【園館訪問ルポ】受け継がれる意志──東武動物公園 「リスザルの楽園」(埼玉県宮代町)/鳥羽水族館「寺町コレクション」(三重県鳥羽市)
遊園地と動物園が複合した「ハイブリッド・レジャーランド」の異名を持ち、関東を代表する私立動物園の雄、東武動物公園。近年はニコニコ動画のチャンネル配信など積極的なメディア展開も行い、新たなファン層を獲得しています。
その広い園内の一角に設けられた「リスザルの楽園」は、リスザルとカピバラやペリカンの混合飼育や、ウォークインケージの中を縦横に飛び回るオオサイチョウたちの姿が印象的な放飼場です。
この放飼場の脇、リスザルたちの屋内舎に当たる部分に、小さなプレートが掲げられています。
るり子が永遠の魂に見守られ、このリスザルたちの幸わせを心から祈っています。
御来園の皆様方も何とぞ子供達に愛をお寄せ下さいますように。
サルの仲間に魅せられ、飼育展示・生態観察を目的とした新たなドーム型飼育場の構想に熱意を燃やしながら、志半ばにこの世を去った女性がいたこと。彼女の想いを継いで引き取られたリスザルたちがこの展示施設の原点であることを、碑文は静かに、しかしはっきりと告げていました。
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ところ変わって、飼育種数日本一を誇る巨大水族館、鳥羽水族館を訪れた時も、先人の「想い」に打たれる場面がありました。この水族館の地下にある「マリンギャラリー」は多種多様な海洋生物に関する標本を集め、特に貝類の豊富さには目を見張ります。
この貝類標本の大部分を50年にわたり収集したのが、京都の画家であり貝類コレクターであった寺町昭文さんでした。
「マリンギャラリー」には、寄贈にあたり寺町さんから寄せられたことばが、原文のまま掲げられていました。
いかなる学問も数々の研究者の苦心の集積の上に成り立つもので、一代で止まればそのコレクションはすでに死物にも等しい。寺町の名前は消えても新しい後継者の手に移り、取捨補充されていってこそ永久に生きるものと思います。
貝の世界の奥深さに没入してきた日々、そしてその集積を次の世代に受け継いでいくことの決意が、思い入れたっぷりに語られていました。
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これはきわめて個人的な感覚論なのですが、動物園や水族館という場を訪問している時間は、「いま、ここ」という時点を強く意識する場面が、他の社会教育施設──美術館や歴史博物館、自然史博物館──よりも多いように思われます。
少なくとも、「いま、ここ」に生きている動物たちと向き合っている瞬間は、「過去」や「未来」から切り離された、所与のものとしてさえ感ぜられることがあるのです。実際にはどんな場もはるか昔から自明にそこにある訳ではなく、多くの人たちが関わってきて今の形になっているというのに。
だからこそ、在野の先人たちの「熱意を伴った没入」が「いま、ここ」の展示に通底し受け継がれていることを静かに伝える掲示物に園館で出会った時、私ははっとさせられるのかも知れません。
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