今年、日本の最大の課題は「100歳時代に向けての社会改革」だ。
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:米最新研究「100歳が当たり前になる時代」が来ている。しかし社会制度、企業の人事政策、世の中の常識は変わってない。いち早く新しい環境に適合しないと、取り返しのつかないことになりかねない。
ダーウィン進化論の説得力
オカダカズチカ新日退団のnote記事に、ダーウィンの名言を引用しました。
このnoteは主に世界の変化について論じていますが、変化といえば人間の長寿化について論じなければウソですよね。
BusinessWeek2023年12月25日号は、一冊まるごと「長寿特集The Longevity Issue」です。
今日はこの号から、世界は、世界の企業は100歳が当たり前になる、長寿社会という変化に対応しなければならないことを考えましょう。
エビデンスが示す100歳社会の到来
センターズ・フォー・ディジーズ・コントロール&プリベンション(CDC:Centers for Disease Control and Prevention 疾病抑制と予防のためのセンター)によれば、「富める国に生きるいま5歳の幼児は、かなりの確率で100歳まで生きる」と結論づけました。
CDCは長寿学者 、 生理学者 、医師、社会学者、 気候学者 、都市計画専門家、 プロダクトエンジニア 、起業家 、エコノミスト 、金融サービス専門家、フィットネス /公衆衛生の専門家などが集う機関です。
その衆知で出した結果であり、科学的信憑性はかなり高いと言えましょう。
この研究機関は、いま人類が100まで生きることを前提として、どうしたらより人間が健康的に、経済的に生産性を向上できる社会の構築を目指しています。
さすがにコロナの間は、 2000年の79歳から2023年 の 77.5歳に確かに下がりました。
銃犯罪は減らず、肥満、糖尿は国民病、麻薬常習などの社会問題を抱えているにも関わらず、人種、性別、収入の多寡をも乗り越えて、アメリカ人の平均寿命は伸びています。
100歳時代に対応できてない社会
80歳 90歳 それを超えて 100迄生きるのが現実になっているのに、アメリカ社会はそれに対応できていません。
超長寿社会に人々が健康的で、一人でも行きていける環境を整えるための、テクノロジー 、セラピー(診療、治療)に投資が足りていません。
企業もシニア労働者のスキルと経験を上手に使うための、制度設計がまったくできていません。
人生のステージが変わった
記事は「人々はまだ人生を、教育を受けて、労働し、引退するという直線的なステージの連続と考えており、これは時代遅れのフレームワークだ」と、警鐘を鳴らしています。
5歳位で学校に入り、20過ぎで大学の学位をとって、会社に入り家庭をもって65歳まで働き、引退してモール(商店街)をブラブラするというのが、人生の典型的なパターンでした。
しかし、100歳まで元気に生きるとなると、このパターンは硬直的で、もっとフレキシブルでいい、と同誌は主張します。
教育の概念が変わった
昨年はリスキリングという言葉が、世界で流行語になりましたが、このことも超長寿社会の到来と無関係ではありません。
100歳超の社会の新たな問題は、ミッドライフシップ(midlifeship中高年の期間をどう過ごすか)という言葉に集約されます。
ミッドライフの期間が長いため、人々は常に新しい学びを要求されます。
リスキリングは、不可避なのです。
超長寿社会は、不幸なことにAIが人間の能力を脅かす時代と重なり、我々に常に知識やスキルをアップデートしなければやっていけない現実をつきつけています。
もはや大学を出て学位を取得したということに、どれだけの価値があるのかさえ、疑問視されるようになってきているのです。
教育は学校だけにまかせる時代は終わったのです。
女性のキャリアも再考の時代
男女平等は確かに進んではきていますが、根本的な問題はなおざりにされたままです。
それは何かと言うと、女性の人生はトップヘビー、つまり若い時に苦労が重なるということです。
高校、大学を卒業し、お金を稼がなくてはならない現実にすぐ直面したと思ったら結婚そして出産、そして働きながら家庭を切り盛りし、子育てをする、これって男性に比べて人生の入り口での負担、苦労が大きすぎるのです。
しかし、超長寿社会の到来で、この状況が改善されるかも、です。
例えば20代で子育てと家庭と労働の三重苦から、女性を開放できないでしょうか。
国も企業も、女性の負担を軽くする制度を構築すべきときに来ています。
それは、高齢労働者にとっても重要な課題と言えます。
9時ー5時の働き方を見直すことも、一案でしょう。
日本はこの変化に対応できるのか
さて、アメリカの100歳時代に向けての課題を見てきたわけですが、日本はこの変化に対する意識すら希薄です。
本格化する超高齢社会をどう設計、構築するか。
ここが日本の正念場ではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学教授