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夜の魅力は日常に潜む美しさを教えてくれるところだ。
引っ越ししてから半年が経った。この街に越したときは何もない街で退屈しのぎにもならないなと思ったが、陽に照らされた街を俯瞰したとき、街が優しく包まれているような気がした。
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これが典型的な「住めば都」である。まんまと騙された気分になる。
元日、久しぶりに実家に帰ったとき、もう僕がいる街ではないと思った。将来的に奥さんとなる人と挨拶回りをするようなことがないかぎり、独身であるうちはしばらく実家に帰る必要がなくなり、実家がやけに落ち着かない場所となってしまった。
だからこの正月のほとんどは1人で静かに暮らした。実家に顔を出して老父・老母に元気な報せができただけでも良しとしよう。
このとき人間の心に潜む黒い激情はふとした瞬間にくるものだとわかった。
これは自立というべきか、孤立したというべきか。1月1日のよすがら、実家から出て自宅へ向かう電車で宇多田ヒカルを聴いた。ぐらぐらと揺れる電車が、ほんのすこしだけ缶チューハイを飲んだ僕の重たい身体を運ぶ。
時間にしてどれぐらい経ったか知らずか、最寄りの駅についた頃には実家より今住んでる街の方があらためて慣れ親しんだ街であると感じた。
家にいても落ち着かないとき決まって下北沢へと行く。東京の片隅で静かに本を読む。
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夜が訪れると、世界は一変する。昼間の喧騒は静まり、代わりに静寂が広がる。街の明かりが星のように瞬き、月が静かに見守る。僕にとって、夜は心がおちつく時間であり、内面的な探求の時間でもある。
日中は、仕事や忙しい生活に追われ、様々な刺激に囲まれている。人々の声、車の音、電話の着信音。それらはすべて、僕の思考を邪魔し、疲れをもたらす。
しかし、夜になると、そんな雑音が消え、自分自身と向き合うことができる。夜空を見上げ、無限の星々に思いを馳せることで、僕の小さな悩みが相対的に小さく感じられ、次第に心が軽くなるのだ。
また、夜は思い出の時間でもある。静けさの中で、過去の思い出が頭をよぎる。懐かしい瞬間、失ったもの、そして得たもの。それらすべてが、僕の人生を彩る。
しかし、夜には不安もつきまとう。闇の中に隠れた未知は、時には畏怖の念を抱かせる。思い出が楽しいものであればあるほど、失ったそのものの大切さに気付かされる。僕たちは皆、どこかで過去に囚われながら生きているのかもしれない。
夜の魅力は、何も特別なことではなく、むしろ日常に潜む美しさを教えてくれることである。東京で1人、静けさの中で、夜とともに歩いた。
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