処世
わたしがそれに興味を持ったのは
それがあまりに嫌われていたからだ
むろん私も好きではなかったが
嫌わされているような、気がしていた
近づいて、手に取ると、
それは悪臭を放った
離れて嫌っていた時とは
また違った、致命的な悪臭だった
悪臭の煙幕をかき分けると
中心には絶望的な劣等感があった
劣等感の隠蔽が
それが生を保つために必要なことだった
わたしが感じたのは悲哀だった
それにとって自分を嫌わせることは
それが生を保つために必要なことだった
加えてそれは嫌われずに生きることを
諦めていた、なぜなら
(それまでの自分の否定になる)(過去)
(その危機感から無為に我を張る)(未来)
それは閉塞のなかで悪臭を発散させていたのだ
まったくそれにとって上手くできているのは
人は人の生の糧を奪う権利は無く
生きものは生を全うするべきだという前提だ
それは利己的な悪臭をもって
たやすく他人を傷つける
そんな人間だから嫌われる
そうすることが生の糧になるのだから
そんな処世を
わたしは見てしまったのだ