お客がマックフルーリーが食べられなくても、なぜマクドナルドは困らないのか
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:
修理ビジネスの深奥にあるものの理解。ファーストフードにおける冷たいデザートの重要性。なぜマシンは故障するのかの理解。
なぜ、故障は連続するのか
みずほ銀行が先月5度目のシステム障害を起こして、ニュースになりましたが、
アメリカではATMならぬ、ソフトクリーム・マシーンが度々のシステム障害を起こして、ジョークの種にされています。
このマシーンが故障するとアメリカ人の大好きなマックフルーリーが食べられません。ソフトクリームも、その他のデザートも。そうです、みずほ顔負けの頻繁なブレークダウンの主は、マクドナルドのソフトクリーム・マシーンなのです。
今回この故障がアメリカで大きなニュースになっているのは、2つの理由があります。
一つはFTC(アメリカ連邦取引委員会Federal Trade Commission)がこの問題の調査に入ったということ。
もう一つは、このアイスクリームマシンの製造会社とマシンに取りつけられた監視装置のメーカーが、法廷闘争を繰り広げていることです。
またこのことで、修理ビジネスの巧みなビジネスモデルそして、その深奥にはマクドナルドの利権構造があるのでは、という憶測まで飛んでいます。
FTCがなぜ介入したのか
FTC公正な取引を監督・監視する連邦政府の機関です。今回FTCはマクドナルドがサプライヤー(供給業者)とサプライヤーが搬入する機材、装置をしっかり管理しているかを調べ、またそれらの修理に関してのFTCのルールを守っているかをチェックする、と言っていますが、その真意はわかっていません。
しかし、うがった見方をすれば、あまりにひんぱんに故障することに、FTCが何らかの疑念を抱いているのかも知れません。
FTCが決めた修理のルールがきちんと守られているかも、たしかにその一つでしょうが、もっと深い理由があるのかも知れません。
マクドナルドも大打撃
このソフトクリーム・メーカーは一台1万8000ドル(約180万円)します。しかし、マクドナルドのデザートの平均売上の60%を叩き出すのです。
マクドナルドはマシンの修理や改変をフランチャイジー(加盟店)固有の権利としています。このマシンのメーカーはテイラー(Taylor)です。
しかし、今やこのメーカーの名前はマックファンから頻繁な故障を名指して非難される悪名高きものになっているのです。
マクドナルドは声明でこう言っています。
「食品のクオリティと安全に関する高いスタンダードを皆様にお届けすることほど重要なことはありません。だからこそ、我々マクドナルドは安全な解決を提供してくれる、完全に信頼できるパートナーを選んでいるのです」。
しかし、マクドナルドも頻繁に起きる、このマックフーリが食べられなくなる事件を、面白がっているフシもあります。公式SNSで「ジョークで済ませたいのですが、ジョークでは済まないですね」という具合です。
故障の原因
マシーンは夜にバクテリアを殺すためにクリーニングをします。4時間がかりでやるのですが、これがうまくいかないこともあるわけです。こうなると故障となり、使えません。
メーカーそして修理も引き受けるテイラー社の代表は、事故の原因についてこう話します。
「この装置に関する知識が足りないのと、店舗内でどうそれが動くかの理解が足りないからです。マシンは様々なパーツが協働して、複雑な環境で動いています。それを理解してもらわないと・・」と、どこか他人事です。
マシンに乗っかったソフトウェア
2年前からキッチ(Kytch Inc.)という会社がペーパーバックぐらいの大きさのソフトウェアが入った箱を、加盟店に売り込んでいます。
この装置は故障を警告する機能を持っています。加盟店にはリアルタイムで警告のテキストメッセージを送ります。
キッチの売りは、はっきりした英語でメッセージを出すことです。テイラー社もエラーメッセージは出してくるのですが、ERROR XSndhUIFなどと暗号もどきなので、加盟店には不評です。
テイラーvsキッチの大喧嘩
マシンの選択、修理、改変に関して本部はタッチしていないのですが、度重なる故障にマクドナルド本社は「あの装置は正式には認めてない。安全上の危険要素とみなす」と直接の言及は避けながらも、キッチを非難しています。
キッチは濡れ衣とばかりに、返す刀で今度はメーカー兼修理のテイラーを告訴しました。
それは、修理の際マシンについているキッチの装置も持ち出し、それを複製し技術を盗んでいるというのです。
逆にテイラーは、「キッチこそ我々のマシンにくっついて、中身をハッキングしている。奴らがハッカーで我々が犠牲者だ」と一歩も引きません。
解決策:面倒なものを作んなよ。
マクドナルド本社は、故障対策チームを作ったり、店舗のクルー(店員)にマシンに習熟させるためのトレーニングなどを実施する構えです。
しかし、長年マックを経営してきたOBはこう言います。
「あのアイスクリームマシンは技術的にめんどうなことが多すぎるんだよ。ときにはシンプルイズベストってことをわからないと」と話しています。
野呂の分析
読者の皆様もお気づきかもしれませんが、アメリカのThe Wall Street Journal以外のメディアは、この事件のウラを報じています。確かにいろいろ不自然ですよね。
○なぜFTCが乗り込んできているいのか
○なぜ、マクドナルド本社自体が、こんなに頻繁に故障が起きるのに平気な顔をしているのか
○なぜ、マシンメーカーのテイラーは故障ばかりしているマシンの改善をしないのか
○なぜ、キッチは加盟店にソフトウェア装置を買わせることに成功したのか
○なぜ、マシンはそんなに複雑な構造なのか
○修理ビジネスという構造があり、マクドナルドとテイラーがズブズブの関係ではないのか。
○FTCの本音はその癒着の調査ではないのか
しかし、マクドナルドにサプライヤーが商品やサービスを導入することは、サプライヤーにとって有形無形の財産になることは間違いないですよね。
「あのマクドナルドの公式マシン製造者だぞぅ」、ってなもんです。そこには、利権が発生しても全然おかしくないですよね。
そういう意味では、The Wall Street Journal(この号は2021年9月2日号)の書き方はいつものことながら、遠回しに重大なことを指摘しているというか。嫌味を言っているから気づけよ、というか。
経営学的には、故障というトラブルの未然回避するにはどうしたらいい、みたいな問題提起でもしようかと思ったのですが、別の問題を読者の皆さまが感じられたら、その方がためになったかな、と思う次第です。
今日も最後までお読み頂きありがとうございました。
ニフティ、いいね
今日、ニフティさんに電話して助けてもらって、光回線無事に開通しました。電話サポートのフカダさんという方のサービスが最高で、いままでニフティさん、あんまり自分的には?だったのが一気に上に行きましたよ。たった一回の接遇で、企業イメージって爆上がりすることを、身を持って経験した次第です。光のことに文句いっていたのを一時忘れましたよ(笑)
また明日お目にかかれれば。
野呂 一郎