LEX 『なんでも言っちゃってfeat.JP THE WAVY』レビュー
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今まで、日本のHIPHOPで歌われるトピックとしては、成功したい成功した、その2つが主であったが、
最近は、シーン全体として、ラップで成功したその先をよく耳にする。
もっとラップスキルを磨く者
新しい可能性を模索する者
側から見た成功と自信とのギャップを語る者
HIPHOPやラップの枠から飛び出す者
これはHIPHOPヘッズが増えたことにより、
ラップで飯を食うという事がそれ程大きな夢ではなくなり、多くのラッパーが、それ以上のレベルに到達したことを表しているように思う。
今作に関しては、
LEXが成功という物を重く捉えずに、なんでも(好きに)言っちゃって〜と語っているように感じた。
これは、彼が現状に満足してはおらず、かといって焦りや物足りなさも見せず、ただただ成功を楽しんでいる姿が伺える。
それは、決して自身に対して無責任である訳ではなく、自身を全て表現するラッパーだからこそ、なんでも好きに言うし、言われることも気にしないという様に思う。
また、HIPHOPに限らず、日本では
年功序列が根強い。
それは、逆もまた然りで、若いからこその評価を受ける事も多々ある。
そんな中LEXは若いだけではない。
きっと、同世代から見れば唯一無二のスターであり、私のような少し上の世代から見れば、とんでもない才能を持った希望に思う。さらに上の世代からすれば、それこそSTRANGERのように感じるであろう。
幸い、今回フィーチャーしたJP THE WAVYや
BAD HOP,Leon,SANTA等
LEXの周りには模範となり、彼を認め彼を上げてくれるラッパーが多いと感じる。
JP THE WAVYに関しては、
2020年リリースの1stアルバム『LIFE IS WAVY』から、今年リリースされたEP『WAVY TAPE2』の間に明確な違いを生み出したように思う。
その違いとは、私の感覚では声である。
ラッパーは声が命と言っても過言ではない。
いくらリズムやピッチをビートに合わせても、どれだけ長い文字数韻を踏んだとしても、結局声がダメならばそれはラップとして聞き心地が良くはない。
逆に、多少荒削りであったり、マンネリする程同じフロウをしていたとしても、声色ひとつでラップのデリバリーは格段に増える。
それは、当然ビートに左右されるものだが、声のテンションや、ライムに対しての抜きどころをどうチョイスするかは、ラッパー自身のラップスキルであると思う。
JP THE WAVYはフィーチャーされた際、どのラッパー相手にも、一番気持ちよく聞こえるトーン、テンションをチョイスし、自然と体が動くような曲を作り上げてしまう。
これはある種、ラップスターの条件であり、彼はその域で自由に動き回っていて、ただただ彼の曲を聞くのが楽しくて仕方がない。
未だに彼らについて、
名前はよく聞く、英語のようなラップをする若いラッパー、その程度の情報しか持っていない人は、ぜひ彼らの作品を聴き、その才能の豊かさ、幅の広さ、感情を感じ取っていただきたい。
彼らは既にオリジナルのスタイルを完成させながら常に進化し続けている。
この先も楽しみであると同時に、ひたすらに"今“を切り取る彼らの活躍に、これからも注目していきたい。
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