怖くてヤバくて笑うしかない 映画『ケープ・フィアー』
2024年6月3日
怖すぎてヤバすぎて、もはや笑うしかないヤツがいる。
『ノーカントリー』の空気銃持ってどこまでも追いかけてくるオカッパ頭とか、『蜘蛛女』の後ろ手錠もなんのそのの女マフィアとか。
嫌いじゃない。むしろ大好物です。こういうの。
この日見た映画『ケープ・フィアー』の逆恨みマッチョがまさにそれ。もう笑うしかない。
暴行の罪で14年服役していた男が出所後、弁護士一家の前に現れる。男は弁護士を執拗に追い回し嫌がらせをする。家族(妻と娘)にも接近する。弁護士は探偵を雇い防戦するが、失敗続きのあげくー。という、スリラー映画です(ザックリ説明スイマセン)。
恨むんなら弁護士じゃなくて裁判官だろ?強姦罪のところを暴行罪にしてやったのによぉ、とこの弁護士も思うわけだけど、男は服役中にいろいろ勉強して気づいてしまった。弁護士は全力で弁護すべきなのに手を抜いていたと。身体中にタトゥ(「真実」と「正義」の天秤ほか)を入れ、バッキバキに鍛え上げた男は、当時の粗暴な犯罪者ではなく賢いサイコになっている。恨みの理由は本人の中ではスジが通っているのかもしれないけれど、そもそもー。
なんてことは言ってられないっスよ、とにかく怖い。強烈にヤバいヤツに仕上がってます。
一方の狙われる弁護士一家もなかなかイヤな感じ。弁護士はゲス不倫中で、デザイナーの妻も高校生の娘も曲者。犬と家政婦さんが……。
嫌がらせでは済まなくなる終盤は見もの。
郊外に逃げる一家を追ってくるマッチョの行動がマジかよ……、ともはや笑うしかない。
スコセッシ監督とデ・ニーロのタッグ。マッチョ男の思い込みの激しさに『タクシー・ドライバー』のトラヴィスを思い出さずにはいられない。
が、それよりも気になるのが全体を包む古典的な雰囲気。1991年の映画にしては妙に古めかしい。いかにもスリラーですっ!というカットや音使い(音楽はバーナード・ハーマン)。
で、視聴後にこの映画がリメイクと知ってなるほど、と。ヒッチコック風でもあり、ヒッチコック好きのデ・パルマ風でもある。とても好き。
こうなるとオリジナル版も見たくなる。
『恐怖の岬』(1962年)
本作にも出演しているグレゴリー・ペックとロバート・ミッチャムがそれぞれ弁護士役と逆恨み男を演じている。 要チェック。
もう一言。弁護士の娘を演じたジュリエット・ルイス。懐かしい。
本作で注目され、その後ブラピやジョニデと立て続けに共演し若手ナンバーワンと言われた(時代もあった)。が、その後なんでか失速。
クセのある役どころのハマりは良かったけれど、それだけだったのかな、と思えなくもない。
・頑張り過ぎたジュリエット・ルイスのラジー賞ノミニー作
・想像どおりに中年期を迎えたジュリエット・ルイスを確認
・こちらもイメージ通りの奔放三女、が、メリルさんの怪演にかすむ
あ、いろいろ書きすぎて肝心のデ・ニーロのヤバさを書ききれなかったけれど、これは一見にしかず、です。ぜひ。