松島や! あぁ松島や。松島や…【仙台弾丸旅行記 -後編-】
前編では仙台旅行の1日目を書いたが、今回は二日目だ。
総滞在時間24時間にも満たない短い旅行であったが、前後編に分けるほど書きたいことが多くなってしまった。
こんなに充実した旅を送れたのも、帰りのフライトが12時15分発とほとんど時間がない僕のために早起きして観光に付き合ってくれたゼミの同期諸君のおかげである。
この場を借りて感謝の意を表したい。
二日目は朝の8時30分に一旦スタバに集合し、飲み物を買ってから松島に出発した。
どうやら同期のうち何人かは7時半ごろに来て仕事をしていたようだ。
昔からブラックゼミとの呼び声は高かったが、この社畜具合にもそれが表れている。
ちなみに、行き先が松島と決定するまでには紆余曲折を経ている。
二日目の午前の行先としては松島か秋保温泉が候補に挙がっていた。
僕は一日目に蔵王温泉に行っていたし、宮城の観光地といえば松島だと思っていたので、せっかく仙台に来たのなら松島に行くべきだと主張していた。
だが、仙台在住の子と、昔松島に行ったことのある子が
「松島は微妙やで。がっかり名所やから。」
なんて言うもんだから、議論が紛糾してしまった。
結局多数決で松島になったのだが、結果これは正解だったと思う。
◆
仙台市街から松島までは車で45分ほど。
松島海岸インターで降り少し走ると、急に目の前に海が現れた。
「うぉー!松島や!!」
運転席という特等席に座っていた僕はつい叫んでしまった。
それほどの松島の美しい島々を一望できる絶景スポットであった。
「これが松島のピークやから。」
仙台在住の子は頑なにアンチ松島を崩さない。
僕はそんなアンチを無理やり連れてきてしまったことを少し申し訳なく思いつつも、その言葉を信じてあまり期待しないことにして海へと続く坂を下った。
松島の紹介は不要だろうが、一応軽く書いておく。
松島は日本三景にも数えられる、言わずと知れた景勝地である。
大昔の海面上昇により取り残された山のてっぺんたちが島として点在する多島海と呼ばれる地形で、浸食涯や島に生えた松が神秘的で美しい景観を織りなしている。
松尾芭蕉があまりの美しさに語彙を失い「松島や ああ松島や 松島や」と詠んだ、というのは実は嘘で、別の人の句だったというのは有名な話である。
ちなみに芭蕉は「島々や千々にくだきて夏の海」という句を詠んでいるらしい。
◆
坂を下り、海沿いを少し走り見つけた駐車場に車を停める。
時間は9時30分。
最初に行ったのは駐車場の近くにあった松島さかな市場である。
海鮮丼を食べようかとも迷ったが、早朝でまだ食欲も湧かないので、ここでは焼き牡蠣を食べた。
今は産卵の時期のため身が痩せているらしい。
まあ、普通の牡蠣くらいの大きさはあったし、普通の牡蠣の味がした。
産卵の時期でこれなので、旬はさぞかし美味いのだろう。
◆
牡蠣を食べた後は福浦橋を渡り福浦島に向かった。
どうやら福浦橋は震災で破損した際に台湾からの義援金で修復され、以来「絆の架け橋」と呼ばれているらしい。
欄干も低いし海も穏やかなので、楽天優勝時には道頓堀みたく誰かここから飛び込んだりするのだろうか。
そして、この橋から見る景色が絶景であった。
天気も良く、朝なので人も全然おらず、めちゃくちゃ気持ちよかった。
青い空、青い海、まっすぐ伸びる赤い橋、ぎりぎり残っている紅葉。
「あぁ、これが松島か」
と、語彙を失ってしまった。
芭蕉も言葉を失ったなんて嘘が出回るのも納得である。
好条件が揃ったこの絶景には仙台在住の子も「松島見直したわ」と言っていた。
よかった。みんなが楽しめる結果となり安心した。
福浦島を一周する時間はなかったので、途中の見晴台まで行くことにした。
松島の景色もさることながら、まだ生き残った紅葉がきれいだった。
予定通り見晴台で引き返し、再び福浦橋を渡り本土に戻る。
この時10時20分。
飛行機に間に合わすためには遅くとも10時50分には出ないといけないので、残り時間は少ない。
ということで、すぐ食べれそうで、来る途中に車から見えてそそられていた「牡蠣カレーパン」の店に行った。
単純にカレー+牡蠣の味がした。
そんなの美味くないわけがないじゃない。
カレーパンを食べ、駐車場に戻るともう10時40分だ。
名残惜しいが、もう他に何かする時間もないので泣く泣く松島を後にする。
仙台在住の子曰く、「遊覧船は長すぎ。ずっと一緒で飽きる。」そうなのでそこに未練はないが、海鮮丼を食べたかった。特に、「はらこ飯」とやらが食べたかった。
僕が帰った後にみんなは食べに行ったらしい。いいなぁ。。
とりあえず今回はさようなら。松島や…。
◆
空港に着いたのは11時25分。
特に渋滞に巻き込まれることもなく、無事時間通りに到着した。
僕のために旅程を調整し、空港まで送迎もしてくれたゼミの仲間には感謝しかない。
改めて、この場を借りてお礼を申し上げたい。
ちなみに、帰りの時間の頃には松島もかなり人が増えてきていて、あの絶景坂なんか観光バスとタクシーで大渋滞だった。
僕のフライトが早かったおかげで渋滞にも巻き込まれず綺麗な景色が見れたわけなので、僕には感謝してほしい。
空港では出発時間まであと50分あるので余裕のよっちゃん…かと思いきや、なぜか保安検査場に大行列ができていた。
最後尾が国際線のカウンターにまで差し掛かるほどで、出発20分前ぎりっぎりの入場となった。
まさに1分の無駄もない、濃密な仙台旅行だった。
あえて滞在時間を短くするというのは、意外と良いかもしれない。
高密度で満足度が高いし、短時間なのでそんなに疲れない。
だがやはり牛タンと海鮮丼をしっかり食べたかったので、前後にあと2時間ずつくらいは滞在時間を増やすべきだった。
最後に、これだけ。
「松島や ああ松島や 松島や」の句はもしかすると今回の僕のように、
車から見えたときに「松島や!」と感動し、現地についてからあまりの美しさに「あぁ松島や。」とうっとりし、最後に「松島や…」と別れを惜しむ、そんな句だったのかもしれない。
また行きたいな。仙台。
いや、宮城か。