最近読んだ本の感想「犯罪へ至る心理」
エティエンヌ・ド・グレーフ(1898年10月28日~1961年7月21日)は、日本では無名ですが、精神科医、犯罪学者、作家で活躍し、国際的にはその功績が高く評価されているそうです。
本書の主な構成は
・精神科医としてのド・グレーフ
・犯罪学者としてのド・グレーフ
・作家としてのド・グレーフ
となっていますが、犯罪学者としての部分についての感想を書いてみることにします。
1926年にロヴァンジュール精神病院への異動がきまったとき、もう一つの仕事を任されました。それがルーヴァン刑務所です。ここでグレーフは医療人類学者、医者として働くことになります。
ここで直接、犯罪者に接することで、研究が進みました。
エティエンヌ・ド・グレーフの研究によれば、人は犯罪に至るまでに3つの段階を経ます。
(1)はじめはぼんやりとした自覚
※着想から行動にいたる時間が3時間以内という案件は1/3以下
※大多数の人は犯罪を思い浮かべるたびに、自らかき消している
(2)意思が結晶化
※苦しんでいることが傍目にわかる
※それまでには絶対しなかった軽蔑的呼び方をするようになる
※自殺願望がでてくることがある
(3)最後はあるきっかけで行動に移る
※多くのケースで被害者の毅然とした言葉が引き金になる
※自殺願望が他殺願望にかわるには15日間しかない
せめて(2)の段階でまわりが気が付いて、止めたいですね。でも実際、そうした行動に気が付いたとしてどこまで介入できるでしょうか。多くの人はきっと自分のことで忙しく、また、その人に、おせっかいと思われたくないので、ついそのままでしょうか。
特にストーカー関連の事件は悲惨です。被害者が事前に警察に相談している事例をよくみかけますが、まだ起きていない案件に、おそらく毎日忙しい警察官がどれだけ対応できるか、いまの体制ではむずかしいのかもしれません。
ストーカー相談窓口は開設されていますが、相談にあたって証拠をもとめられると、そこにも壁があるような。。。
では日本におけるストーカー関連の状況はどうなっているのでしょうか。
警察庁のホームページで公開されいる情報をもとにグラフ化してみました。
禁止命令のうち、緊急禁止が必要だった件数が徐々に増えていますね。
ストーカー被害は女性ばかりではないのですね。
ニュースで女性やその家族が殺されたような事件を見聞きするとき、被害者が事前に警察に相談していたことが報じられ、その度になんとかならなかったのか、と思います。
グレーフは、こういいます。
犯罪者も人間
人間の複雑さと弱さを理解して、個別に人に寄り添うことから治療や法実務を考えるべきと。
第二段階になっても、引き返すことができた事例があるわけで、加害者を事務的に扱ったりせずに、親身に長い期間にわたってサポートすれば、将来の事件は消えていく可能性があるわけです。もちろん、被害をうけている人に対する手厚いサポートも重要です。
それにしても、愛していた、あるいはスキだった相手に危害をくわえるようになってしまうのは悲しいことです。
ストーカー被害を未然に防ぐこと を目的とした、警察庁の情報発信ポータルサイト(下記)
https://www.npa.go.jp/cafe-mizen/
被害者のクルマにひそかにGPS機器をつけて位置情報を取得するということも処罰対象になったようです(令和3年施行)。