Lies of Pってどんなゲーム? クリアしてみました!
皆さんは『ピノキオ』というアニメーション作品をご存じだろうか。
私はあまり存じ上げないのだが、鼻が伸びる人形が出てくるらしいことと、クジラが出てくることくらいは知っている。
そしていつも、頭がキノコで甲高い声を持つあいつと区別がつかなくなる。
また、『ピノッキオの冒険』という童話もご存じだろうか。
私は一切存じ上げない。どうやら『ピノキオ』の原作らしい。
そして最後に、『Lies of P』というゲームはご存じだろうか。
私は存じている。
なぜかというと、先日クリアしたからだ。
というわけで、韓国開発の新作ソウルライクゲーム、『Lies of P』の感想をここに認める。
ちなみにプレイしたハードはXbox Series S、Gamepassでのサブスクリプションであった。
ゲーム概観
あらすじ
クラットとかいう街に、エルゴとかいう超エネルギーがあって、超高性能な人形が作れるほどの文明が花開きました。
でも体が石化する妙な病が流行るわ、突然人形が反乱するわで街はめちゃくちゃになってしまいました。
そこで街随一の人形技師ゼペットじいさんはとある人形――主人公を作り、鎮圧の任を負わせました。
荒れ狂う人形、そして中盤から出没するゾンビもどきを蹴散らしつつ、主人公はこの騒乱の黒幕(多分錬金術師)に至れるのでしょうか。
そんなかんじ。
知らんけど。
ゲームシステム(フロムで見た)
かなりソウルシリーズ、というか、昨今のフロムソフトウェア名作アクションゲームの影響を受けている。少なくとも、ゲームの根幹システムはまるまるソウルだ。
攻撃は主に弱と強の2種類。戦闘中に溜まるゲージを使って繰り出す特殊攻撃などもある。
回避とダッシュのボタンは同じで、ロックオンもある。
死ねばその場にエルゴ(いわゆるソウル、エコー、ルーン)を落とすし、拾えば回収できる。
そして世界観(というより文明レベル?)はBloodborneに近い。どこかレトロチックで、それでいて超科学的な絡繰り人形がはびこる街で、主人公は孤独な戦いを続けていく。
ストーリーの進行に伴って時刻が変わっていくのもBloodborneを思わせるし、ガード時に限られるとはいえ、"リゲイン"というシステムが名実ともに実装されていることから、類推は免れない。
さらに、攻撃に対してジャストなタイミングでガードをすると、ダメージをゼロにできるうえ、相手の体勢を崩す助けとなる。このシステムからはSEKIROを想起させられる。
それに加えて、主人公の左腕には特殊な腕部が用意されており、攻撃や防御、はたまた敵を引っ張るワイヤーなど、様々な機能を自由に付け替えることができる。
義手忍具じゃん。
かくしてソウル、ボーン、セキロの要素をふんだんに盛り込み混ぜ込んだこの作品は、ある意味で、「フロム以外が作ったエルデンリング」、とも、呼べるのかも、しれない。
ゲームシステム(はじめて見た)
ここまでつらつらとソウル系との類似点を述べてきたが、そろそろこのゲーム独自の(というか、私がこれまでに見たことがない)システムについて触れていく。
一番の目玉はなんといっても、武器が「ブレード」と「柄」の2部品に分離できるセパレートシステムだろう。
基礎攻撃力と刃渡りはブレードに、モーションと攻撃力補正値と柄の長さは柄に依存し、それらを自由に組み合わせられる。
つまり、刃が長くて攻撃力が高い重量級のブレードと、振りが速い短剣の柄を調合すれば、振りが速くてリーチが長くて攻撃力が高い武器が完成するのだ。
強すぎる。
こういった状況から、振りの遅い武器の柄が産廃になっている感は否めない。
もちろん、メーカー側も全く対策していないわけではなく、武器の重量バランスであったり、軽量武器の柄の長さを軒並みポークビッツ級にしたりといった苦労の跡は見えるのだが、それを加味しても重量刃軽量柄が強すぎる。
ただ、「この武器、あのモーションで振れたらなぁ」という妄想は全アクションゲームプレイヤーがすると思うので、その夢を叶えてくれた点はかなり評価できる。
特にツルハシのブレードとダガーの柄を組み合わせた武器なんかは、見た目もモーションもかなり面白い。実用性はない。
次点で挙げられるのは「嘘をつく」システムだ。
主人公は人形であり、人形は嘘をつくことができない(意思がないから)、ということがこの世界の共通認識であった。
しかし主人公は当然のように特別仕様である。嘘も建前もペラペラである。
これはストーリーにも深くかかわってくる要素で、もしかするとメーカー側はこれを一番の目玉要素と考えていたのかもしれないが、いってしまえばただの選択肢によるストーリー分岐である。
他のゲームにもよくある、というか、それがメインなアドベンチャーゲームと比べてしまうと、あまりにも単純だ(比べること自体がおかしいけれども)。
だからこのゲームのメイン要素ではあるのだが、これといって特異な存在感もない、といった印象だ。
その他細かい要素
2連続死でエルゴロストという概念がない(回収までにダメージを受けると落としたエルゴの額が減る)
レベルアップできる量のエルゴが集まると数字の色が変わる(わかりやすい)
スキルツリーシステムがある(レベルアップと併用なのが面白い)
ジャストガードを強要してくる攻撃がある(ガードも回避も不可)
スタッガーという概念がある(SEKIROやエルデンのように、敵を攻撃さえし続けていれば勝手に体勢が崩れ致命、ではなく、攻撃し続けてスタッガー状態にしたうえで、さらに強い攻撃を叩き込まねば致命ができない)
ローカライズがガバガバ(誤字脱字衍字は当たり前、常体と敬体の入り交じり、一人称のブレも。おそらく機械翻訳に突っ込んでノーチェックでリリースしたのだろう。質としては許しがたいが、今の時代を象徴しているようで趣があるともいえる)
拠点に猫がいる
クリア後の感想
一
応
ネ
タ
バ
レ
注
意
プレイ時間は36時間、エンディングはRise of Pだった。
そこそこ面白かった。少なくとも、1周クリアできる程度には。
そして長かった。これ、半分の長さでいいんじゃないか? と思う程度には。
ゲーム通しての操作感は悪くない。キャラクターを動かしている時の感触はダクソ2と同等か、それよりは軽快だ。
しかし、攻撃のリズムに独特のぬめりというのか、水中で動いているようというか、直感的に動かない部分があるのだ。
もちろんこれはゲームに慣れていないからであり、モーションが速すぎると「重み」が欠けてしまうという意見もあるので、一概に悪いものではない。
ただ、ゲームスピードに対していささか遅いような気がする。
重量級の武器を担いでいるとき、確定で反撃を入れられる敵の攻撃はかなり限られ、スタッガーに溜め攻撃を叩き込もうと思ったら、相打ちを覚悟しなければならない場面がいくつかあった。
それゆえにか、スタッガー時間を延ばすスキルであったり、溜め攻撃中の被ダメージを軽減するスキルがあるが、そんなことをするよりモーションの速い武器を使った方が装備重量軽いし別のスキルが取れるしで、やはり重量武器が割を食っている。
そんな状況に加え、攻撃時の踏み込みが極めて少ないという点も重量武器不遇に拍車をかけている。
ここで一度、ダークソウルとダークソウル2の「直剣のモーション」を見てほしい。
「ダクソ2側がハイデモーションなのは不公平じゃないか! 偏向報道だ!」という声は一旦無視することとして、キャラクターが前に踏み込む量の差に注目すると、明確な違いがあることが分かる。
言わずもがなダクソは踏み込みが大きく、ダクソ2は小さい。そしてダクソ2は、他のシリーズに比べて「アクションが快適ではない」という評価がされることが多い。
攻撃時にどれだけ前に進むかは、攻撃のリーチ、追従性に直結するため、ある程度の踏み込みがあった方がプレイヤーには易しい作りといえる。
この観点で見ると『Lies of P』はどちらかというとダクソ2寄り、武器によってはダクソ2より踏み込みがないものもある(未検証)。
敵のラッシュを回避 or ガードして、やっとできた隙に攻撃を差し込み、スカッ。
「お前の間合い管理が甘いだけじゃねえの」と言われたらそれまでだ。だが間一髪で届かない攻撃は、存外にプレイヤーの忍耐を削る。
そして雑魚敵の配置がいやらしい。しかも硬いし、強いし、多い。
あなたはエリアを探索するとき、敵を全滅させる派だろうか。それとも、全スルーしてレアアイテムだけを拾う派だろうか。
その回答が何であれ、『Lies of P』の後半エリアで探索をしようとすれば、ほとんどのプレイヤーがスルーを選択するだろう。
本ゲームの進行度は、大まかに前半と後半の2つに分けることができる。
前半では敵の種類が限られている。厳密にいえば、攻撃の種類が限られている。姿や手に持っている武器である程度予測可能な攻撃であり、対処もしやすい。しかし数で押し負けると手も足も出ないのは、いかにもソウルライクなバランスである。
ところが、後半では、もう、わけわからなくなる。
敵の数が増え、敵の種類が増え、敵のモーションが増え、被ダメージもディレイもデバフもてんこ盛りである。
その辺のモブに必要な対処の量が中ボスレベルを少し下回る程度になり、プレイ中のテンションが最高潮を迎えるのが前半の最後ということも合わさって、段々ダルくなってくる。
「死んでもペナルティがほぼない」という本作の仕様は、このスルー&ゾンビ戦法(死ぬこと前提で敵を全スルーし、アイテムを拾ったりショートカットを開通すること)を見越していたのではないかと思うほどだ。
実際私はプレイ後半の3,4エリアはスルーしかしていない。たまに倒さねば進めない強モブがでるので、それを仕方なく倒すくらいだった。あるいは、あくまでも気分転換として敵を倒すかだ。それもすぐに飽きが来る。
それでも、リスポーン地点からボス戦にリトライしやすいステージ構成は確保されていた(1体を除き)ので、それは救いといえよう。
なんやかんやで悪口が続いてしまったが、ボス戦に関してはなかなかいいバランスだった。
攻撃の対処法が複数あり、自分のスタイルによってどうするかが変わるのは面白い。
私の場合は、いま考えると半ば縛りプレイのような酷いステータス振りをしていたので、ガード固めてリジェネして左手に盾を構えて、という良く言えば持久戦型、悪く言えば泥仕合上等の戦法が主だったが、特殊ゲージ攻撃メインのスピードアタッカータイプや、相打ち上等でスーパーアーマーを押し付ける重戦士タイプにもなれる(と思う)ため、ボス戦がこのゲームの本編と呼べるくらいには要素が濃い。
ちなみにこれが私のステータスである。
なお、私はいま戦っているボスが最後のボスだと悟った時、持っていたエルゴをボスドロップのものも含めて全部つぎ込み15レベルもブーストした(もちろん積載力)ので、実質的なクリアレベルは71である。なぜここまでレベルにこだわるかって? 結局積載力ブーストに意味がなかったからだよ!
私は主人公の装備重量を一番軽い状態にすることを何より優先していたため、このようなステータスになってしまった。
クリア済みの経験者として初心者プレイヤーに助言をするならば、重量は別に最軽量でなくてもいいし、それよりも体力と攻撃力を上げたほうがいい。
あ、今「後半の敵を全スルーすることになったのはてめえのステ振りのせいだろ」と思っただろうか。たしかにそれもあるとは思うが、私が見たプレイ動画のプレイヤーは私よりはまともなステ振りだったが、私と似たような行動をしていたのでステータスによる差はそれほどないと考える。
話が逸れてしまったので戻すと、本作のボス戦はそれだけでいいと思えるようなクオリティであった。というか、道中がひたすらダルい。ボスラッシュモードが欲しい。
個人的に好きなボスは「無欠のラクサシア」だ。お前女だったのかよ と ゼルダ的光弾パリイが良かった。裏ボスより死んだ回数多かったし、途中でコントローラー投げたけど。
そして最後に言いたいことは1つ。
ジャスガむずすぎ。
SEKIROの弾きをソウル系のゲームに導入したらどうなるか。SEKIROは完全なアクションゲームだったのに対し、こちらは武器ごとの攻撃力・カット率やスタミナという概念があるアクションRPGである。このシステムの差を埋めてフェアにするためにジャストガード判定がシビアになっているのだろうが、いかんせんシビアすぎ。
序盤を過ぎたころに解禁される「アイギス」という盾の義手があり、これを使った技「盾を構えた状態で通常ガードボタンを連打するとずっとジャスガ判定になる」があって、やっと安定したジャスガが出せる。そういうレベルである。
私はこの技をクリア後に知った。
そして前述のとおり、このゲームにはジャスガ強要のフューリーアタックなるものがあり、相手がそれを打ってくるたびにこちらはヒヤヒヤもんのガードを強いられるのだ。そんで失敗する。
SEKIROだとある程度のチャキロが許されていたが、本作は対策されているようなので、初心者救済も望めない。初心者が取れるのは、攻撃範囲外に走って逃げるという選択だけだ。
ストーリー中盤~後半のあたりで入手できる「フューリーアタックが回避可能になる指輪」というアイテムもあるにはあるが、かなり重いので、私のように積載量極振りでもしていないと厳しいところがある。
特にグリーンモンスターの突進なんかは距離感が分からないのもあってめちゃくちゃ失敗した。ラクサシアの光速突進に至っては回避しかしていない。
本当は他にも、おばあちゃんに薬渡したら治るんかい、絶対悪化して死ぬパターンだったじゃんあれ、とか、最後のソフィア人形の伏線どこにあったん、とか、続編作る気満々すぎワロタ、とか、細かい感想はあるが、あまりにもとりとめがないのでこのくらいにしておくことにする。
というわけで。
総評
「ソウルライク」というよりも、むしろ「フロムライク」と呼ぶべきかもしれない本作『Lies of P』は、しっかりシステムの基礎が固められた安心できるゲームだ。だが細かいレベルデザインや快適性という点では、いまひとつ不満が残る。
ただそれでも、「ソウルライク」という看板に驕って、ソウルシリーズへのリスペクトや、基本的なアクションが疎かになっているゲームが少なくない中、本作は信頼がおける出来となっている。
もし本作に興味を持っている人がいるならば、後ろめたさなく背中を押せる、そんなゲームだった。
余談
私は少し前から、ストレスを感じると左腕が痙攣するという症状に悩まされているのだが、作中の主人公もずっと左腕が痙攣しているので、きっと彼にもなにかしらの悩みがあるのだと思う。