Kaiserreich進捗状況 北洋軍閥コンテンツの改修、実績機能
北洋軍閥のコンテンツ改修
清
清はKRの顔ともいえる有名な国で、5年前のリワークから現在まで多くのプレイヤーが興味を持ってくれている。愛新覚羅溥儀などの旧満州族帝室、曹錕と呉佩孚ら直隷派、そして張作霖政権(安国軍政権)以前の北洋政府のメンバーが集まっている。実にユニークな設定で、現在の中国の根幹を成している。
しかし清の設定をきちんと拡張・発展させたことは一度もなく、ほとんどhoi2時代のデザイン思想を引きずったままだ。開発当時は中国語のソースも限られており、そのため帝室にばかりフォーカスが当たってしまった。
2年前に満洲復辟ルートを拡張し、プレイヤーからも好評を得た。ただやはり帝室がフィーチャーされ、北洋政府のメンバーについてはなおざりにされていた。そこで前回の軍事コンテンツの改修に引き続き、直隷派の設定を全面的に変更した。
まずは全てのNFのタイトルと説明文、効果を見直し、現在のKR基準に改修・近代化した。NFツリーの構造自体はそのままで追加のNFもないが、それ以外はほとんど全ての要素に手を加えた。
直隷派系のルートでは、直隷派の首魁である曹錕が愛国的な反租界派を、呉佩孚が現実主義的な新租界派を率いて政争を繰り広げる。
個人的に思い入れのある民国ルートでも、辛亥革命の理想を実現させる内容に変えた。
もちろん軍事・産業ツリー、それに陸軍ツリーも改修した!
曹錕についても触れておこう。これまでのKRにおいて曹錕は廃人同然の男、酒を手放せない「酒囊飯袋」として描写されていた。しかし元の開発者たちと相談し、また独自に調査した結果、こうした描写はやや偏っているとの結論に達した。今の描写は誇張されており、直隷派の重要人物をないがしろにしている。そこで曹錕の人物像をより正確に反映させ、鷹揚な人物、直隷派の黒幕として描くことにした。
またその過程で、これまでの呉佩孚中心の描写を抜けて、直隷派はより多くの登場人物にスポットライトが当たるようになった。
曹錕からはマイナス補正が削除され、直隷派ルートではもう一人の主人公として活躍し、多くの部下を束ねる存在になった。
また北洋政界を深掘りするために、湖南派と似たような派閥のフレーバー要素を取り入れ、現在の派閥をより細かく描写した。直隷派内部は呉佩孚の洛陽系、曹錕の保定・天津系(保津系)、その他さまざまな小グループが暗躍している。
これに関連して、初期政党も変更した。その後の展開によっては、顧問や政党も様変わりする。さらに独自の理論家枠を用意し、将軍・提督も新旧の顔ぶれが揃っている。
設定マニアのために、イベントや人物歴、NFの説明文、国民精神の説明文など、テキストもかなり増やした。新しいイベントでは魑魅魍魎の跋扈する北洋政界の有力者たち、政党、そのため北洋政府のさまざまな側面にスポットライトを当てていく。
四川軍閥(直隷派ルート)
次も直隷派ともゆかりの深い人気軍閥、四川軍閥を紹介する。四川は弱小勢力から中華統一を目指せる面白い軍閥国家で、直隷派や連省派の亡命ルートはその最たる例だ。本拠地での更新に合わせて、直隷亡命ルートの内容にも手を加えた。
詳しい人はずっと前に気づいていたと思うが、蔣百里が直隷派残党を束ねているのは誤りだった。彼が直隷派に属していた時期は一度もなかったし、まして呉佩孚の側近として仕えたり、直隷派のナンバーツーとして軍閥を束ねるとは到底ありえない。
チームでの見直しの結果、蔣百里を無理やりトップに据えたままコンテンツを改修せず、別の人物を軍国派ルートの指導者にした。直隷派の幹部にして呉佩孚がもっとも恐れた男、王承斌だ。
清でのプレイに詳しい人なら、開始からひと月で死ぬイベントが発生したはずでは?と疑問に思うだろう。
そうだ、彼の運命は変わる。これまで史実の1936年に早逝した事実に囚われて、彼の死因についてきちんと調べていなかった。しかし実際には、王は亡命先の天津で劣悪な環境にいたために病死していたのだ。
史実の王は曹錕の腹心で、呉佩孚のライバルだった。そのため直隷派軍国ルートの「バックアップ」として最適だ。王はみずからの派閥である天津系、さらに曹錕の保定系残党を率いる。これまでの北洋政府と同じような軍事政権のもと、北京奪還に全力を投じる。
直隷派残党のもう一人の主役、顔恵慶は引き続き登場し、王に対抗する勢力として活躍する。彼のルートでは北洋政府の体制を改革し、文官や洛陽派と協力する。
さらに呉佩孚と曹錕が死んだことで権力の空白が生じ、第三勢力の高凌霨が台頭する。彼は天津系の文官筆頭幹部で、王・顔のどちらかのルートでも首相に就任する。さらに顔ルートで後継者になることもできる。権威主義の傀儡政権になるか、中華連合省として統一して選挙する場合、高は民主憲政党から立候補する。
そして北京を取り返した際の専用ツリーが実装され、北洋政府の運命を決められるようになった。さらに中国青年党も故郷の土地である四川省に戻ってきた。
八省連合
華北の直隷派に手を加えたため、華南の直隷派である八省連合も更新する。
八省連合のルートは1つしかないが、登場人物については曖昧な部分があった。以前の更新で王克敏を清に移動させたが、それに加えて新しい顧問や将軍・提督、理論家を用意した。さらに軍事ツリーと外交ツリーを一新した。
八省連合の代表格とも言える人物、「笑虎」こと孫伝芳についても触れておこう。さまざまな側面を持つ「善良にして誠実な軍閥の長」、孫伝芳は、これまでは自分の富と権力のために祖国をドイツに売り渡す人物としか描写されなかった。
これも彼の人格の一側面ではあったが、実際の「笑虎」はもっと複雑な人物だ。容赦のない暴力を振るう一方で、気に入った者には慈悲を見せることもあった。また最近の研究によれば、彼はやむなく反租界のスタンスを取らざるをえない状況にあった。もちろん彼が暴力的で抑圧的な軍閥指導者であることに変わりはない。ただ色んな側面があった。
八省連合のイベント内容もまったく違うものになるのか、と疑問に思うかもしれない。
だが幸運にも、八省連合には親租界派の斉燮元という唯一無二の後継者がいる。史実では率先して日本に協力し、かつてのボス李純を殺したとも噂され、その他にも多くの悪行を積み重ねるなど、まさに孫の完璧な引き立て役だ。
新しく書き直された八省連合の崩壊イベントでは、「笑虎」の内面や性格、部下たちの一面を描き、これまで築き上げてきたものが斉燮元や陳調元、ドイツ人によってバラバラにされていく一部始終を見ることができる。
安慶軍閥
八省連合の更新に合わせて、陳調元にも少し変更を加えた。陳のあだ名を反映した新しい特性、顧問団、それに将軍を用意し、人物の経歴も書き直した。
湖南軍閥
湖南では、湯薌銘の西南政務委員会ルートを少し拡張した。西南政務委員会を結成すると、湯は「湘粤桂総督」という肩書を得る。さらに周辺地域を併合する際、督軍を送り込むのか、それとも現地の有力者と交渉するのかのアプローチを選ぶことができる。そして政治ツリーの最後のイベントも、総督を名乗るかどうかで変わる。
奉天軍閥
最後に、オリジナルのデザインを保持している最古の軍閥について。奉天のコンテンツでは、顧問や将軍がどの派閥に属しているか重要だ。だが不思議なことに、これまでどの顧問も所属派閥の説明文がなかった。そこで全ての将軍と顧問の説明文を見直し、派閥との関係について書き加えた。
実績機能
Paradox社がBy Blood Aloneでカスタム実績機能を追加して以来、KRでも実績が欲しいというプレイヤーの声は多かった。
デザインの目的
まず、単純に楽しい。実績集めは名誉あるゲームの伝統だ。何かを達成して小さなポップアップが出るとささやかな満足感を得られる。制作陣にも実績コレクターが多い。かく言う私も、Half-Life 2: Episode 1で銃禁止縛りプレイの実績を解放したことがある。
それにmodの幅を広げるのにも役立つ。ファンコミュニティに入り浸っている諸君なら、このmodで宣伝されていない「隠しルート」の大部分を知っているはずだ。
一部の実績は、こうした隠しルートの達成が条件となっている。subredditやdiscordを見ないプレイヤーにも、隠しルートの手がかりを掴んでもらう意味もある。
広い意味で言えば、プレイヤーに予想外の体験をもたらすためでもある。開発チームが渾身の出来栄えと思っていても、あまりプレイされていない国家は多い。そんなKRの過小評価されている部分に光を当てることができればと考えている。
この目標を踏まえて、ほとんどの実践は比較的易しい条件になっており、その国の主な目標を達成すれば解放できるようになっている。多くの国では、第二次世界大戦での存続が条件になっている。他にもゲーム序盤の戦争での勝利や、ゲーム開始時に分断されている国家の統一などが条件に含まれている。
ある程度のチャレンジ要素を求めるプレイヤーはガッカリするかもしれない。しかし開発チームが実績機能でやりたい事は色々あって、チャレンジ要素はその一部でしかない。もちろん中には難易度の高い実績もあるので、安心されたい。
実績機能プロジェクトは2022年末から着手し、最近ようやく完成した。最初はちょっとした息抜きのつもりで始めたプロジェクトだったが、積もり積もってここまで来てしまった。完成リストには100以上の実績が用意されている。これでもKRのプレイアブル国家を網羅するには足りないくらいだ。
ここでデザイン哲学の話は終わりにしよう。カスタム実績機能を実装したHOI4modとはしてかなり後発の部類になるが、それでも詳細な内容や今後の対応についてなど、多くの質問があるはずだ。あらかじめ多いと思われる質問に答えて締めくくりとしよう。
どこで確認できる?
まずメインメニューの「キャリアプロフィール」、あるいはポーズメニューの「プレイスルー概要」を開き、「褒賞」タブをクリックすることで確認できる。
実績リストは国ごとのエイリアスタグのアルファベット順に表示される(どの国でも達成できる実績は先頭に表示される)。エイリアスタグとは、HOI4で全ての国家を識別するために割り当てられた3文字のタグだ。例えばドイツならGERがエイリアスタグとなっている。
ほとんどのタグはアルファベット順に並んでいるが、中国とイタリアの実績は数が多いので、まとめて一つのタグで表示している。
実際の国名順に表示しないせいでややこしく感じるもしれないが、これには理由がある。開発中に分かったのだが、HOI4では実績がアルファベット順に並んでおり、その順番はハードコーディングされた実績IDの部分で決められているのだ。
この順番を上書きする機能がなかったため、次善の策として関連する国家の実績にまとめて1つのエイリアスタグを付けてグループ分けし、メンテナンス作業をしやすいように実績を見つけやすくした。またHOI4ではバニラからの機能として、ゲーム開始後は操作している国家で解放可能な実績だけをハイライトで表示してくれる。
実績達成を保存する方法は?
キャリアプロフィールの他の欄と同様に、steamのクラウドセーブを参照する。実績がきちんと反映されるように、hoi4のクラウドセーブ機能をオンにしてもらいたい。
アップデートを挟んでも実績はセーブされる?
できる。チーム内でのテストや他modの状況を見るに、クラウドセーブが有効ならば異なるチェックサム間でも実績の達成状況は引き継がれるはずだ。
将来新しい実績を追加する予定は?
プランはある。主要国家のリワークで新実績を数個実装する予定なので、メジャーアップデート毎に2,3個ずつになるだろう。いいと思うコンセプトがあればさらに追加するかも。
アプデで古い実績を削除することはある?
残念ながらある。KRは今も積極的に開発が進んでいる。わざと古い実績を削除するつもりはないが、新しいコンテンツに制限を加えてまで維持するつもりもない。変更する場合は、あらかじめ進捗報告で伝えるように心掛ける。
実績獲得には鉄人モードを有効にする必要がある?カスタムゲームルールやコンソールコマンド、State Transfer Toolを使っても獲得できる?
鉄人モードは必要ない。コンソールコマンドやゲームルール、 State Transfer Toolを使っても達成できる。理由はちゃんとある。
まずKRは鋭意開発中のプロジェクトであり、予期せぬバグが生じる可能性がある。我々もベストを尽くしているが、それでもプレイ中に予期せぬバグや想定外の挙動をする可能性は否定できない。そのためKRでは鉄人モードでのプレイを積極的に推奨していない。またカスタムパスやゲームルール、内蔵のState Transfer Toolを使うことで、プレイヤーの望む展開を作り、予期せぬバグを克服できるようにしてある。
開発チームとしては、実績取得のために鉄人モードの有効化を求めたり、ツール類の使用を禁じたりすると、上記のバグ対策とぶつかってしまう。カスタムカントリーパスを例にあげると、一部の実績は他の国の挙動が条件に入っているため、達成のために必要とされる可能性は非常に高い。こうした理由から、下手な制限をかけても意味がないと考えた。
もう一つは、実績の醍醐味は過程を楽しむことにある。もちろん理屈の上では、制限がないのだから不正をして実績を取得できる。しかし実際のところ、プレイ中の苦労が報われるのが醍醐味なのであるし、わざわざ不正してまで実績が欲しいものだろうか?
それに不正をやめてほしいと思ったとしても、そのためにはプレイヤーにさっきのバグ対策機能を使わせない縛りを強要することになってしまう。苦労を独力で乗り越えようとするプレイヤーがいるなら、わざわざ無用のトラブルを起こす必要もない。
なんで○○があって××がないの?
かならず来るだろう質問だ。色々なパターンがありそうので全部には答えられないが、頻出すると思われる問題には答えておこう
○○国を征服するなどの、長期プレイを求める実績は好きじゃない。そういった実績は追加しない。
特定のルートを優遇するような実績はなるべく避けるよう心掛けているが、逆にAルートに実績があるからBルートにも、という理由では実装しない。
実績を作りにくい地域もある。特に古いコンテンツ、とりわけ明確なゴールが存在しない国だと実績を用意しにくい。そのためラテンアメリカ諸国やインドでは実績が少ない。今後改善したいとは思う。
繰り返しになるが、実績は変更される可能性もある。これまで語ったルールが変わる可能性もあるが、ひとまずは緩い個人的なガイドラインとした。
それでは次回、ver1.2「Pour le Mérite」をお楽しみに!