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NEO表現まつりZ|クロストーク【円盤に乗る派×石原朋香】

6月21日から2週間にわたって開催される『NEO表現まつりZ –技術開放!芸術家たちがなんかやる!!』。13組のアーティストが参加し、10の演目+5つのWSが開催されます。
「まつり」開催に向けてそれぞれ準備を進める参加アーティストの方をマッチングし、普段の活動や「まつり」に向けての心境などを伺うクロストークを実施。
今回は、円盤に乗る派の日和下駄さん、石原朋香さんをお迎えし、それぞれの創作状況や心境を伺いながら、まつりの全貌とそれぞれの取り組みに迫ります!

-まず、今回の「まつり」で実施することからお伺いできたらと思います。

石原:石原チームは合唱部を結成して、野外で三曲の合唱曲を歌います。『ヤッホー、跳べば着く星』という作品を涌田さんと田上さんと作った時に、歌を練習するかってなって歌ってたらおじさんが通りかかって声をかけてくれたっていうことがあって。プロデューサーの下駄さんと面談した時に、パレードをやりたいっていう話をして、パレードは大変だけど合唱だったら似たようなことが起こせるんじゃないかと思ってやり始めました。今とっても頑張っています。

-合唱の練習って文化祭とかの記憶の感じなんですけど、そんな感じで進行してるんですか。

石原:そうです。伴奏担当で尾花(佑季)さんっていうミュージシャンがいて、私も吹奏楽部だったことがあるので合奏の練習の仕方を分かっていて。主に尾花と私が中心になって譜読みをして、みんなで合わせてみたりっていうことをやってるんですけど、みんな合唱って聞くと揉めるみたいなイメージを持ってるんですよね笑。中学校の合唱コンの苦い思い出的な…。だから、順調に練習が進むと「今日だけでハモれた!」って感動したりしてます笑。年齢層も結構幅があって、佐藤滋さんとかは結構年上ですけど、本当に同級生みたいな雰囲気で。『怪獣のバラード』っていうのを歌おうとしてて、最初は同世代じゃないと知らない感じもあったんですけどだんだんこう馴染んできて、いい曲だねってなってきたりして。『中学校の時に周りの友達がちゃんと歌わない中、自分はすごい楽しんで歌ってたんだよな』みたいなこととかが聞けたりして。記憶を呼び起こす装置でもある、みたいな。

下駄:合唱ってみんなやったことありますもんね。

石原:「おぐセンター」関連でおじいちゃんおばあちゃんが合唱する映画を見ましょうの会があるらしくて。その上映会をやろうってなったのは、西尾久に合唱団をやりたい人たちがいるからみたいなことらしくて。たちくらさんが見つけてきて教えてくれたんですけど、近くにそういうこと考えている人たちがいるんだって嬉しくなりました。

-合唱っていうフォーマットだと、保護者みたいな距離感でも見ることにハードルがない感じがありますよね。街の人とかがふらっとみにきてくれるといいですよね。

下駄:石原さんから地元のお祭りであったパレードに参加できなかったみたいな話を聞いて。参加したかったけどできなかったことが、今の自分に結構影響があるんではないかみたいなことを話してたんですよね。
そこから考えてみると、パレードだと参加のハードルが低くて、一緒に歩けばいいし、合唱も歌下手でもいいような気もする。二つとも誰しもが体験可能だとだと思います。歌も人が聞いたら感動するから。

石原:上手で感動するみたいなことじゃなく、人がいっぱいいて感動するみたいなことあるなって思ってます。人がいっぱいいてすごくいいエナジーを発してるみたいな状態に合唱はなれる。パレードの難しさって何だろうみたいなこと思ってたんですけど、できることがありすぎるというか、演劇くらい自由度ある。なのでもうちょっとシンプルなことで試せたらいいなってうっすら思ってて、合唱に行き着いたのかなって思いました。

-ミュージカルとか見てる時、歌ってる状態ってその人のことがよく見えるみたいな感じがありますよね。僕は演技してる人とかも、その人のことが見えるみたいなのが好きなので、そういう意味でも合唱はとても楽しみです。

石原:確かにその人のことよく見えます。最近、合唱部にダンサーとかも入ったんです。歌を覚える時に、喉の筋肉をどう動かすかみたいなことを考えてるらしくて、喉に振り付けさせるみたいな。取り組み方にも違いがあって面白いですね。
一曲めちゃめちゃ難しい曲があって、寺山修二が作詞したやつで、「セーヌ川の手回しオルガンの老人を忘れたい」っていう歌詞から始まって、あらゆる青春の思い出を「忘れたい」と言ったあと、最後は、「思い出すために」って叫ぶように歌って突然曲が終わるんです。ドラマチックな展開になってて。この展開の感覚を共有する時に、『開演80分くらい経ったと思って歌ってもらってもいいですか』っていったら、みんなすごい『あー!』ってなって。なんかめっちゃなんか上演作ってる感じで、その方が楽しめるなって思って。来年の「まつり」があったらこういう曲でミュージカルやるみたいなことやりたいねと盛り上がったりもしました笑。

下駄:曲とメンバーってどうやって決めたんですか?

石原:メンバーは、私がクローズドに声をかけたんですよ。知り合いの範囲内でやりたい人を募って集まってくれた人たちです。なので界隈が全然違うメンバーが集まってます。選曲は、小・中学校で歌ったことがある合唱曲一曲と、J-POPの誰もが知ってる曲一曲と、寺山修司は絶対歌いたいって言って、合唱の練習曲集みたいなものを引っ張り出してきて選びました。全員が集まって練習する機会がなかなかなくて、メンバーから他にリクエストしてもらった曲はまたやっていこうみたいな感じになっています。

-合唱部を主宰してるっていいですね笑。

下駄:なんでそんなに寺山をやりたかったんですか。

石原:寺山の『思い出すために』っていう曲も田上さんが教えてくれたんですよ。涌田さんと3人で動画見てて、これはちょっとやべえってなってたんです。後で聞き返した時に、私が大学院の修了制作でつくった作品の最後で、いろんなものを「忘れたい」って連呼する詩を書いてて。寺山が書いたものと似てる部分と違う部分を知りたいなと思って、歌ったらわかるかなと。寺山の曲の展開をどう表現したらいいかっていうことで、楽譜を下ろしてみたらどうかとか身体の動きの提案もあったりして、楽しく作ってます。

下駄:円盤に乗る派は演劇を作るのと、僕と畠山さんがワークショップをやります。カゲヤマさんはどれにも一切関わってなくて、畠山さんと僕が主導でやってるっていう感じになってますね。カゲヤマさんは隣屋の方にお呼ばれして、演出をやってますね。団体の垣根を越えていることも、今回の「まつり」でいろいろ起こってる感じがしますね。合唱部も垣根を越えまくってるし。

石原:下駄さんたちってTeXi’sにも出ますよね。

下駄:そうですね。
円盤に乗る派では、僕が作った「〈戯曲〉を〈良く〉読むためワーク」を使って作品を作ろうっていうのをやってます。すでにNEO表現サテライトで『料理昇降機』を「乗る派」メンバーでやってて、まつりでは外部の人も呼んで戯曲も書き下ろしてもらってやります。内容としては、三人の人が出てきて謎の儀式を始めるんですけど、恐らく霊的なものが憑依して実話怪談のような話を語り始めるんです。ウーバーの配達員をしてる男がいるんですけど、配達員の中で噂になってることがあって、とある場所に行くとGPSの機能が使えなくなって怖いものに遭遇しちゃうと。実話怪談って言ったんですけど、都市伝説みたいな話でもありますね。それ以外にも、神話みたいな話とか、普通のバイト先の話みたいな話も出てきて、なんか色々起こるなという内容ですね。

石原:今別の現場で稽古をしてて、お芝居って幅があった方が面白いよねという話をしていて。ぶつぶつ喋るところと、はっきり喋る部分と、波があってその振幅がギリギリまでいく大きさになると面白いよねみたいな。今の話を聞いて台本がそうなってるみたいだなと思いました。

下駄:戯曲を書いてもらったのは増村さんっていう人で、僕が大学の時によく出てたmimimalっていう演劇団体の主宰の人なんです。5年くらい連絡取れかったんですけど、去年乗る派の公演を急にみにきてくれて、いろいろ話したら演劇再開したいっていってたのでお願いしました。僕がやってる『〈戯曲〉を〈良く〉読むためのワーク』の内容を伝えて、これをやる前提で、それに適した戯曲を書いてもらいました。あとは、俳優主導なので演出が結構描かれてていいよみたいなこととか、いろんな読みの可能性があるといいですよね、とか話しました。

石原:キャストは、どうやって誘ったんですか。

下駄今まで一緒に作ったことがない人っていうのと、内容に興味を持ってくれる人がいいかなと思って選びました。あと、男女半々の座組にしようと思って声かけましたね。みんな快く引き受けてくれて、あとみんな異常にやる気がある。稽古は二ヶ月ぐらい前から週2でずーっとやってて。僕のワークがそもそもむちゃくちゃ時間かかるっていうのもあるんですけど、本番も何回やりたいですかって聞いたらできる限りいっぱいやりたいってなって全部で6回やることになったんですよね。お金もそんなに払えないから無理しない感じでいいですよっていったんですけど、普通にいっぱいやった方がわかること多そうだしみたいな感じで。増村さんのことも誰も知らないけど戯曲届いたら普通に面白くて、面白い企画にしたいですねってなって素直を嬉しかったですね。あとは、俳優の方の今後につながるといいなって思っています。

-最後に「まつり」にくる人に向けて一言ずつ頂けたらなと思います。

石原大人がこの人数で歌ってることってあんまりないので、景色としてなかなか面白いんじゃないかなと思います。難しいこと考えずふらっときていただけたら。ちょっと満ち足りた気持ちになってもらえるように、頑張ります。

下駄:普通に演劇を体験しに行くっていう気持ちで来てもらえたら。ワークショップも演技のワークショップだし。これは僕がワークを作った理由でもあるんですけど、俳優はやってることがブラックボックス化しがちで、俳優同士でも共有していかないし、技術化されていないみたいなところもあると思っていて。こうやってできるんだみたいな、やり方とかのムーブを作れたらいいなと思ってやってる部分はあるので、演技に興味がある人はぜひきてほしい。逆に誰にでもめちゃくちゃ面白いかと言われたらわからない部分もあるけど、「まつり」ってそういうものなのでいいかなと思っています。でもとにかくきてほしい、「まつり」全体を見てもらえたらうれしいです。



円盤に乗る派

『Pray in the milky night』

2023年に開催された『NEO表現まつり』での発表から続く、「俳優のふるまいをそのまま作品にする」ことをテーマにした《円盤に乗る派》の一連の企画。俳優・日和下駄は執筆した演技論『<戯曲>を<良く>読むためのワーク』をそのまま創作プロセスに転用して作品を制作しています。円盤に乗る派『料理昇降機』に続く企画の最終表現は、書き下ろし戯曲を日和下駄が注目する若手俳優とともに制作する上演です。演出家なしで創作した、演技に接近しつつもあくまで“戯曲を読むこと”にこだわった上演を、ぜひ多くの方にご覧いただければと思います。 <あらすじ> プレイヤーを名乗る3人の人物が降霊術のようなものを始める。そこで語られるのは、フードデリバリーの配達員が経験した「オチモリさん」と呼ばれる土地にまつわる実話怪談。しかし、話を聞いていく内に「オチモリさん」の土地の記憶が明らかになっていき……θー…………。

日程|上演時間90分
6月21日㊎ 13:00〜
6月22日㊏ 19:00〜
6月23日㊐ 17:00〜
6月28日㊎ 13:00〜
6月29日㊏ 19:00〜
6月30日㊐ 17:00〜

旧小台通り防災スポット 、おぐセンター 2F 

【WS1】〈戯曲〉を〈良く〉読むためのワークショップ

『〈戯曲〉を〈良く〉読むためのワークショップ』では俳優・日和下駄の演技論『〈戯曲〉を〈良く〉読むためのワーク』を皆さんにも体験していただきます。初回実施時には2名で3時間かかったこのワークを、ギュッと90分にまとめました。戯曲を声に出して読みたい人はぜひご参加ください。「良さとは何か」一緒に考えましょう。

日程|所要時間90分
6月23日㊐ 13:00〜
6月30日㊐ 13:00〜

会場|サロン梅の湯

【WS2】切実に発話を試みるためのワークショップ

このワークショップでは他者が考えたテキストを 「発する」ことを引き受けるためにどのような努力が可能かということを、私の演技の考えを軸に参加者と共に考えていきたいと思います。 1日目は「読解」です。参加者各自が持ち寄った短いテキストを、課題として別の参加者へ受け渡しそれを発話するための読解をしていきます。1週間の間隔をあけて、2日目は「上演」です。簡単な準備の後、一人一人テキストを上演していただきます。きっと沢山の役に立ちそうもないテキストが蓄積していくと思います。でも、その残骸の上にふらつきながら立ち、言葉を発することが僕は「演技」であるという気がします。

日程|所要時間4時間
6月22日㊏15:00〜
6月29日㊏15:00〜

会場|サロン梅の湯

石原朋香『乗る場合唱部』

円盤に乗る場を拠点に、合唱部を結成することにしました。 前に乗る場で歌を練習していたら、地域の人が覗き込んできて交流が生まれたからです。 今回は、俳優などの演劇人の他に、絵を描いている人、音楽やってる人、さまざまな肩書きのメンバーが歌を介して集います。 懐かしい合唱曲から寺山修司の作詞曲まで(!)バリエーション豊かなセットリストで演奏します。 通りがかりの皆さんも、一緒に歌ってみませんか?

日程|上演時間15分
6月22日㊏ 13:00〜
6月22日㊏ 17:00〜

会場|旧小台通り防災スポット


円盤に乗る派
カゲヤマ気象台を代表とし、2018年にスタートした演劇プロジェクト。日常生活の中の「自由さ」と「豊かさ」を損なうことなく劇場に立ち上げる作品を追求すると共に、その方法を集団のあり方にまで拡張し、「複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所」を目指す。現在のプロジェクトチームはカゲヤマの他に日和下駄(俳優)、畠山峻(俳優)、渋木すず(アドバイザー/ウォッチャー)の4人。 劇場を訪れ、帰っていくまでに体験する全てを「演劇」として捉え、雑誌の発行、シンポジウムの開催など、上演外の取り組みも積極的に行う。2019年より演劇とよりシームレスにつながるためのコミュニティ「円盤に乗る場」を運営中。

石原朋香
1996年東京都生まれ、北海道育ちの俳優・パフォーマー・デザイナー。 これまで俳優として、ロロ、青年団リンクやしゃご、かまどキッチン、theater apartment complex libido: 等の舞台に出演。また、自らが構成・演出・出演を兼ね、ダンスと演劇の間のパフォーマンスを創作。主な発表にDance×Scrum!!!2020ホワイエプログラム『ガラスの音、まくの中、消えては浮かぶキャンパー』など。近年は劇場以外でのパフォーマンス創作、演劇ワークショップのファシリテーター等、劇場を飛び出して積極的に活動中。

『NEO表現まつりZ­ –技術開放!芸術家たちがなんかやる!!』
会期|2024年6月21日(金)〜6月30日(日)

『NEO表現まつり』は2023年、アトリエ「円盤に乗る場」のメンバーが中心となって、東京・荒川区の西尾久エリアにて開催されました。アーティストによるいつもとは一風違った表現≪NEO表現≫を多数展開した『NEO表現まつり』は、多数のメディアに紹介されるなど大きな反響を呼びました。

そして2024年、よりパワーアップした『NEO表現まつりZ』となって帰って来ます! 同じ西尾久エリアを中心に、個性の異なる5種類の会場をご用意。ステージパフォーマンスやワークショップ、分類不可能なものまで、あらゆる表現が展開されます。

今年のテーマは「技術(ギジュツ)」。アーティストが日々アトリエで磨いている「技術」は、普段は作品の奥底に隠されています。しかしそこには、あっと驚く発見や思わず「自分も表現したい!」と感じてしまうような「何か」があるはず。それを掘り起こして、みなさんの前にお披露目します。

ここにしかない体験にあふれた6日間、あなたも未知に出会いに来ませんか?

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円盤に乗る場

¥500 / 月

演劇プロジェクト「円盤に乗る派」が運営する共同アトリエ「円盤に乗る場」情報ページです。詳細はhttps://note.com/noruha…

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