見出し画像

販売会での「挑戦」ー教師も生徒も、夢中で取り組む「作業学習」の仕掛けづくり(前篇)ー

 特別支援学校に勤務して一年目、まだまだ初心者マークの私ですが、今回、作業学習のMT(メインティーチャー)を任されました。単元は「販売会に向けて」。その中で、自分なりに挑戦してきたことをまとめておこうと思います。思いが詰まって長くなりましたが、ゆっくり読んでいただいて、たくさんの方から、ご意見、ご感想をいただけると嬉しいです。

 2月1週目、毎年恒例の作業製品の販売会。世の中の流れにはもちろん逆らえず、例年なら近所のショッピングセンターの一角をお借りして開催していた販売会ですが、校内開催になり、さらに、保護者もご遠慮いただく・・・つまり、お客様が本校の児童生徒と職員のみ、という前提条件でした(もう少し言えば、11月末に単元が始まった時には保護者来校OKだったのですが、1月の緊急事態宣言を受けて、1月中旬に「やはり来校は遠慮していただこう」となりました。この時のバタバタはまた後ほど)。

 学校の中での開催で、お客様が関係者のみ。これは、前回(10月)の販売会よりも条件としてきついものでした。10月は会場は本校でしたが、保護者の来場がOKでしたので。

 一緒にMTをする先生と、11月半ば頃から相談を始めました。私は①10月の販売会での課題(生徒が自分達が作った製品を自信をもって説明できない、接客に元気がない、作業班全体に一体感がない)を少しでも克服したい②10月の販売会と同じ製品を出していては、客層が狭くなる分、楽しんでいただけないと思うから、新しい製品を作りたい、この2点についてはどうしてもやりたい、と伝えました。2人であれこれ話し合った結果、

終わった時に、生徒に「楽しかった、こんな状況だけどやれてよかった」と思ってもらえるようにしよう

そのための仕掛けを作っていこう、となりました。ちなみに一緒にMTをする先生は、大学を卒業したばかりの新採くんです。私とは2回り近く歳も離れていますが、「まず私達が楽しくなければ、みんなも楽しくないから、若い感性で何でも相談してね。やれそうだと思ったら、周りを巻き込んでやっていこう」と最初に伝えました。周りを巻き込んで、スピード感をもって物事を進めるのは大得意な私(周りは大迷惑だったりして^^;)、彼にとっても私と組むことで何か得るものがあればいいなぁ、と思いながら日々の活動が始まりました。

 あ、すっかり紹介を忘れていました。私は紙工芸班に所属しています。

 1回目の職員打ち合わせ。紙工芸班の先生方を前にして、私達の提案資料は「0 前回の販売会での課題と現状の理解」から始まりました。普通、提案資料は「1 単元の目的」から始まります。先ほど書いた、生徒の様子と今自分達が置かれている状況を踏まえた上で、単元の目的につなげたい、活動する以上は、ただこなすのではなくて、生徒達の成長を促したい、そして何より、わくわくするような楽しい販売会にしたい、と伝えました。先生方の反応は、強く頷く人、無反応の人、様々でしたが、数名の頷いている人を味方にできる、そう確信して、打ち合わせを進めていきました。

 1回目の打ち合わせの中で、販売品目を先生方に投げかけました。その中で「生徒達に聞いてみたらどうだろうか」という案が出てきました。前回売れたもの、売れなかったものは全員知っています。それを見て生徒がどう感じるのか、また「こんなものがあったら嬉しい」という意見をもっている生徒もいるかもしれない、という言葉も出てきました。その時点で「生徒と先生方で一緒に新製品を考える時間を作ろう」と思い、すぐにスケジュールに入れました。

 新製品について話し合う時間の中で、生徒からは「マスクケース」「小物入れ」「メモ帳」「鬼滅の刃にちなんだ柄の製品」「干支ではない和紙人形」などのアイディアが出てきました。なるほど、生徒もいろいろ考えてきます。その後の打ち合わせでは、抗菌の問題や、著作権の問題などを話し合った結果、新製品は「ガムテープの芯を組み合わせて、和紙を貼って見栄えを良くした小物入れ」「製品にできない紙(ぼつ紙)を使ったメモ帳」「干支ではない和紙人形」に決まりました。生徒達に新製品について伝えた時「わあ、僕の意見が採用された!びっくりしたー」という言葉が聞こえました。そうそう、それを聞きたかったんです(笑)

 さて、「干支ではない和紙人形」です。1つは、学校のマスコットキャラクターに決まりました。昨年度試作品を作っていたそうで、製品化することにしました。もう一つ・・・せっかくだから新作を、となり、これは、ものづくりが好きな私が引き受けました(笑)。販売会は2月、「節分かな、雛祭りかな」などと考えていましたが、「感染症があるからこんな難しい状況での販売会になったんだ、やっぱり感染症を追い払いたい!」と思い、「アマビエを可愛らしく作れないかな・・・?」とイラストを描き始めました。既存の型を使えば、新しく石膏で型を作る必要がないので、できるだけ丸っこく、可愛らしいデザインにしたいと数パターン描きました。先生方に見てもらってデザインを決定し、以前に染料で染めた和紙が何枚か残っていたので、それを鱗にしようと決めました。問題は髪の毛(あれ、髪の毛なのかな?)です。最初は、毛糸にしようと思っていました。作業室にもちろん毛糸はないので、「じゃあ、買ってこようかな」と学校を出ようとした時に、紙工芸班のスタッフに「和紙を柔らかくしてひねってみたらどうかな?くしゃくしゃにすれば柔らかくなるから、それで色水で染色して、乾いたらひねってみたら、髪の毛にできないかな?」と声をかけられました。「そうすれば、全部和紙でできるよ、せっかくだから、オール和紙でいきたい」とアイディアをもらいました。特別支援学校に長く勤務している先生方のアイディアはすごいなー、と改めて感心しました。そうやってできた試作品が、こちらです。

画像1

 もう何度も私のTwitterで出てきた、アマビエちゃんです(笑)。実はこんな風にして、皆さんの意見で出来上がったものなのです。私にとって、忘れられない製品となりました。

 忘れられない、で思い出しましたが、「保護者の来校を遠慮してもらおう」となった時の作業班内での出来事も、強烈に忘れられない思い出となりました。「保護者が、自分の子どもが作った製品を買えない?それは、どうなんだろう」となり、「だったら、注文販売しよう」となったのが、販売会の2週間前の水曜日でした。忘れもしません。「次の月曜日に注文用紙を保護者に渡そう」となった瞬間、「起案するから、木曜日にはできあがってないといけないよね?今日、水曜日だよね?え、今日中に原稿書くの!?」と私。もうやるしかない、と腹をくくりました。でも水曜日は、個人的なことだけど、デイサービスの迎えがあるから、定時に上がらなければ間に合いません。「家で作ってきます」と言い、学校を出ました。

 過去に注文販売をやったことがないので、注文用紙の原形がありません。ひとまず、販売する製品の名前、特徴、価格を一覧表にしました。お客様に買ってもらえるように、製品の魅力を語っていると、文字数が多くなってしまいます。でも説明がなさすぎると、どんな製品かわからない。悩みながらもとりあえず注文用紙を仕上げて、翌日、木曜日の放課後、作業班の先生方に見せました。「これ、文字だらけで、保護者も読む気がしなくなるんじゃないかな・・・」私は自分でそんなことを言います。「写真があればいいよね?」確かにそうなんです、でも、そこまでやりきれない、この時点で、あと2時間で定時で、起案が翌日持ち越しになってしまいます。すると、ある先生が「hana先生が作った注文用紙でひとまず起案しちゃおうよ、写真は一覧にして裏面に載せるって一言添えて起案しよう、そうすれば今日中にいけるよ」と言います。別の先生が「たった一日でhana先生がここまで作ったんだから、写真の部分はみんなで協力して作ろう!」と言います。実を言うと、この時点でできあがってない製品もいくつかあったのです。だから、注文用紙に載せるために製品見本を作らなければならないという状況。先生方が作業室に散っていき、ある先生はパソコンを開いて画像を貼りつける用紙を作り、私はできあがっている製品をかき集め、もう一人のMTの先生が撮影、その最中に「はい、製品加工できたよ」と持ってくる先生。すごいチームワークだな、と思いました。写真データを取り込んで、貼りつけて、ここまで2時間で画像入りのチラシが完成しました。自分一人だったら絶対にできなかったと思います。この作業班で初めて感じた「一体感」でした(笑)。全員が1時間ぐらい残業する羽目になってしまい、申し訳なかったですけど、みんなで「すごい、これなら買ってくれるよ」という出来栄えになりました。(実際に注文販売での売上も多かったです)

 こうして注文販売を終え、いよいよ販売会のリハーサルがやってきました・・・と続けようと思いましたが、かなり長くなってきたので、今日はここまで。

    続きは、また!

☆私、今月は誕生月です。こんな私を応援してくださる方がいらっしゃいましたら、是非サポートをお願いします。全額、学び直しサークル「みちしるべ」の活動に使わせていただきます。

    

特別支援教育に興味を持つ教員です。先生方だけでなく、いろいろな職業の方とお話して視野を広げたいし、夢を叶えたいです。いただいたサポートは、学習支援ボランティアをしている任意団体「みちしるべ」の活動費に使わせていただきます。