呪いを解く 映画『ポップスが最高に輝いた夜』
2024年2月19日
Netflixで配信されている映画『ポップスが最高に輝いた夜(The Greatest Night in Pop)』を見る。
1985年の大ヒット曲『ウィー・アー・ザ・ワールド』の舞台裏を描いたドキュメンタリー。アフリカを飢餓から救おうというキャンペーンにアメリカの有名ミュージシャンたちが集結した。その牽引役のひとりライオネル・リッチーほか、参加ミュージシャンであったブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス、シーラ・Eなどが当時を振り返る。
誇張ではなく何百回も聴いたこの曲。ヒットから数年後、まだYouTubeもない頃にDVDも買った。これ(『ポップスがー』)とは別のドキュメンタリーも見たし、ちょっと前には『「ウィー・アー・ザ・ワールド」の呪い』という本まで読んでる。
(こちらの日記で触れてます)
80年代洋楽にドップリ浸かった世代としては嫌でも記憶に残る1曲だ。
なぜいま?な気もするけれど、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ問題など紛争が激化する世の中に向けて「かつてこういうことがあったんだよ、できたんだよ、忘れちゃいけないよ」という前向きなメッセージなのかなと。私はそう受け止めた。
ジャラジャラさせたシンディ・ローパーや粘っこいブルース・スプリングスティーン、戸惑うボブ・ディランなど有名な見どころはもちろん、現在のインタビューパートが興味深いものだった。
ヒューイ・ルイスは今でもいいヤツで、スティーブ・ペリーやダリル・ホール、ケニー・ロギンスが見ている前で歌うのはとても緊張したと振り返る。当時プリンスの彼女だったシーラ・E(カッコイイよ!)は、プリンスを呼ぶために自分は呼ばれたのだと気づいて複雑だった、と。そしてこの偉業の当日はAMAの授賞式で、その司会と受賞者としてのステージとフル稼働で「この日の記憶がない」と語るライオネル・リッチー。
エンドクレジットに今は亡き参加者たちの名前が流れる。マイケル・ジャクソン、レイ・チャールズ、ティナ・ターナー……。
この映画ではサラっとしか触れられていなかったけれど、この曲の一番の見どころは2番のBメロのスティーブ・ペリーからダリル・ホールのところ!ここをこの2人に振り当ててボーカルアレンジした人(クインシー・ジョーンズ?本人たち?)に感謝。
前述の本『「ウィー・アー・ザ・ワールド」の呪い』には少々批判的なことも書かれていて、この曲を幼稚な曲とゲスったミュージシャンがいたとか、ソロパートがあるの、ないのと揉めて最後までいなかった人もいたということを知って以来、なんとなくそんなモンかな、と思っていたけれど、このドキュメンタリーを見て、やっぱり素晴らしい作品だと思った。この曲だからこそ成しえたプロジェクトだったと思い直した。ホント良かった。