【前編】乳牛のライフサイクルとは?ノースプレインファームの⽜について
皆さんこんにちは。ノースプレインファームに入社して2年目の内山と申します。普段は乳製品プラントで製造を担当しています。
本格的に暑くなってくるこれからの季節に飲みたくなるものといえば、、そう、やっぱり牛乳ですよね!
いまノースプレインファームの牛たちは放牧の真っ盛り。ガツガツといった雰囲気でもりもりと牧草を食べる牛たち。牛たちの食欲に負けないペースで牧草もぐんぐんと育っています。
この時期の水分を多く含んだ青草を食べた牛たちのミルクはすっきりとしていて、とっても軽やか。夏場の喉の渇きには"おこっぺ有機牛乳"をぜひ飲んでいただけたらありがたいです。
ところで先日、そんなノースプレインファームの農場で子牛が産まれました!毎月5頭ほど子牛が生まれているので珍しいことではないのですが、やはり生まれたばかりの子牛はかわいいものです。
しかし、このかわいい子牛がどのように成長し、出産をし、乳を出すようになるのか、みなさんはご存じでしょうか?
今回は道坂農場長の説明をもとに、"おこっぺ有機牛乳"をはじめノースプレインファームの乳製品の生みの親である牛たちが、日々どのような生活をしているのかについてご紹介します。
牛の呼び方について
人にも、幼少期、若者、大人と年齢によって呼ばれ方が変わるように、牛たちにも成長段階に合わせた呼び方があります。
ノースプレインファームの農場には97頭の牛が飼育されているのですが(6月10日現在)、そのうち出産を経験したことのある牛(経産牛)が53頭います。
経産牛のうち乳を搾っている牛(搾乳牛)は48頭で、搾乳を終え次の分娩に備えて体を休めている牛(乾乳牛)が5頭います。
経産牛以外の生まれたての子牛から、受精が済んで初めての分娩の準備をしている牛までを育成牛と呼びます。そのうち、哺乳をしている子牛を「哺乳牛」、初めての妊娠をしている牛を「初妊牛」と呼び区別しています。また、市場に出荷されていく子牛は「初生牛」と呼んでいます。
ノースプレインファームの牛の種類
まずは、ノースプレインファームで見ることが出来る牛を紹介いたします。そのほとんどがホルスタインという品種です。
彼女たちの一番の特徴はその泌乳能力の高さ。他の品種に比べて短い期間で牛乳をたくさん生産することができ、一般の酪農家さんでは一日に20~30Lを搾ることが出来るそうです。
ちなみに、同じ乳用種でもジャージー牛の生産量はとホルスタインの2/3ほどとのことです。ホルスタインの乳は脂肪率が比較的低いことも特徴で、すっきりとした味わいのミルクをつくり出してくれます。
オランダやドイツ原産のホルスタイン、乳肉兼用種ですが、ほとんどの方が酪農と言ったらホルスタインを想像するほどに日本ではとてもメジャーな乳牛です。乳量が自慢でも、ノースプレインファームにいる牛の乳量は北海道の平均的なホルスタインの2/3ほどで、一日平均で約18Lです。
これは、栄養価が高い濃厚飼料や配合飼料を与える量を一般の酪農家さんよりも控えめにし、有機JAS認証の牧草を中心とした餌を与えていることが大きな理由です。
毛色は白黒模様の牛が多く有名ですが、実は白と赤茶の柄のホルスタインもいて、レッドと呼ばれています。
ノースプレインファームでは、ホルスタイン以外にもMRIという品種とホルスタインの血統が混ざった牛を5頭だけ飼っています。
ホルスタインとして認めてもらうにはホルスタインの血統が1/4以上でなければならず、この5頭はこれを満たしていないのでホルスタインとは言えず、MRIのハーフやクォーターと農場内では呼ばれています。
このMRI種は、一般的な酪農家さんの牛舎ではめったに見られません。MRIは、乳用牛のように利用するのに十分な量や成分の乳を出しますが、さらに肉用牛のような肉付きの良さも兼ね揃えている乳肉兼用の品種です。
乳と肉をバランスよく生産できる牛はあまりいないようで、例えば和牛とホルスタインの掛け合わせた場合でも乳はほとんど出ない品種になってしまうことが多いそうです。
こちらの品種の原産地もオランダで、飼われていた場所を流れる川の頭文字に因んでMRIという名前が付けられています。
なぜそんな珍しい品種の掛け合わせの牛がいるのかですが、ノースプレインファームでは20年ほど前まで、乳製品の製造だけではなく自社の牛を使った肉製品の製造も行っていました。
当時、乳製品用の乳を得るだけでなく肉製品用の肉の歩留まりを高めてこの二つの生産性を両立させようとしていました。そんな時に白羽の矢が立ったのが乳肉兼用種のMRIだったそうです。体格が良く放牧向きだったのもその理由です。
実際に農場に導入はされましたが、肉製品の製造をやめてからはMRIの血統をホルスタインなどの血統で薄めていくことになり、今は5頭のMRIのハーフとクォーターが農場に残っているだけとなっています。当時飼育していたMRIのカタログを道坂農場長が見つけてくれました。
写真を見る限り確かに乳房がはっきりしていますし、脚や胴がふっくらとして肉付きがいいように見えます。乳については乳量はホルスタインに比べると少なかったようですが、乳質はホルスタインとあまり変わらなかったそうです。脂肪とたんぱく質の量がホルスタインよりも若干多く含まれていたそうです。
現在のハーフやクォーターの子たちも乳量はホルスタインの純血よりも若干少ないようです。純血のMRIは体ががっちりしており、性格が穏やかで、病気が少なく、長生きで健康的な子が多かったそうです。
牛たちのライフサイクル
さて、ここからはノースプレインファームで生まれた子牛たちがどのようにして成長していくのかについて見ていこうと思います。
●哺乳期(0~2カ月齢)
農場のスタッフに手伝ってもらって生まれた子牛は母牛の元から受け取られ、若い育成牛が集まる哺育舎と呼ばれる牛舎に運ばれます。そこで生まれたての子牛は一頭ずつ個別のゲージに入り丁寧に世話をされます。
生後5日間は実母の初乳を与え、6日以降は母親に限らず搾乳牛から絞った乳を温めて飲ませます。市販の粉ミルクは与えていません。これは、粉ミルクは栄養価が高く成分が安定していて、生乳よりも安価なのでメリットもあるのですが、有機牛乳を生産するうえでは市販の粉ミルクを子牛に飲ませることはできないルールのためです。
粉ミルクだと1.5カ月ほどで哺乳期間を終了できるのですが、ノースプレインファームでは2カ月以上かけてゆっくりと体を大きくしていきます。哺乳用ミルクに余裕のある時には、育ちの遅い子を試験的に最大3か月ほど哺乳で育てることもありました。
生まれたばかりのこの時期に一番気を気つけなければいけないことは、子牛に下痢をさせないことだそうです。体重は約40キロで生まれてくる子牛ですが、まだ体力がなくお腹も崩しやすく、下痢を長引かせてしまうと弱ってしまい、元気になったとしても食べる能力が伸びずに体が大きくなりにくくなってしまいます。
特に初乳から、母親以外の乳も混ざった乳に切り替わるときや、農場スタッフの哺乳担当者が変わるときが、成分や与え方、哺乳担当者のもつ菌の変化などが原因となってより下痢を引き起こしやすいのだそうです。
赤ちゃん牛の大敵の下痢を防ぐために、農場のスタッフは子牛の体温には気を使います。温かいベストを着せてあげたり、ミルクを温めてから与えたりし、冷えを防いだり尿を染み込ませやすくするためにゲージの中には藁を敷き詰めておきます。
ゲージ内も清潔を保ち、もし体が弱っても早期発見・早期治療ができるよう体調の変化を注意深く観察します。
生まれた子牛がオスの場合は、現在は1~2週間で市場に出荷しています。
将来的にはオーガニッフビーフにできればと考えています。
●初めての集団生活(約2カ月~10カ月齢)
2カ月間の哺乳期間を終えたら、同じ哺育舎内で柵で仕切り、月齢の近い少しだけ年上の牛たち3~4頭のグループに合流します。ここからは、個別の餌の世話はなくなり、グループにまとめてどっさりと牧草を与えられ、自分の力で食事をしなければいけなくなります。
グループに送り込まれることは管理面の理由もありますが、社会性や競争力をつける意味合いが大きいです。
2カ月ほど掛けて体が大きくなってきたら、より体が大きいグループに移されていきます。
このような小規模のグループでの集団生活を10~12カ月齢まで行います。雪のない季節には、将来に備えて小さめの面積の放牧地に放し、哺育舎の外の世界に初めて出会い、そこで電柵に触れてみるなどの放牧の練習も経験します。
●育成牛(約10~16カ月齢)
12カ月間哺育舎で体がある程度大きくなり、競争力や協調性などを身に付けた育成牛は、家畜車に乗って10分ほど離れた興部町内の宮下地区にある育成舎に運ばれます。ここで4~6か月ほどを過ごします。
雪のない放牧期間中は、月齢や体格に関係なく約30頭の牛が一緒になり、広い放牧地に放され本格的な放牧と集団生活を経験します。放牧のできない季節は近い月齢で3頭程度のグループに分けて牛舎の中で過ごします。育成舎は小高い丘の上にあり興部町内を一望できます。
この宮下地区の育成舎はノースプレインファームが自社の育成牛を飼養するための施設ですが、北海道の多くの市町村では、10~20カ月齢の育成牛を預かってくれる公共牧野があります。興部町内にも北興牧野という場所があり、育成から最初の受精と妊娠鑑定までを行ってくれます。
ノースプレインファームでもかつては預けていたのですが、有機牛乳の認証を受けるために、現在ではすべての育成牛を自社の育成舎でお世話しています。
さて、今回の記事では牛の育成までをお話しさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
次回の記事(6/27更新予定)ではここから先の牛の妊娠、搾乳…そして牛は最後どうなるのかというところまでお話ししたいと思います。
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