ニクソン元大統領に学ぶ「政府と企業はサイバーでもリアルでも身代金は絶対に払うな」。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:ランサムウェア(デジタル身代金要求案件)に脅かされても、絶対に身代金を払ってはいけない理由。ニクソン大統領は偉大な大統領だった可能性。
リーダーの決断が国を企業を生かしも殺しもする
きのう、リーダーは公平であれ、などと言う話をしましたが、人事にせよ、なんにせよ、リーダーの意思決定が組織を、そして国を助けもしますし、滅ぼしもします。
その現代的な顕著な例が、デジタル・キッドナッピング(digital kidnappingサイバースペース上の誘拐)ではないでしょうか。
そうです、ランサムウェア(身代金要求案件)というやつですね。
「The Wall Street Journal2021年5月21日号は、「サイバーハッキングが心配?今こそ言おう、決して身代金は払うなWorried about cyberhack? Say now you’ll never pay ransom」、のタイトルで、データを人質にとった脅迫に決して屈してはならない、と警鐘を鳴らしています。
なぜならば、実際に身代金を払ってしまう国や企業が多く、それは重大な誤りだからです。
リアル誘拐とデジタル誘拐の違い
あんまり違いがないと言えましょう。
双方とも身代金を要求するのは同じですが、リアル誘拐は人間をもしくは囚人の釈放を人質にとり、デジタル誘拐は、データを人質にとるところが違います。
米国で最大の精製石油製品のパイプラインシステム、コロニアルパイプライン(Colonial Pipeline)は、1年前ハッカー攻撃され、身代金440万ドル((5兆6,577億円)を支払いました。
この額は今回、イーロンマスクがツイッター買収に払った額と同じです。
たしかに、テキサスからニューヨークを結ぶこの輸送路を往復するトラックドライバーたちは助かったかも知れません。
しかし、それは一時的な救済に過ぎず、長い目で見たらハッキリいって失敗なのです。
そう、コロニアル・パイプラインのこの決断は失敗です
「キミの家族が誘拐されて、身代金請求されたらどうする?払うだろ」前ロンドン・メトロポリタン警察の人質交渉担当主任のショーン・カニングさんは一見ものわかりのいいことを言います。
しかし、彼の言いたいことは、「一時の情に溺れて、大局を見失ってはいけない」ということです。
「政府と企業は、ランサムウェア(デジタル身代金要求)攻撃を受けたら、自爆せよ、つまりそのまま不利益を被っておけ」、と腹をくくる事を勧めています。
社会のために、身代金を払うべきではない、という信念です。
ニクソン大統領は実は偉大だった
2013年にアメリカの外交官二人がスーダンで人質にとられたことがありました。
新聞記者が、時のニクソン大統領にこう聞きました。
「ワシントンは外交官たちの開放交渉をするのか」。
ニクソンはこう答えたそうです。
「恐喝に屈するようなことはしない」。
結果的に外交官ふたりは殺されました。
しかし、ニクソンのこの決定は正しかったのです。
もし当時のアメリカ政府が弱腰だったら、また人質を取られて同じことをされ、また人の命が危険にさらされただろう、からです。
イギリスも市民が人質にとられても、身代金を払ったりしないのはアメリカと同じです。
ランサムウェアも全く同じ理屈です。
身代金を払ったら最後、犯人たちはかさにかかって、第二、第三のハッキング攻撃をかけてくることでしょう。
甘さ、弱みを見せたら終わりなのです。
会談の要求に応じても、ダメです。舐められます。
ランサムウェアの教訓
もはや、リアルでもデジタルでも、人や情報を人質に取られても決して身代金を払ったり、犯人と交渉してはいけません。
犯人はあなたの弱腰を見抜き、第二、第三の要求をしてくるでしょう。
そして、その弱腰は社会にとって益を産まないのです。
これから、世界の不安定化はどんどん進むでしょう。それに伴い必ず少なからず人質案件が出てくるでしょう。リアルでもサイバースペースでも。
でも、その際、身代金は払ってはダメです。人質解放交渉に応じてもいけません。
日本のリーダーの弱いところは、変に情にもろく、長期的、社会的、国際的な視野が欠けていることです。
自分たちの目先の利益だけを、優先してはなりません。
人質解放交渉に応じ、身代金を払ったら最後、またやられるだけです。
ウォーターゲート事件では、判断を誤ったニクソンですが、人質開放に応じなかったところを見ると、大所高所から判断できる能力があるリーダーではなかったか。
そして、政府も企業もリアルでもサイバーでも、人質をとられて脅されるような油断をしないことです。未然防止、これこそが経営の心得なのです。
今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では、また明日お目にかかるのを楽しみにしています。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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