超常現象研究会 活動記録 コックリさん貳
not Aflac 作
貳.
わずか三分にも満たない映像を悟は幾度となく再生しては巻き戻してと繰り返していた。昨日体験したはずの映像には記憶とは全く違う記録が残されていたのである。
記憶と記録の相違点。それは、映像に映し出されている人間、それから起こった出来事。核となる質問をしたことさえ全てが全く別のもへと書き換えられたようだった。
映像に映っていたのは、悟、弘、それから沙織の三人だけである。コックリさんを始めたものの動かない十円玉。そして、やっぱり何も起こりはしないと笑いあう弘と沙織の姿が映っていた。
悟の記憶の中では瞳が倒れたと同時に、沙織は悲鳴を上げ、弘が瞳を揺さぶり起こしたはずだった。それなのに倒れたはずの瞳の姿はビデオカメラのどこにも納められていなかったのだ。
「お疲れー 」
そういいながら、弘と沙織が部室へと入ってきた。
「昨日の映像なんか見てどうしたの? 」
不思議そうに沙織は悟へ訪ねた。
「昨日のコックリさん、何も起こらなかったのか? 」
そう悟が聞くと何を言っているのかわからないかのように二人はお互いの顔を見る。
「いや、悟も一緒にやったじゃないか。今流してる映像通り何も起こらなかったし、お前頭でも打ったんじゃないか? 」
と冗談交じりに弘が聞き返す。
悟は他にコックリさんをしていた人間はいなかったのか、と質問を投げかけるもまたケラケラと笑いながら弘は当たり前のように三人だけだったと言い返す。もう一人の研究会のメンバーの存在を聞くと二人の顔は真面目なものへと変貌した。
「悟君、本当に何の話をしてるの。超常現象研究会っておかしな部活に入るような人、ほかにいるわけないじゃない。」
と心配そうに沙織は言い返した。それから、瞳の名前を出してもそんな人間は知らないという二人。どんなことがあろうと顔色一つ変えないはずの悟の顔は蒼白である。それを見た二人は、今日は帰ったほうがいいと悟を無理やり帰らせるのだった。
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