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異世界への入り口

違和感が矛盾となり
矛盾が歪みとなり
歪みが亀裂となり
いつしかそれは
破裂する

終末論のような事が
起こるなんてそうそうない
個人的な危機が起こるくらいである
激動の時代がこれからやってくるという事もない
すでに毎日が激動のなかでかろうじて生きているのだから

恐怖をあおる人間に注意せよ
恐怖は常に我々の身近にあるものなのだ
世界に夜明けがやってくる
同じように
世界に夕暮れもやってくる
我々が朝日を浴びている頃
星空を眺めている者達もいる
黄昏の世界を生きていたとしても
私達の世界に変わりはない

世界中に横たわる何気ない狂気が
大きなうねりを持って世界を駆け巡る
世界中に潜んでいる何気ない不幸が
モニターの中に外に溢れている

闇夜の静寂に包まれ
純白と漆黒が支配する世界で
私は言い知れぬ不安と恐怖に縛られている

口に運んでいた缶詰の焼き鳥も無くなり
白湯の湯気はもう立ってはいない
日付はもうとうに過ぎている
布団に入れば長くて短い「もうひとつの夜」が始まる

朝が来るのは怖いが
一分一秒を留め置く術を私は知らない
時を戻す術が無い事はもう悟った
この体の震えと
こわばる心をどう鎮めようか

深い闇に飲み込まれそうな程怖ろしい夜がきて
私は眠気に抗いながらもなす術なく飲み込まれる
日の光に焼かれそうな程煌々とした朝が来て
私は眠気に抗いながらもなす術なく放り出される

それは毎日繰り返され
それは私を悩ませる
時よ止まれと呟いたとて

こんな月夜の晩に思い浮かべるのは、
餅つくウサギでもなければ狼男でもない。
こんな夜に聞こえてくるのは、
「ヒョーヒョー」という不気味な鳴き声である。
声の持ち主は、
猿の顔、タヌキの胴体に虎の手足を持ち、尾は蛇だという。
その物の怪を「鵺(ぬえ)」と呼ぶ。

平安時代にその物の怪は現れたという。
毎晩のように黒煙と不気味な鳴き声を響かせ、時の天皇・二条天皇は病の身となったのだとか。

いまの時代のわが身に重ねる。
目には見えない不安と恐怖の中で、
先行きもままならない。
心を落ち着かせようにも「ヒョーヒョー」と不気味な鳴き声が止む事はない。

鵺が現れたのかもしれない。
得体のしれない物の怪が、現代の世の私の身にも現れたのかもしれない。
平安時代に現れた鵺は、弓の達人である源頼政によって退治されたとされている。
残念ながら私は、その妖怪を退治する術をまだ手にしていない。

鵺の鳴く夜は
底の知れない不安が己を支配する
こうしている間にも
百鬼夜行が通りを歩いているのだ

朝日を浴びる夜光虫
昼間に見える天の川
太陽を跨ぐ虹
夜に開く花びら
闇夜を舞う蝶

起こり得ない時に在り得ないモノがいる

日常に潜んだとしても気付きにくい怪異が
今日もどこかで起こりうごめいているのか

魂とはなんだろう?
命の数だけあるのだろうか?
体の数?
それとも自我の数?
それは燃え上がるものなのだろうか?
だとしたら
私の中で消えかかっているものがそれなのだろうか?

竹から生まれたかぐや姫は、
美しい女性へと成長し、
月へと帰っていきました。
多くの日本人が、
古来より月を愛でるように、
私も月を肴に酒を呑める日が来るのだろうか。


夜の世界と昼の世界
夢の世界と現の世界
ふたつの世界を行き来する昼夜の旅人
枕が通い路
夜は夢の始まり
朝は現実の続き
どちらにも留まる事は出来ない
どちらにも行かなくてはならない
そうしてだれしもが巡り巡る
だからこそ日は眩しくて
だからこそ夜空は輝く

願いとは裏腹に
夜が明け始める
空が明かりを取り戻し
昨日が終わりを告げる
部屋はまだ暗いまま
夜明けに抗い続けている
薄いカーテンで守れるものはなく
淡い光と雑踏と
外の空気が朝を告げる
私はそれでも抗い続ける
薄い布団を頭から被り
時よ経つなと抗い続ける

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