見出し画像

手打ちうどん「よしふじ」の肉汁うどんが無性に食べたいの気持ちになる祝日。〈よしふじ_小平市大沼町〉

こんなところにうどん屋さんがなんて場所にある、硬くなく程よい噛み心地の、喉越しの良い武蔵野うどんをいつものように頬張る話。

小平駅の北口から東京街道へ出る。東に向かいおだやかな風景の中を15分くらい歩くと、新小金井街道にぶつかる手前の道端に「うどん」の幟がはためく。

見えるのは塀と住宅。どこに「うどん」と探すと、その住宅のある敷地に小さな店舗があることに気がつく。2005年にオープンをした手打ちうどん「よしふじ」。2006年に生まれた息子のうどんの記憶は、ほぼこの「よしふじ」で作られているというくらい通う武蔵野うどんの店。

混んでいる頃を避けて13時24分。到着すると外に並びはなく静か。良かったと安心してお店に入るとほぼ満席の熱気にたじろぐ。唯一二人かけの小さなテーブル席が空いている。お久しぶりですと席に着き、いつものように「肉汁うどん」をお願いする。
 
店内は小さな子どもを連れた家族が数組と、おじいちゃんとおばあちゃん。若いご夫婦と、高校生くらいの息子とお母さん。いつもの景色。どの年代も受け入れる包容力はいつものとおり。

小さなお皿でうどんをフォークで頬張って満足する笑顔に見惚れて、あの頃を思い出したりする。そんな待つ時間。冷蔵ケースに入るビールに目を奪われて「ビールください!」と喉まで出かかるもぐっと今日は我慢をする。

壁にはこのすぐそばに練習場のあるFC東京の選手のサイン。2010年から選手名鑑の様にずらと並んでいる。ぐると眺めながら、あの年の8番はなんて記憶を探すのもいつもの時間つぶし。

白く湯気の立ちこめる小さな厨房で、うどんを茹で、水で洗いしめ、天ぷらを揚げたり、汁を作り、盛り付けるご主人と奥さんのやり取りを見て、そろそろかなんてそわそわしている。

お待たせしましたと届くうどん。ほんのりクリーム色の艶やかなうどん。お椀にみっしりと豚と長葱が泳ぐ湯気を立てる肉汁に、青菜と葱と生姜が乗る小皿。いつもの顔。

青菜と葱と生姜を肉汁に放りこみ、胡麻をぐるぐるとすり、七味を振りかけて、いただきますと呟く。箸にからみ付くぬらぬらと艶めかしいうどんをわし掴んで、熱々の肉汁の汁にざぶと浸して勢いよく啜る。

太すぎず、細すぎず、不揃いに切られたうねりが入る長いうどん。なめらかでやさしい噛み心地。噛み締めると程よく小麦を感じる、喉越しの良いどの世代にも受け入れられるやさしいうどん。

肉汁は濃くもなく、薄くもない豚の甘みと出汁の旨みが染み出る角のとれた醤油の汁。豚をからめ無心に啜るしあわせな時間。

うん、おいしいと安心する。

満たされる気持ちとお腹。お会計をしながら、奥さんに、息子ちゃん大きくなったでしょ、なんて声をかけられる。この場所で根を張るうどん店。閉店間際でもぽつぽつと「まだいい?」なんて言いながらお客さんがやってくる。

愛されている。そういつも感じる。いつまでもこのうどんがあったらいいって思ってる。

(は)

【よしふじ】
  小平市大沼町7丁目6−6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?