「自分の本当の顔」を今さら思い知ったオンライン会議
完全リモートワーク3日目。
テレビ会議ツールも徐々に使いこなせるようになってきた今日、衝撃を受けたことがある。何を隠そう「自分の顔」のことだ。
かれこれ30年以上、鏡に映る自分の顔は見飽きるくらい見ていたはずだった。なのに、今日の会議中の自分の顔は、まるで初対面の誰かみたいだったのだ。
それに気づいたのは、よりにもよって会議のちょっと難しい局面で、自分が必死で意見をしているときだった。
途中までは自分の顔が映っていることを完全に忘れたまま、大真面目に意見していた。けれど、ほんの一瞬、気が緩んだとき。ついに私はそれに気づいてしまった。
左右非対称に動く自分の唇。美しいとは言えない歯並びがのぞく口元。ひくつく眉。もしかしたら気のせいかもしれないが、まばたきが左右非対称なのでは?という動き。テレビ会議の途中で、これら全てを生まれて初めてじっくりと目撃した。通信速度のせいで、ワンテンポゆっくり動く画像が、違和感を際立たせていたのも事実だ。でもやっぱり、その顔は、私の知らない私の顔だった。30年以上生きてきてあまりに遅すぎる衝撃。イタい自意識。
考えてみれば、私の知っている「鏡の前の私」は、常にとっておきの顔をしていた。いつだって化粧して気合を入れて、目力を込めて、いざ出陣!という具合だった。化粧を落としたときでさえ、鏡の中の自分は、見られていることを意識した自分だった。でも現実で私が無防備に他者に見せていた顔は、おもしろいほど緩んだり歪んだり。私、こんな顔で喋っちゃってたんだな!という驚きに打ちのめされて、ちょっとだけ会議の記憶がない。(ちゃんとその後は追いつきました)
ずっと前に何がしかの本を読んで「自分自身の顔を、自分の目で直接見ることは一生かけてもできないのだ」と気づかされて、はっとしていたはずだった。誰より詳しいはずの自分自身がとても遠い他人のように思えたあのとき、私は全部分かったような気になっていた。それなのに、まったく何を今さらである。思春期の中学生のような瑞々しい自意識にいっそ乾杯したい。
明日もオンラインテレビ会議。さらに「緊急事態宣言」で、リモートワークが5月上旬まで確定。ちょっとずつ、現実の自分と鏡の中の自分を重ねていこうじゃないか。テレビ会議でむくむくと発露する自意識と、仲良くやっていきたいものだ。