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理解
人間同士が理解し合えるだなんて、幻想だ。
それを誤ると、哀しい結果を招いてしまう。
あなたと私が違うように、
あなたの見ている世界と私の見ている世界は違うのだ。
寂しい事だが、それが現実のようだ。
私達は皆、孤独なのだ。
それでも誰かと寄り添いたくて、言葉が生まれ歌声が響く。
私の言葉が誰かを傷つけてしまったとしても、
私の行動が誰かを悲しませてしまったとしても、
愚かな私は気が付かない。
みな離れていって、
独りになって、
ようやく気が付くのだ。
気付いた時にはもう手遅れだ。
失ったものは還ってこない。
失ったものを悔やんでも、
還ってくることはないのだ。
無いものは無い。
時を戻す事は出来ぬのだ。
今あるものに、
目を向けるしかないのだろう。
何も残っていなかったとしても。
過去を振り返れば後悔しかなく、
未来を見通せは不安ばかり。
現在(いま)の私はただ立ち尽くすのみ。
何も見えない。
何も聞こえない。
目を閉じ耳をふさぎ、
どうする事も出来ずにいる。
その人の苦しみは、
他の誰にも理解できないだろう。
その苦しみは、
その人だけのものだからだ。
皆、そうだろう。
私だってそうだ。
一方で、
誰かに理解して欲しいという願望もある。
救ってもらえるなら、すがりたい。
そうでないなら、
冷やかしにしか映らない。
私は所詮、身勝手なのだ。
無知からくる無理解か、
傲慢さからくる思い違いか。
心無い言葉が誰かを傷つける。
無知であるがゆえに、愚かであるがゆえに。
意図的な言葉が相手を傷つける。
それは悪意なのか、怒りなのか。
心であろうが体であろうが、深く傷はつく。
顔の見える相手であろうが見えない相手であろうが。
私が不意に誰かを傷つけたとしても、
その事に私が気付くことはないかもしれない。
それはお互いにとって不幸な事ではあるが、
世の中の理不尽さを思うと在り得る話だ。
受けた傷は癒える事なく残り続けるが、
己の刃が付けた傷をひとつひとつ数える事は無いからだ。
できたら誰かの笑顔を見ていたい。
みんなの笑顔が見れたなら、
私もきっと笑顔になれる。
そうして、笑顔が笑顔を呼ぶのだろう。
みんなの笑顔と楽しい話で、
酒はきっと美味くなる。飯も美味くなる。
最高の晩餐になるだろう。
ユーモアもセンスも魅力もなにもない、
そんな私への興味は一過性のものだろう。
いつか忘れられる日も来るだろう。
独りになった私は、その時なにを思うだろう。
でもだからこそ、
今この一瞬を大切にできたら良いと思う。
この時この瞬間は、ここにしかないのだから。
私の相手をしてくれる優しい人達に、
心からの「ありがとう」を。
望んではいけないと思っていた心遣いに、
感謝を表せたらと思う。
こんな私に声を掛けてくれて、
楽しい話を聞かせてくれて、
沢山の元気を分けてもらえて、
本当にありがとう。
もらったものは大きくて多い。