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【創作考察】元祖厨二病を真面目に分解してみた
久しぶりにノートを更新したので、記念にいつか載せようとしていた2018年ごろの話を書いてみる。
創作の礎である元祖厨二病が誕生したのは約20年前。こいつを真面目に分解することにした。当時の心情を考察する試みであり、妄想力を見直してみる。
理想と現実の狭間で
厨二心に目覚めた人が誰もがやるであろう、ある日チートな能力を手に入れて俺Tueeeeな妄想。いわゆるメアリー・スーの生成だ。
私自身もそんな俺Tueeee!!めっちゃハーレムぅ!!なものを妄想して生きてきた過去がある。冗談ではなくホントに現実逃避そのもので、麻薬のような中毒性を持っていた。
いつしか妄想は現実世界の自分自身を蝕みはじめ、メアリー・スーが現実の私を隠し、あまつさえ消すようになっていった。
度を超した妄想は「自分はこんなこと簡単に乗り越えられるはずなのに、どうしてできないんだ」というギャップを生み、心の拠り所にも苦しめられた。
俺Tueeee妄想は良い薬ではあるが、自分がこの現実に生きている意味や価値が分からなくなっていく劇薬である。
今となってはメアリー・スーは消え、彼女が動く世界は黒歴史の一角に刻まれ、創作の礎となっている。
妄想の発端
近所のデパートで流れた迷子のお知らせをそのまま自分の容姿にして、金を寄越すから連れてこいという内容に変える。
自分は襲いくる人たちをばったばったと返り討ちにする。
以下、『自分』を『メアリー・スー』と呼ぶ。
…いわゆる中学生男子が授業中に妄想するような、教室にテロリストが現れて自分が華麗に返り討ちにするというもの。
メアリー・スーの定義:
定義はさまざまあるが、私の中では
「作者の理想をありったけ注ぎ込み、仲間キャラクターの活躍の場を喰うキャラクター。または作者自身がこうでありたいという妄想を詰め込んだ作者=主人公なキャラクター」
としている。
派生していく妄想
・ある日突然PSIの能力に目覚め、様々なことをしでかす。超能力はもちろん、テレポーテーションもでき、身体能力も向上する。なぜか絶対取れない腕輪をつけられるし利き手も変わる。
・日に日にゲームのキャラクターに近づき、能力もキャラクター相応になっていく。
上記2つは前後する
→後付けされた目覚めのきっかけが(赤い)雷に打たれたこと。
PSIどころか容姿が日に日に美化。耳に入った外国語が自動的に翻訳、相手の言語に合わせて発せられる言語も変わる。常時翻訳こんにゃく状態の能力も得て、文字も勝手に変換されて読める。
メアリー・スーの通う学校まで悪の組織かなにかが現れ、命を狙われるようになる。
校長室で匿われ、ある日突然能力を持ってしまった人が集まる場所が海外にあるよ的な話をされる。
・己がキャラクターになって戦うパターンの話
日本を離れる前に2人の護衛が付く。
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なんかしらあってアメリカのような海外に到着。E3の会場というよりもサーカス的な場所に連れられるが、そこで同じようにキャラクターとなった人に助けられ、一緒に脱出する。
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・生身で戦うパターンの話→後期はこちらが主流
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同じ境遇の仲間がいるという秘密結社的な家を訪れる。しかし仲間は悪の組織に捕まっており、メアリー・スーも捕まるものの、華麗に捕縛から抜け出して仲間を助けた。自分が変化できるキャラクターが実体化し、以降お供になる。
絵で表現されていたもの
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悪の組織の部下に対峙するも、剣を構えてキッと睨みつけるだけ。(当時の画力が貧弱だったこともある。頭の中ではゴリゴリ殺陣をしてた)
悪の組織を根絶するために奮闘しているわけでもなく、困っている人を助けるわけでもなく、「オレらすげぇや」な、楽しげな日常をひたすら描いていた。
・自分に降りかかる危機の訪れ:
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こんな話ができてしまったんだろうか
メアリー・スーが悪の組織に攫われると世界が終わるらしく、一度は悪に取り込まれたものの、味方に殺されることで一度幕を閉じた。
そして神によって4年後に生き返るというチートっぷりを発揮する。
・当時の心情とは:
単純に元に戻りたくない世界があったから。「自分はもっとできる」という幻想にも取り憑かれていた。
実際、チートな能力や外見の美化が悪の組織の策略によって失われ、仲間内で混乱するという流れがあった。
しかし、この部分を描いただけでどうやって元に戻したかという部分は妄想することもなかった。
悪の組織側で話を展開させてみた
「今までの自分から変わりたいか?」
「今の自分を殺してやりたいか?」
そうやって私は不幸な顔をした人間達に赤い雷を落としては問いただした。
今回は手違いで別の子どもに雷が当たってしまったがまぁ構わない。
「変わりたい……」
なんとまぁ雷に打たれたのは娘らしかった。女に撃ってしまうのは初めてだが、質問は変えなくてもいいだろう。
「君の好きなキャラクターはなにかな」
「……その人は、私の生きる希望」
これは意外だ。てっきり可愛いキャラや美形キャラを言うと思ったが……モノ好きな娘もいるもんだ。
どうしてそんなコト聞くの? と言われたが、ただの質問だと答えた。
もうじき起き上がるだろう。そして、明日になれば娘の心の底にある理想の自分が目を覚ます。
……ホントにこの悪の組織さんは何がしたいのか分からん。目的が不明瞭すぎる。
設定を練ろうにも、世界観がもろ現実世界そのものだからやりづらさがすさまじい。今やってる世界観を持ってこないと無理だ。
この段階じゃただの良いやつにしか思えんわ……いっそのことデウス・エクス・マキナ的な神を味方側にすればいい話だがなぜ悪役側にした、当時の私。
机の奥にしまったままの公式設定資料を引っ張り出して並べてやった
・赤い雷に撃たれて、悪に走っていない者は秘密結社の隊員となれる
・印(証)として腕輪を付ける。これを隊員以外の者に見せると心が乱れる
・秘密結社の隊長は、そのひとが持つキャラクターの知名度で決まる。
……かなり理不尽。どんなに優秀でもマイナーキャラだったら就けないという事態が起きるだろう。
・悪の組織× 暗影(くらかげ)○
『この世界から正義を消し去ろうとする悪の集団。人々の闇に乗り移り悪事を働く。「赤い雷」を作り人々を惑わすことに成功。』
やっぱり雷は相手側が作ったんじゃないですかヤダー!!
『それをとめることが本来の目的』
うっそだろお前!?
・雷に打たれるとどうなるか
1.気を失って夢の中で質問される
2.夢から覚めるとカラダに異変が起きる(言語が変わる・PSIが使える等)
3.さらに自分が夢の中で指定したキャラクターになってしまう。これは気を集中していれば、いつもの自分を維持できる。ついでに暗影にも狙われやすい時期。
4.数日経つと、キャラクターの半強制変化が治まり、小さなキャラクターが自立して動き出す。この時点で悪事を働くと暗影のメンバーになってしまう。
・キャラクターの立ち位置
自分がこうだと思っているキャラクターが、そのまま自分のパートナーとして心に宿る仲間。常に近くにいて守ってくれたり一緒に戦ってくれる。
半径100kmの範囲から主がいなくなってしまうと魂が抜け眠ってしまう。
主が死んでしまうとキャラはもといた場所に戻り、次のパートナーが自分を選んでくれるまで眠り続ける。
前設定は「自分自身がキャラとなって戦う」「自分の心(腕輪)に宿してその力で戦う」
・主人公たちの職業
裏なんでも屋。電話1本、テレパシー1回で世界中のどこでも行く。
公式設定を踏まえて
善神と悪神がバトッてる感じでいいんじゃないか。神いるし。
雷を落とすのは悪神で、雷に当たった人間の理想像を現実とさせているんじゃないか。で、能力持って調子乗った人間に悪事を働かせ、悪の心を増幅。仲間を増やす…だろう。
善神が悪神をぶっ倒すために、能力を悪用しなかった人間の味方に付いて、さまざまにサポートしているのだろう。
そう考えないと無理。神なんているわけねぇだろタコすけ! と突っ込まれてもなにも言えない。そういう世界観なんで許してとしか言えねぇ。
元祖厨二病から考える、オリキャラの源流
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学生時代に判明した元祖厨二病と現在の創作の共通点。
それはキャラクターの見た目が変わっても、中身がほとんど同じだったというもの。
・メアリー・スーに完全に喰われて空気キャラなイケメンはアレンに
・たばこ吹かすオッサンキャラはディランに
・可愛らしい少年キャラはダニエルに
と、その立場が変わっていた。このキャラクターたちの性格を分解すると、
・活発でやかましいときもあるけど仲間思い
・冷静沈着で、やかましいのといつもケンカしてる
・おっとりしてるけどやるときはやる
という具合になる。
……そういえば、空気なイケメン、ヒゲのオッサン、かわいいショタも、性格が分かるような言動をしていない事に気づいた。
この3点は雰囲気だけらしい。
オッサンは美女を見て鼻や口から血を吹き出すみたいなキャラだし、ショタはとなりで頬を赤らんでるみたいなノリだし。キャラクターひとりひとりに性格付けしていないのが丸分かりだわ。
3人の言動が分かる資料が1つしか存在しないのが悔やまれるが、オッサンとイケメンは似たもの同士のやかましい奴らであることがわかり、イケメンに限ってはいきなりヤレヤレ系キャラが顔を出す。(常にそれを維持しろと…)
常に冷静沈着キャラはメアリー・スーで、おっとりキャラはショタと考えれば問題ない。
メアリー・スーがいなくても厨二病物語は余裕で動かせる。野郎がみんな一目惚れしたり、存在を神々しくさせたり、祭り上げることをしなければ、メアリー・スーもいちキャラクターとして成り立つだろう。
仲間に女子を加入させようと試みたが、嫉妬心が過剰に刺激されて叶わず、代わりに少年が追加された。
メアリー・スーは作者自身なのだから、タイムスリップしてその少年は女子にしろよと言っても聞かないだろう。もし、現在のように現実と創作を切り離すことができていたら、もっと早く創作の道に走っていたかもしれない。
ちやほやされたい、敬われたいという悲しい欲求が、惜しみなく注がれた元祖厨二病。これは巷で言われる夢女子というものかもしれない。