イーロン・マスク=ビットコイン説。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:イーロン・マスクの成功はフェイクだったのではないかという説。テスラは買いじゃない、という主張を検証する。「ネットワーク外部性理論」とは何か。ストーリーという、まだ有効のように見える現代のトリック検証。
イーロン・マスクの時代は終わった
もう、テスラはダメだと思うんですよ。ツイッターも、スペースXも。
そう、僕らはイーロン・マスクにだまされていただけなんですよ。
だって、電気自動車だってツイッターにしても、もうオワコンだって。
スペースXだって、これからどんどん他社が宇宙事業に乗り込んできますよ。
もうちょっと詳しく説明しましょう。
要するに、これがイーロン・マスクじゃなきゃできない魔法だ、ってものがないからです。
あるのは、マスクさんの伝説だけ。
伝説とは、流行りの経営用語で言えばストーリーですよね、それはある、いやありました。
投資家はそれに酔ったんですよ。
まだ酔っているけれど、もうメッキは剥げてきましたよね。
そう、ツイッターの一件でミソをつけてしまいました。
リストラを巡って、いらぬ波風をたてたからです。
一部で昔ながらのハードコア経営者復活だ、経営者の鏡だって評価もありましたが、人間性が透けて見えたという悪評が上回りました。
それよりも、具体的に、マスクさんの事業はやばいんです。
なぜ、テスラがやばいのか
やばい=買いじゃない、ってことですよ(笑)。
考えてみれば、ですよ、たしかに電気自動車の時代ですよ、でも、テスラじゃなきゃダメってのがありますか。
故障した時、テスラのエンジニアじゃなきゃ治してもらえない、とか。
テスラのバッテリーは一回充電すれば、死ぬまで使える、とか。
ないでしょ。
もちろんiPadみたいなパネルで自動走行快適、そういうことを言う人もいますよ。
でも、トヨタがGMがフォードが、その優位を黙って見過ごします?
トヨタなんてさ、企業城下町を従えて、何万社の下請け会社とネットワークを組んで何十年もやってきてるんですよ。
トヨタがこの電気自動車時代に「うちは全方位で」って言ってるのは、余裕の表れにほかならないんです。
どんなテクノロジーでもどんと来い、って言ってるんですよ。
電気自動車だって、水素エンジンだって、ハイブリッドだって、なんだって来いっていう自信のなせるワザなんですよ。
それはT型フォードというクルマの原型を生み出した、一世紀の伝統に支えられたフォードも同じ。
GMだってそう。両者は政治力もある。
経営悪化しても泣きつけばアメリカ政府は言うことも聞く、そういうパワーも持っています。
マスクさんはせいぜい、経営がうまく行かなくなったらブチ切れて、ツイッターのときと同じように大量レイオフをするだけでしょ。
この時代、ハードなリーダーシップをやっているけれど、「働け!」ってムチで叩いてるのは、ちょっと滑稽でもあるな。
なぜ、ツイッターがやばいのか
そもそもマスクさんが買収する前から、ツイッターは赤字でした。
さっきオワコンって言ったけれど、もうあのつぶやきっていうビジネスモデルからは、もう人が離れているんですよ。
それは世界が、オンライン広告を毛嫌いし始めたからです。
これについては、以前に散々書いたから詳述は避けるけれど、個人情報に厳しくなった世の中では、ネット広告は微妙になってきました。
広告に頼れないツイッターは、サブスクとか、プレミアム会員制度みたいのを考えているようです。
無料だからやっているのに、カネを取るのは上策じゃないと思いますけれどね。
ネットワーク外部性という新経済用語
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年1月8日号は、Did the Tesla story ever make sense(そもそもテスラのストーリーって意味あるの?)という刺激的なタイトルで、テスラの将来性に疑問を投げかけています。
この記事で注目したいのが、network externalities (ネットワーク外部性)という考え方です。
これは、俺流の解釈をすれば「世間を巻き込むことによって、恒常的な利益を上げるしくみ」という意味です。
記事は、マイクロソフトとアップルを例に出して、ステラをこき下ろしています。
ではマイクロソフトとアップルの、ネットワーク外部性とはなんでしょうか。
マイクロソフトのそれは、「みんなが使っているから、使うしかない」という仕組みのことです。
品質や性能がいいわけじゃなくて、企業も個人もマイクロソフトのシステムを使わざるをえない、この状態がもう40年以上も続いているわけです。
これは「世間を巻き込んで、恒常的に利益を上げている」ことに他なりません。
世間を巻き込んで、って言うよりも、選択肢をなくしているわけですよ。
ライバルが出てきたら、すぐ買収しちゃうとか、中国とのビジネスなんか20年かけて、アメリカ政府まで巻き込んで、当時の外務大臣、超大物のキッシンジャーを使って市場をこじ開けちゃうんですから。
アップルはどうか。
アップルは、マイクロソフトとは対象的に、品質と性能で市場に愛されたのです。
マーケティング的に言うと、マーケット・ポジションを確立したというわけです。
一言で言うと、強烈なファンを作るのに成功し、彼ら彼女らを40年間惹きつけてやまなかった、ということですね。
これも「世間を巻き込んで、恒常的に利益をあげている」、ネットワーク外部性を実現している例です。
イーロン・マスクのストーリーはいつまで?
ステラも、スペースXも、ツイッターも、ネットワーク外部性なんかどこにもないじゃないですか。
そもそもワンマンじゃ、それはできないですよ。
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツって、すごく人間関係を大事にし、社内にも切れ者がたくさんいた。
アップルもスティーブ・ジョブズというとんでもない傑物がいたけれど、社を上げて品質という価値にずっとこだわってきました。
結果的に世間にとって、両者のプロダクトは代替不可能という、マーケティングの理想を成し遂げたのです。
ニューヨーク・タイムズのこの記事は、こんなひどいこと言っているんですよ。
ちょっと笑ってしまいましたよ(笑)
うーん、経営学で言う「ストーリー」も、科学的とはいい難いし、みんな騙されていたのかもね。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー