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前歯矯正に踏み込んだ決意

「誰がデッパじゃ!」そう笑ってみせた太陽の光を全て吸収するように僕の前歯が光る。

中学生にして、前歯を武器にした僕はすぐにクールキャラを諦め、笑いを求められる位置いわゆる3枚目としての活動が始まる。


僕はデッパに悩んでいないわけではなかったし、なんなら凄くコンプレックスに感じていた。毎日悩む時期だってあった。

そんな日々を救ったのは、明石家さんまさんというデッパ界隈の船長だ。

さんまさんは、話の途中に自分のデッパを上手く噛み合わせて笑いを取る。''コンプレックスを武器に変える''そんな瞬間を観た。

真似しない理由はない。

次の日から、デッパチャンスがあれば積極的に狙って行こうと心も前向きになった。中高でのクラスのポジションを一切変わることなく、6年間を過ごした。「モテる人生」を生贄に多少の笑いを手に入れるという取引を後悔した。(もちろんモテなかったのは、デッパのせいだけではない)

ある日革命のポスターに出逢う。
''前歯だけ矯正可能!短期間で安いプチ矯正!''

僕には迷いがあった。印象・顔立ちが良くなると言うメリットに対して、費用、プライド、そして何よりデッパという共通で仲良くなった船乗り達に顔向けができないとデメリットが存在する。

その3ヶ月後僕は仲間を裏切る。


「もうちょっとお口大きく開けれますか?」前歯矯正が始まった。水を吸うための吸引機のような機械が時折僕の舌を吸いこむ。僕は吸い込まれないように、舌を逆側にして機械を押す。すると機械も押し返してくるため、さらに舌で押した。

一度うがいをする時に目を開けると、絶望が待っていた。

今まで僕の舌が押していたのは、女性歯科医の親指であることに気づく。

不慮の事故とは言え、もし私が既におじさんだったら訴えられていたかもしれない。恥ずかしすぎる。矯正なんてするんじゃなかったと人生で1番綺麗な歯ぎしりをした。

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