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娘、初めての現場実習を終えて

 特別支援学校高等部1年生の娘が、先日5日間の「産業現場等における実習」を終えました。

 娘の代は、小学校6年生の仕事体験(半日)も、中学校2年生の職業体験(2日間)もコロナの影響で中止になり、「家や学校の外で働く」つまり「手伝いレベルではなく、社会に出て働く」という経験が全くありませんでした。(うちの地域だけかもしれませんが)
 「働くってどういうこと?」が全くわからない(職業人と語る会とか、職業人インタビューはやっていても、身をもって体験したわけではないので、イメージが全く持てない)娘でした。

 そこで、今回娘がどのようにして実習先を決定したのか、実習先で学んだことは何なのかなど、まとめておこうと思います。
 私と同じように、障害のあるお子さんを育てている方や、特別支援学校の先生方(保護者ってどんなことを考えているんだろう?と思っていらっしゃることでしょう)、福祉関係に興味のある方などに、参考になれば嬉しいです。

実習先の選択

 まず前提として、娘の通う学校は「最初の実習は、1週間のみで、福祉施設で行う」ことが決まっていました。さらに、「保護者が施設まで送迎する」も前提条件でした。
 7月に学校で個別面談があり、担任の先生から、2か所の福祉施設(就労継続支援B型事業所)を紹介していただきました。どちらの施設も、娘の特性(大きい音が苦手、接客など人と話すことが苦手、動作が慎重で丁寧なので、製造ラインに入って働くのが苦手など)に合っていました。まだ3か月ぐらいしか接していないのに、先生方、流石だな、と思いました。
 夏休みにその2か所に娘と見学に行きました。どちらも同じぐらいの人数が働いていて、年齢層も変わりありませんでしたが、決定的に違うことがいくつかありました。(説明の便宜上、A事業所、B事業所と呼ばせていただきます。)

 A事業所:一人一人の作業スペースが広い=事業所そのものが広い。入口に一人一人の靴箱、荷物を管理できるロッカーがあったり、昼食場所が独立しているなど、「どの場所で何をするか」がわかりやすい。どの方が施設の方なのかがわかりやすい(醸し出す雰囲気が、利用者の方とは違いました)。一般的な「作業所」をイメージしていただければと思います。
 B事業所:普通の民家を改装してあるので、玄関は家庭用で、靴が散乱(仕方のないことです)。誰が利用者で、誰が施設の方なのか見分けがつかないぐらい、みんなが一緒に作業をしている(よく言えばアットホーム)。ちょっと難しい作業は、施設の方だけで集まって、利用者を交えずに作業をしている(これは、「こんな難しい作業ができるんですね!」と私が感動して呟いたら「あ、みんな職員なので」と返されて知りました)。みんなが昼食をとる食堂が、作業場所になっている。

 どちらを選ぶかは、好みなのかな、と思います。
 私の中では、2つの事業所の見学が終わった時点で、「最初の実習だし、環境面で混乱が少ないA事業所のほうがいいかな。」と思っていました。それを言わず、娘に尋ねようと思っていましたら、B事業所の見学が終わって、車に乗った瞬間に娘が「A事業所にします。」と。理由を尋ねましたが、「理由はよくわからないけど、A事業所の方がいいかなと思う。」と言っていたので、「まあ、感覚的にそう思うのなら、いいかな。」と私も思い、A事業所に決めました。

A事業所での事前打ち合わせでの様子

 実習の2週間前に、学校の先生と、私と、娘と、施設の方で、実習に関して打ち合わせを行いました。
 出勤・退勤時間、服装、持ち物、注意事項などを確認するための打ち合わせです。
 娘は施設の方や学校の先生に何かを質問されると、緊張からかいちいち隣に座る私を見て、「何と答えればいいのかな?」とでも言うような不安な目で訴えていました。
 まるで私の許可なく喋っちゃいけない、みたいな家庭方針だと思われていたらどうしよう、と、私の方が焦りました。
 「あなたが聞かれてるんだから、自分で答えて。」と伝えると、消え入りそうな声で受け答えをしていました。
 「うーん、緊張しているなあ、5日間の実習では、もしかしたら緊張がほどけてちょっと喋れるようになった頃に終わっちゃうかも。」とその時は思いました。
 まあ、「一日中働く、5日間」がどれだけ大変か、を体験できたら今回はいいかな、なんて、打ち合わせの時点では思っていました。

5日間の実習での様子

 ありがたいことに、5日間のうち、2日間も、学校の先生が様子を見に来てくれました。とても集中して作業ができていたそうです。また、日々の実習日誌で、施設の方が教えてくださったのですが、利用者さんや同じ時期に実習をしていた別の生徒さんとペアを組んで、作業に取り組むこともあったそうです。そうなると、話をせざるを得ませんから、娘にとっては緊張しながらも話ができる機会になって、よかったのだと思います。
 娘は中学生の頃から特別支援学級の作業学習で、「報告・連絡・相談」は叩きこまれていました。なので、「終わりました」「○○はどこにありますか」などは、初日は施設の方に気付いてもらうのを待ってしまったようですが(誰に言ったらいいのかわからなかったとのことでした)、2日目以降は適切なタイミングでできたようです。
 ただ娘の緊張は相当で、休憩時間もトイレや水分補給を済ませたら、背筋を伸ばしたまま固まって座っていた、とのことでした。「休憩時間の過ごし方」は、次の課題になるのかなと思いました。(長く働き続けるためには、「力の抜き方」も大切ですから。)

娘が学んだこと、できたこと

 最終日には、学校の先生、私、娘、施設の方で「反省会」がありました。反省会は、何ができて、何が課題で、というのを確認する会です。
 できたことや課題は、先ほど書きましたので、ここでは娘の言葉や、態度の変化をご紹介したいと思います。
 施設の方に「5日間、どうでしたか?」と尋ねられた娘は「大変でしたけど、とても勉強になりました。」と、私のほうも見ずにはきはきと答えました。まずその態度に私がびっくりしました(笑)。打ち合わせの時とは別人のようです。
 施設の方に「大変だった?そうだよね、でも、楽しくできた?」とさらに尋ねられ、「はい、楽しかったです。わからないことは教えてもらったり、一緒にやっている人(他の生徒さんのこと)がわからないときには教えてあげたりして、みんなで一緒に仕事ができて、楽しかったです。」と、淀みなく答えていました。
 私はびっくりして言葉を失ってしまいました(笑)。5日間で、こんなに人って変わるんだ、とびっくりしましたし、嬉しく思いました。
 余談ですが、娘は「返事がよかった」と施設の方から褒めていただいていました。「聞こえる声の大きさで、『はい』と言ってくれるし、ときには、『はい、わかりました』と言ってくれるので、理解できたんだと判断できました」とのことでした。

次の実習に向けて

 反省会が終わり、施設を出て帰り際、学校の先生が、「娘さんの特性に合っているような働き方ができる企業もありますから、次(2年生)はチャレンジしてみてもいいかもしれませんね。」とお話してくださいました。
 これから娘と一緒に考えていくことになりますが、今回の実習では「一日中働く5日間を体験する」というのが大きな目的でしたので、例えば「5日間が10日間になったらどうなるかしら?」「今回は私が送迎したけど、自力で通勤するとか、施設の送迎バスを利用するとか、そうなったらまた負荷が増えるからどうなるかしら?」「今回は弁当持ちで、自分の好きなものが食べられたけど、給食が出る所だったら、どうなるかしら?」など、まだ未体験のことがあります。
 卒業まで、あと4回、実習のチャンスがありますから、少しずつステップアップして、最終的に自分で「ここで働きたい!」と思えるところを娘が選択してくれたらいいかな、と思っています。
 「就労」に関しては、まだまだ「芽が出たばかり」の娘です。卒業するまでに、成長できるように、母として応援していこうと思います。
 特別支援学校に入学して、スクールバス停まで自力で歩いている娘。中学校の頃は完全送迎でしたので、それだけでも大進歩なのですが、公共交通機関が利用できるようになったら、移動手段がぐっと増え、働ける場所の範囲も広くなるのだと思います。これは家庭が頑張ることですが、一人で電車やバスに乗れるように、練習もしていこうと思います。

 大変長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。娘の頑張りをまたお知らせしていきますので、これからも見守って応援していただけたら嬉しいです。


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hana
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