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日鉄USスチール問題であぶりだされた、日本経済の急所。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:日鉄問題は日本の製造業の健在ぶりを示したのだろうか。いや、むしろ弱点をさらけ出したのだ。アメリカの製造業は弱いわけじゃない、むしろ経済合理性にすぐれているだけなのだ。日本の製造業に足りないのは、「遊び心」である。トップ画はhttps://00m.in/fmBeP
日本の製造業は本当に強いのか
去年、日鉄がUSスチールを買収というニュースを聞いて、「まだ日本の製造業は健在なんだな、やっぱ日本すげぇや」と感じた人は少なくないと思うんです。
僕もその一人です。
それは人々が「物を作れば作るほど、経済は強くなる」と信じているからです。
一期目のトランプは「アメリカはまったく物を作ってない」と信じている、BusinessWeekはそう報道しています。
実際にアメリカの製造業は、昔に比べれば衰退しています。
例えば50年前は製造業のGDP(国民総生産)に対する割合は26%でしたが、2016年にはこれが12%以下になっているのです。
しかし、資本主義の権化のアメリカが、もし製造業に力を入れてないとすれば、それは経済合理性しか、理由が見当たりません。
「製造のスキルは、以前よりもカネを生まない」からです。
未来の製造業はアップルにあり
The Factory Free Economy(工場のない経済)という本によれば、製造業が儲けているのは、モノやそれを創るスキルじゃなくてモノを作ることで獲得できる人材であり、R&D(研究開発の成果)であり、製品のデザインであり、ブランディングなのです。
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こう申し上げると、読者の皆様は、すぐにあの会社を思い浮かべるでしょう。
そう、アップルです。
アイフォンやアイパッドを創っている、あのアップルです。
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アップルは事実モノを創るのは、中国等にアウトソーシングしているだけで、デザイン、開発、ブランディングだけで巨額の利益を出してますよねえ。
日本の製造業の課題をあぶりだした日鉄
製造業は確かに、その技術や伝統で日本が世界をリードしているでしょう。
でも大事なのは、それをどう儲けにつなげるか、です。
目に見えるモノじゃなくて、目に見えないソフトの時代です。
デザイン、ブランド、マーケティング、付加価値。
日本の製造業は、こうしたものが弱い。
これが日鉄がUSスチール買収で、皮肉にもあぶりだされたのです。
でものんきな僕のような日本人、昭和の人間は「鉄は国家なり」のスローガンじゃありませんけれど、「ものつくりニッポン」が染みついているので、時代の変化に気づいてないのです。
それは、トランプさんも一緒なんですね。
でも、したたかなトランプは、製造業を日本に明け渡したところで、アメリカ経済が弱くなるなんて思ってもいなくて、単なる人気取りに利用しているだけなのかもしれませんが。
サプライチェーンより今のキャッシュをとった米国
ただ、コロナで我々が思い知らされたのは、サプライチェーンってやつですよね。
何でもかんでも製造を中国に任せていたツケが、回ってきたわけです。
もうちょっと日本もアメリカも、自分で物を創ること考えないと、という反省を迫られたわけです。
でもね、ハードというモノも、製造技術もいったん出来上がってしまえば、それはコモディディ化(日用品のように価値のない存在になる)するわけです。
モノづくりの技術とAIという未来の技術を比べれば、どっちを重視するか、というと、アメリカの手練れの経営者は、アップルの戦略を選ぶにきまってますよねぇ。
だから、トランプもそこらへんはわきまえていて中国からの輸入品に高い関税をかけるとか言ってるけれど、IT大手から反発のプレッシャーは感じているはずです。
ほら見たことか、カナダ、メキシコ、中国への関税は一ヶ月先延ばしです。
話が冗長になりました、結論は日本の製造業を本当に生かすには、製造業の伝統を守りつつ、柔軟にマーケティングを考えよ、ということです。
アップルのマネをすることはないけれど、日本の製造業はまじめ過ぎるんじゃないかなあ。
ウナギ・サヤカでも、推せばいいのに(笑)
「日本人が真面目すぎる」問題はまた論じましょう。
野呂 一郎
清和大学教授