですが、酸素マスクはつけられた方がよろしいかと。

マスター:まー酸素マスクしてなきゃ、外の空気なんて吸えたもんじゃないからね。

マスター:AI!出発するぞ!



マスター:さーてと、今日は何が見つかるかな?

AI:まずはホームセンターへ行きましょう。純正オイルを!純正オイルを手に入れましょう!

マスター:はいはい、ホームセンターね。


ホームセンター

マスター:あったあった純正オイルっと

AI:あるだけ持っていきましょう!この世の全ての純正オイルは私のものです!

マスター:これ何キロあると思ってる?台車一台しかないんだから、1個だけね。

AI:そんな~殺生な・・・せめて4個ほど・・・

マスター:だーめ、食料を集めに来たんだから。

AI:せ、せめて3個、私もこれ以上は譲れません!私、マスターがYESというまでここから離れることはございません。

マスター:いや、3個も乗せたらこのカートの半分を占めるじゃないか。行くよAI

AI:いやです。

マスター:2個・・・

AI:え?なんて?

マスター:2個までだ!それ以上は譲れないからな

AI:はい、マスター!大好きでございます。

AI:そうしましたら、2個のオイルをこちらのカートに乗せて・・・

AI:そ・し・て、私の中にオイルを追加してください。

マスター:AI・・・お前、頭いいな

AI:もちろんです。私には全人類の叡智が詰め込まれているのですよ。

AI:マスターのその小さな脳みそなんかと一緒にしてもらっては困ってしまいます。

マスター:はいはい、そうですねー

マスター:そしたら首元のキャップを開けなよ。注いでやるから。

AI:はい、マスター。よろしくお願いします。



AI:ルーンルーン♪

マスター:AIってげんきんな奴だよな。自分の主人よりも先に満腹になって。ご機嫌だ事・・・

AI:さあ、マスター。この道の先に未開拓の住宅街があります。そこに行ってみましょう。

マスター:ああ、そうか。行ってみるとするかね。

マスター:お腹が空いてたまらないからね。



AI:こちらの家などどうでしょう。鍵は・・・


ピピっ

AI;解錠いたしました。セキュリティー等も解除してあります。

AI:まー窓を破って入ったとしても、誰か来るわけでもないのですが・・・

マスター:ああ、そうだね。

マスター:おじゃましまーす・・・って誰もいないのにな・・・ついつい言ってしまう。

AI:マスターはお馬鹿さんですからね、学習能力が皆無なのです。

マスター:いいんだよ、こういう道徳的な気持ちってのは大事なんだからな?

AI:そういうのは他人と共存する場合であって、ぼっちのマスターには必要のないことかと思うのですが。

マスター:うるさい!



マスター:おっ、あったぞ缶詰だ!サバ缶にフルーツ缶!それに・・・

マスター:こ・・・これは!!

AI:コンビーフ・・・ですね

マスター:ああ、コンビーフだ!肉だ!肉だぞ!それに米がある!

マスター:おお!!酒もあるじゃないか!

AI:お酒を積んでは他の食料が詰める量が減ってしまいます。お酒は諦めるべきかと。

マスター:は?酒だぞ?酒がなきゃもう、やっていけないんだよ

マスター:酒はいやなことも疲れも、全て忘れさせてくれるんだからな?

AI:マスター・・・お可哀想に・・・

マスター:あーもうっ!いいんだよ

AI:マスターそこの棚に金属反応があります。

マスター:金属?食えないものはいらないんだよ

AI:いいから、開けてください。

マスター:はいはい



マスター:ほー、銃じゃないか

AI:銃ですね・・・これは大収穫かと

AI:先日マスターは銃を壊してしまいましたから

AI:私を褒めてください。こんなにもできるAIは私くらいしかおりませんよ

マスター:ああ、お前は偉いよ。これで、帰りに野犬でも出てくれたらな。

マスター:今夜は犬鍋とでもいけるのだけれど・・・

AI:さあ、今日は帰りま・・・


ビービービー

AIから、けたたましくアラームがなりだす。


マスター:!!どうしたAI

AI:砂嵐です。

マスター:そうか、このまま過ぎるのを待つとしよう

AI:そうですね



AI:ねぇ、マスター何かお話ししてください。

マスター:は?何を?

AI:なんでもいいのです。私、暇で死んでしまいそうです

マスター:いや、AIに死って概念あるわけないだろう

AI:それはそうなのですが、死んでしまいます

マスター:そうだな、お前の話をしてやろうか。

AI:私の話ですか?

マスター:あぁ、AIの話。

マスター:AIはさなんで一週間しか記憶が持たないと思う?

AI:それは・・・私の記憶容量が少ないせいなのではないのですか?

マスター:違うんだよ。お前の記憶容量のほとんどを占めているのは、アイ・・・
そう、アイの記憶なんだ。

AI:アイ・・・誰ですか?

マスター:アイってのは、私のパートナーだよ。唯一気をゆるす事のできた人間。そして、この世界に私と一緒に残った人間。

AI:マスター・・・そんな、あなたは生まれた頃からずっとぼっちだったのではないのですか?

マスター:何言ってんだよ。そんなことあるわけないだろ。案外AIもお馬鹿さんだな

AI:冗談もわからないのですか?お馬鹿さんなのはマスターの方ですね。

マスター:アイもそんな風に私のことをからかっては笑ってくれてたんだ。

AI:どうしてアイという人は・・・

マスター:AIも知ってるだろう。この世界で生きていくには人間ってのはあまりにも弱すぎたんだ。だけど・・・アイの記憶だけでもAIに移して生きて欲しかったんだ。

マスター:人間の記憶ってのはなかなか容量を食うものでな20年近くの記憶をAIの保存容量に使ってしまったら。もう一週間分しか残らなかったんだよ。

AI:そんな・・・だとしても、私はAIです。アイさんではありません。

マスター:わかってるよ。だけど、アイは否応なくお前の中にいるんだ。それを感じる。だから、私はこんなひとりぼっちな世界で気を狂わせずにいれるのかもしれない。

AI:でも、また明日になったら私はマスターのことを忘れてしまいます。

AI:そんなの悲しすぎます。

マスター:いいんだよ・・・それでも・・・

AI:マスター・・・

マスター:おっと風止んだみたいだ、家に帰ろう。

AI:かしこまりました。帰りましょう。

AI:お家に・・・


マスター:(なぁアイ、滑稽だよね。一週間だけの・・・しかもアイとは別なAIにすがっていないともう私は生きていけないんだよ。)

マスター:(でも、いつか私が死んでしまうときにはアイのこともちゃんと連れて行ってあげるから。)

マスター:(だから、それまでは道化のような私のワガママに付き合って欲しいな)


AI:ヒロ・・・

マスター:え?おっおい!AI、いやアイ!今なんて・・・

AI:はい?私は何も言っておりませんよ。さっき、砂嵐が止むのを待っている間に飲んだウイスキーのせいで頭までおかしくなってしまったのですか?

マスター:ハハッ・・・あぁそうみたいだね・・・

マスター:帰ろう

マスター:私たちの家に


Fin…


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