「無人島」
小学6年生の頃、「無人島に一つに持って行くなら何?」とみんなに聞いて回る男の子がいた。
彼は、その答えで回答者の性格が分かると言った。今思えば心理テストの本でも読んだのだろう。
1人目は携帯電話と答えて、仲間想いで人を大切にするタイプだと診断されていた。2人目はナイフと答えて、野心家で情熱的だと診断された。
次に私の番が来た。
私は当時何を血迷ったか、ビート板と答えた。出題した彼は、冷めた目をしてそれは分からないと言いながら、その場を去った。
今思えば、心理テストの答えに載ってそうなモノを言うべきだったと反省している。
私たちは中学生になって同じ部活に所属する仲間になった。ある日の部活終わりにプールに入って遊ぶ時間が設けられた。
すると彼は泳げない私にビート板を渡して、
「ほら、使っていけよ」と言った。
私はビート板を受け取って、誰もいない方向へ泳いだ。