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生きてるっ!~偶然の出会い編④

雪山で出会った女子

20代も半ばに差し掛かる頃、フラフラと彼女や友達の家に住むことが限界となり、住むところが無くなった僕は、ある冬のシーズン、雪山のホテルで働いていました。

そこは外資系のホテルで、同僚の名前や上司の名前は主にファーストネームやニックネームで呼び合うようなホテルで、国籍や年齢、本名などはよくわからない人たちが集まる職場でした。

他のアルバイトよりも早い時期に働き始めた僕は、外国人上司の部屋の片付けなどもこなす、雑用係としてもいいように使われていました。

雪が深くなるにつれて、第2陣、第3陣、短期とアルバイトが日々増える中、ある日現れた同年代の女子に奇妙な親近感を抱きます。なぜかはわからない、とても奇妙な親近感です。

彼女の名前は、RINA(リナ)でした。(日本人です。)


「あの二人、似てない?」

しばらくすると、他のスタッフ達が話している会話を耳にします。

「あの二人、似てない?」

そう。僕とRINAが似ているという会話でした。

「そうか。女の子だけど、自分に似ているから、親近感があるんだ。」

と妙な納得をしたことを憶えています。


履歴書の氏名欄

ある日、外国人の上司に指示をされ、彼の部屋の掃除をしていた時、ふと机の上にある履歴書の束をみつけました。

その一番上にあった履歴書が目に留まりました。見ようと思った訳ではなく、目に入ってしまいました。その履歴書の氏名欄には「シロオシ リナ」の記入がありました。それは、RINAの履歴書でした。

「シロオシ」の名字を見た瞬間、「んっ?」と思いました。日本人なら誰でも読める漢字ですが、少しだけ珍しいタイプの名字でした。

それは、僕には馴染みのある、母の旧姓でした。

ある特定の地域に多い名前である事を認識していた僕は、興味本位からこっそり住所も見てしまいます。

その住所は、母の故郷である、関東に近い東北の決してメジャーではない住所が書かれていました。というより、母の故郷の住所が書かれていました。

その場所は、字(あざ)のつく、シロオシ村でした。

ふたりが似ているという事が僕も含めて皆の共通の認識となっていた事もあり、

「もしかしてRINAって親戚???」と考えたのは、言うまでもありません。


ミカンの缶詰

その後僕は、RINAの観察を始めます。とても働き屋さんの彼女は、他のスタッフに比べパワフルに真面目に働いていました。その横顔を見るたび、ますます親近感を覚え、自分の家族や、いとこの顔と比較をしました。

「やっぱり親戚ではないか?」という思いが募り、とうとうRINAに話し掛けます。


「ねぇ、RINAの名字って、シロオシだよね?履歴書を上司の部屋でみちゃったんだ。」

そういう僕に、「そうだよ。」と答えるRINA。


「地元って、○○県のシロオシ村?」

そういう僕に、「そうだよ。」と答えるRINA。


「ヤスコ(母の名前)って親戚いない?」

そういう僕に、「母親から聞いた事があるよ。」と答えるRINA。


答え合わせを繰り返しました。


そうです。親戚であることが判明します。


具体的にいうと、同じ曾祖母から生まれた、姉(僕にとっての祖母)妹(RINAにとっての祖母)の娘(母親同士がいとこ)から生まれた子供、


「はとこ」ってやつでした。そりゃ、顔も姿も形も似る訳です。


両親ともに親戚付き合いの希薄な我が家で育ち、疎遠となっていて、その存在も名前も知らない親戚同士が出会った瞬間でした。

その後たくさんの会話をし、今でも付き合いがあるRINAですが、とても印象に残っている会話があります。


「風邪を引いた時、母親に何を食べさせられた?」というものです。


二人同時に出した答えは、「みかんの缶詰」でした。


曾祖母から始まる女親の歴史は、僕の世代に至るまで、

「風邪を引いたら、みかんの缶詰。」の普遍を教えてくれました。

数代に渡る母親の愛情や、一族の繋がりを感じ、嬉しかったことを憶えています。


おまけ

その後、RINAの弟君と初めて会った時、テーブルの上には、僕と弟君、同じ銘柄のタバコが並びました。

「パッケージが銀色でかっこいいから。」

同じ理由で僕もその時期、そのタバコを吸っていました。

コレホントウノオハナシデス


おわり


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北乃 扉
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