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人事の明日を占う⑦フジの教訓。今年、人事担当者は「新HRM研修」をやるべきだ。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:問題はフジの幹部が御高齢だからじゃない。日本企業の経営学の勉強が足りないからだ。人事部エースのあなたは、昨日のフジは明日の御社と怯え、早急に新しいHRM教育の体制を整えるべきだ。トップ画はhttps://x.gd/sscnk
HRMとは何か
結局、フジテレビ問題は日本企業全体の問題で、何が悪いかといえば、HRMとは何かがわかってない、ことです。
HRMとはHuman Resource Management(人的資源管理)の頭文字を取ったもので、1990年ごろから盛んになった、新しい人事管理の体系のことです。
HRMを一言でいえば、「人間性への流れ」です。
従業員重視のみならず、ステークホルダー(stakeholder企業の利害関係者)全員の人権を重視し、人間性に最大の価値を置くことが、ここ30年の世界企業の厳然たるルールなのです。
詳しくは、この本をお読みください。
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経営学を勉強せよ
「フジテレビの経営陣は爺さんばかりだから、ダメなんだ、そうとっかえしろ!」。
テレビのコメンテーターたちはそう口々に叫びますけれど、問題は年齢じゃなくて、「勉強してないから」なのです。
じゃあ、この事案を見過ごしたのが経営陣だったとして、中居氏のパーティに関わったのは若手社員たちもいたわけでしょう。
経営学の絶対的な流れとしてのHRM、という理解があれば、絶対にこんなことには関わってないはずです。
HRMの流れと軌を一にしますが、経営学の最重要項目は、今や「倫理」なのです。
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人間性だとか、倫理だとか、これらが重要だ、そういう知識を持てばいいわけではありません。
経営学の勉強とは、これまでの企業や経営理論の歴史を学ぶだけではなく、様々なpros & cons(賛否の議論)、企業の実例を検証し、教師との、また学生同士の議論、レポート作成そんな、思考と実践をやることを指します。
こうした訓練なしに、「経営学とは人間性のこと」という理解には至りません。
問題は、日本の大学、企業で、こうした教育がまったくと言っていいほど行われていないことです。
ジャパン・アズ・ナンバーワンが日本をダメにした?
今回のフジの大騒動の根っこに、「日本人傲慢化説」というのがあります。
戦後の復興時には、日本人は外国、なかんずく欧米の理論や考え方に熱心に耳を傾け、よいものを吸収するのに躊躇がありませんでした。
しかし、80年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンだとか、日本の世紀だとかの根拠の薄い日本上げの論説に舞い上がった日本は、「もう欧米の時代じゃない」と傲慢になってしまった、というのです。
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でも、時代はとっくにグローバルであり、つまり、一寸先は闇なのです。
世界は常に新しい考え、技術を作り出し、そこで働く人間も多大な影響を受け、様々な課題が生まれ、共通の意識やルールが自然に発生します。
日本企業はこういう変化を学習するということを、いつの間にかやめてしまったのです。
きのうのフジテレビ会見の茶番は、この事実を雄弁に物語っています。
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経営学は企業が社員に教えろ
時代の変化を、わかりやすく教えてくれるのが「経営学」なんです。
大学でおまえはしっかり学生に教えてないのか?
読者の皆様は、フジテレビの会見よろしく僕を攻め立てますよね。(笑)
でも、ここで一つ問題があるんですよ。
それはね、経営学の勉強って、相手がいくら優秀な学生でも、教えるのに限界があるんですよ。
だって、実際に組織の一員として働いた経験がないから、です。
実践や理論を教えたところで、彼ら彼女らはピンときません。
だからこそ、企業が経営学を教える必要があるんです。
いつも言っているように、ベストなやり方はケース・スタディです。
あと、「のろnote」も必須(笑)
いずれにせよ、誰が教えるか、が最重要ポイントです。
人事部の皆さんは、フジの一件で経営学の学習の必要性に目が覚めたら、
社内研修のプログラムを早急に整えるべきです。
誰を講師に迎えるか、これを中心課題に据えて。
野呂 一郎
清和大学教授