『エニタイムスパイス』として作るカレーと『菓子処タマリ』のスイーツが合わさり『玉利堂』になる。〈玉利堂_小平市たかの台〉
立川の老舗喫茶店『あちゃ』から続くやさしい気持ちになる南インドのカレーと、少し硬めのしっとり甘いプリンのルーツはお母さんにたどり着いた話。
たかの台を拠点として活動をする玉利高久(たまりたかひさ)さんと愉生(ゆう)さん夫妻。高久さんは『エニタイムスパイス』として、蝶ネクタイやファッションの小物の制作・販売と店舗のないカレー屋さんを。愉生さんは『菓子処タマリ』とタイ古式マッサージの『まったり処タマリ』として活動をしている。
その二人がたかの台にある『カミカワハウス』を間借りして、一か月限定でカフェを営業をすると流れるお知らせ。インスタで告知されるおいしそうなカレーとお菓子に気持ちを高揚させたまま訪れた。
カウンターの中で奮闘する二人。客席はにぎわいとても忙しそう、でも充実した表情に見える。こんにちはと声をかけ、チキンと南インドのベジタブルカレーと、どのスイーツにしようかとひとしきりメニューを眺め悩んでプリンをお願いする。
丁寧がどのレイヤーにも滲むやさしいが詰め込まれたカレーにまず感嘆。うん、これ、おいしい。そして、甘いカラメルを纏うしっとり固めの大人なプリンのビターな甘みに包まれる幸福。
このカレーとスイーツを作る二人のルーツを、きちんとお話を伺い記事にしたいと思い、改めて時間を頂いて、話を聞いた。
二人の旅は立川で老舗の喫茶店として親しまれていた『あちゃ』から始まる。
お父さんから店を継いで孤軍奮闘していた高久さんは、スイーツを作れる人を探していて、元々知り合いだった愉生さんに声をかけて一緒に働くことになる。でも、その後、お店は惜しまれつつも、閉店することに。『あちゃ』として30年ほどの歴史。
『あちゃ』のカレーは母から父、そして高久さんへと継承してきたという。父は日本風にアレンジしたカレーで人気だったが、僕は母のインドを手本にしたカレーが好きだったので、あちゃの初期に出していた母のカレーに近づけようとして作っていたのが、僕のはじまりのカレー。
基準のレシピを父から聞いて、そこから少しずつ改良を重ねて、母の味に近づけた。今はそれをもとにオリジナルな僕のカレーになっていると話す高久さん。
2023年にはじめてインドへ訪れたのは、自分が思うインドカレーを確認する為に。行きたいと思っていた店で、到着したときに母のカレーの匂いだって、ほんとこれこの匂いと興奮気味に話す高久さんに母への強い思いを感じた。
愉生さんのお菓子作りもお母さんがルーツ。家庭で食べるおやつも手作りのものが多かったと話す。一緒にお菓子作りをするようになり、シフォンケーキを小学校の低学年で作っていたという。
バレンタインのために奮闘して、納得するまで何度も作り直し、朝4時まで作って結局寝坊したという逸話も。製菓学校を卒業後、お菓子屋さんで経験を積み、いま豊富な種類のスイーツを魔法のように提供している。
そんな母への強い想いを持つ二人が、真摯にこだわりと納得を追求する姿勢が、淡々と熱を持ち伝わる料理として表現されていて、その芯の深さに魅了されているんだって納得をした。
『玉利堂』という屋号には、二人の活動を名字の『玉利』で統一し、核となるブランドを作りたいという思いが詰まっていると話す高久さんに、しっかり考えてくれていたんだね、ありがとう、とやさしく笑う愉生さん。
いま野望はたかの台でお店を開くこと。気になる物件もあって、ご縁がつながればいいなと思っています。と楽し気に笑う愉生さんが輝いて見えた。
蝶ネクタイを作り販売しながらも、誰かに食べてもらいたくて、ずっとカレーは作っていて、人を呼んでごちそうしていたという高久さん。
なぜ立川から小平へ移住したのかを伺うと、愉生さんのお兄さんが、たかの台に住んでいたということもあるけれど、元々、愉生さんには、たかの台に住みたいという野望があったという。
十数年ほど前のこと。お母さんとたかの台に散歩に来て、すごく気に入って、その時に、このたかの台にお店を出して、平屋に住みたいの気持ちが芽生えたという。今、いろんな縁が重なり、たかの台に住むことになり、そして平屋に住んでいるんです。と、楽しそうに話す愉生さん。
お互いに目を合わせ、言葉を確かめ合いながら話をする二人。
ずっとバラバラでやっていたのが、二人で合わさって、二人でとにかくまた喫茶店がやりたくて、特にたかの台の近辺でと語る。
この言葉を聞いて安堵と未来への期待。
いま、立川の若葉町にある『いーたちキッチン』いうシェアキッチンで木金土にお二人のカレーとスイーツは食べることが出来ます。でも近い将来、たかの台で『玉利堂』がオープンするの日が来ると信じて心から待つこととします。
(は)
【玉利堂】
東京都小平市たかの台
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