プロレス&マーケティング第28戦 「山崎五紀」に学ぶクラシカルという価値観。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロレスにおける「クラシカル」という価値観を考える。JBエンジェルス・山崎五紀という伝説の女子レスラーに学ぶ、プロレスの基礎とは何か。トップ画はhttps://qr.quel.jp/pv.php?b=426JvpN
ホテル戦国時代の最強戦略とは
今週号の東洋経済(2023年5月13日号)の特集は「ホテル富裕層争奪戦」と題し、アフターコロナで新旧ホテルがしのぎを削っている現状を分析しています。
その中で気になるページがありました。P53の「クラシカルは唯一無二の武器だ」という見出しで、ホテル・ニューグランドの会長兼社長の原信造(はら・しんぞう)氏のインタビューです。
ホテルにおける「クラシカルとは何か」には、具体的に触れていませんが、一つは昭和初期に建てられたという、文字通りのクラシックという価値です。
もう一つはホテルとホテルマンに求められる、普遍的な魅力とスキルです。
それはレストランのクオリティと、ホテルマンの接客スキル、ということになります。
原氏は、求める接客スキルの一つに、ホテルの歴史を説明できる能力をあげます。クラシカルホテルとは何か、を滞在客に説明できないとだめだというのです。
しられざる井上京子の悲劇
前回のプロレス&マーケティングで、私は「何事にも普遍的な価値がある」、などとぶったのですが、普遍的な価値とは、何のことはない、クラシカル、ということです。
では、プロレスにおけるクラシカルとは何か。それは基礎がしっかりできている、ということにつきます。
今、熱中している本があります。
山崎五紀’(やまざき・いつき)という伝説の女子レスラーの自伝「五紀伝(いつきでん)」という本です。
この本については、また後日書きますけれど、この本で最も感銘を受けた箇所が、今申し上げた「基礎がしっかりできている」とは何かの答え、だったのです。
それはこういう描写でした。
僕が考えるプロレスラーの基礎とは、「相手を破壊してはならない」。
口でいうと簡単ですが、これは非常に深い哲学を持つことと同義であり、それは一つのスキルといえると考えます。
プロレスの技は、まかり間違えると人を殺しかねません、それはリングでの死亡事故の数々が証明しています。
だからこそ、その技の威力、危険さを知ることが、プロレスラーには求められるのです。
しかし、山崎五紀はこういうのです。「しっかり受け身を取れるレスラーはほとんどいない」。
受け身は何千、何万回と繰り返して、はじめてダメージを分散する感覚が身につくのです。
デビュー間もない芸能人のレスラーを皆が激賞していますが、僕は本当のプロのレスラーは、その危険性を非常に危惧しているとみています。
プロレスラーを素質で持ち上げるような風潮は、危険極まりないのです。
井上京子にボストンクラブをかけた、そのガイジンレスラーは逆エビという技の本当の意味を知らないのです。
その前に、受け身をしらないのです。
山崎五紀が現役だった今から20年前の全女(全日本女子プロレス)は、未熟なガイジンと日本の女子レスラーがマッチアップされたことも多かったようで、技はおろか受け身もできないレスラーとマッチアップされた女子レスラーは、心底怖かったそうです。
基礎のないプロレスでは刺さらない
クラシカルとは「相手を壊さない心得」と申し上げました。それは、受け身がしっかり取れるようになることだ、ということなのです。
受け身が取れるようになって、はじめて相手の力量を量ることでき、相手を壊さずに勝負に勝つダメージを与えるワザを繰り出すことができるのです。
受け身が取れるとは、60分動き回って息が切れないスタミナがあることです。
試合開始のゴングがなって、手四つの状態で相手の特徴、長所短所を見極め、即時に戦略を描ける能力が身についていることです。
観客の熱気と、求めるものを感じ取れるセンサーができていることです。
山崎五紀の「受け身が取れるレスラーはいない」発言は、20年前の時代背景があるにせよ、今のプロレス界にも当てはまる、僕はそう感じています。
なぜ、プロレスが面白くないのか、それは基礎が出来てないレスラーが多すぎるから、ではないのか。
お前ごときがわかったようなことを言うな、そう叱られるのは承知ですが、「山崎五紀がそう言ってたよ」ということは、皆さんに伝えたいと思います。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
1.基礎がないと、お客さんにモノを買わせることはできない
商品知識の前に、身だしなみ、その前に誠実であるかどうか。
2.他者を傷つけてまで、自分が勝とうとすることは邪道
レスラー生命を奪うような危険な角度のバックドロップは、やはりおかしい。
3.接客の基礎、ベースの基礎ができているかは、指の動きでわかる
商品を出す時に、お客が見るのはネイル。というか、指がきれいかどうか。
プロレスラーも、技をかけられて起き上がってくる時のポジション取り一つで、実力がわかる。
キックアウトして(カウント2で弾き返す)起き上がった時に、四方八方に注意が払われている起き方をするのが、よいレスラー。
ちなみにねこっぱちの指使いは、セクシー。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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