落語家はアカデミー賞を超えると思う
私の通っていた中学校には落語研究会いわゆる「落研」があった。
大学ではよくあるサークルだが、中学校にこの落研があるのはめずらしいのだろうか。
当時(今のシステムはわからないが)、中学校では課内クラブと課外クラブがあった。課内クラブは授業の一環で必須科目、一方の課外クラブはいわゆる部活で参加は自由だった。落研は課内クラブに属しており、学芸発表会(学芸会と文化祭の中間のような行事)でお披露目をしていた。私は参加はしていなかったが、先輩が落研だった。その先輩は部活動ではテニス部の確か副キャプテンをしていて、成績がよかったように記憶している。見た目は小柄な先輩だったが、体育館のステージでは着物を着て「まんじゅうこわい」か何かを演じていた。すごく面白かった。
父も落語が好きだった。日曜日に演芸番組で落語をやっていると楽しそうに観ていた。テレビが一家に一台の時代だった私は、仕方なしに父の横で落語を観ていたが、その面白さがいまいちわからなかった。しかし、中学に入り、落研を知り、先輩たちの落語を聞いているうちにその面白さがわかるようになっていった。
今から20年近く前に「タイガー&ドラゴン」というドラマがあった。
ご存知の方も多いと思うが、ざっと説明するとこんな感じだ。
幼い頃の出来事から、笑うことがなくなったヤクザがいた。彼は借金の取り立て屋で取り立て先はある落語家だった。
ある日、ヤクザは落語家に借金を返すように迫った。しかし落語家は取り立て屋から逃げるようにそのまま高座へ上がる。ヤクザは逃がさないために客席からその落語家を見張る・・・はずが、いつしか落語家の噺に引き込まれ魅了されてしまう。ついには落語家に弟子入りをし、一人前の落語家を目指すのだが・・・という物語だ。
このドラマがきっかけで落語が好きになった人も多いのではないか、というくらい古典落語を楽しく表現している。もちろん邪道だ、という人もいるかもしれない。でも私はこの作品が好きだし、脚本家の宮藤官九郎も大学で落研だったらしいので、思い入れがあった作品だったのでは、と勝手に思っている。
ヤクザに弟子入りを迫られる真打の落語家を名優である、西田敏行さんが演じている。日常のちょっとした仕草が本当に上手い、名優中の名優だ。が、落語というものは、演技の上手い役者さんでもそうそう演じ切れるものではない、ということをある人の登場で大いに感じた。その人とは、その落語家に金を貸したヤクザの親分を演じた笑福亭鶴瓶さんだ。そのヤクザの親分は「共に落語家を目指していた大学時代からの友人」という設定。西田敏行さん演じる「林屋亭 どん兵衛」の代わりに高座へ上がる場面があるのだけど、その演技はもう演技ではなく、落語家そのものだった。
日本アカデミー賞をはじめ数多くの賞を受賞している西田敏行さんだけど、
このドラマでは笑福亭鶴瓶さん演じる落語家には及ばなかった。
落語家の演技というものは、想像以上にものすごく素晴らしいものなのだ。
先日生落語を観る機会があった。
立川談笑師匠の落語だ。縁あって直接お会いしたこともあり、とても気さくな人柄に惹かれ、あっという間にファンになった。
その師匠がとある企画で少人数を前に落語を演じることになった。
その貴重な場に参加できることになったのだ。
そしてそれがこのたび本になる。
え?DVDじゃなくて?CDじゃなくて?
はい。本です。BOOKです。
落語家の演技がアカデミー賞を超えることを体験してほしい。
今年のハロウィーンは落語です。
HAPPY RAKUGO!!
いただけるなら喜んでいただきます。